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偏差値52の魔王様  作者: 佐倉要
序章
7/11

7

購買で人の波に飲まれてはぐれてしまった藤谷は教室にいた。


あの人混みの中俺たちを探すより先に教室に戻ったほうがいいと判断したのだろう。

教室の中はいつもと変わらず昼休みらしい雰囲気だ。


多少購買から距離もあり、その上文系であるから女子が多い。周りの騒音は聞こえてないのだろう。それに女子は弁当率が高いのだ。購買に行くことも少ない。そのためさっき起こった出来事も知らないのだろう。

1人の生徒が血だらけになって救急車で運ばれたことなど知る由もなく手のひらにのるほどの可愛らしい弁当箱をあけて3.4人で固まってキャーキャーと弁当を食べている。

「昨日の見たー?」

「まじやばかった!」

「アキラ君まじかわいすぎ!」

「まじハゲる!」

おお、そうか、ハゲるのか。

石田さんがハゲるところはあまり見たくないなぁ。でも、頭の形綺麗だしな、案外悪くな…


待て待て。No more 想像。

石田さんの顔見るたび頭の中で般若心経流れ出したらたまったもんじゃない。

これからの生活に細やかな支障をきたす。


「ちょー、まじ眠い」

「1時間目からお腹なったわ」

「やば、スタバの新作ピーチとか絶対飲むやつ」

「こいつの自撮りウケるww」


(´・ω・`;)


…おれ女子に生まれなくてよかった

こんな高度な会話できない。




藤谷は俺たちを見つけ騒ぎの内容を詳しくは知らないだろうが何かあったということは火を見るよりも明らかなので藤谷はただ黙って俺と古澤の隣に座った。

いろいろと聞きたいところだと思うが古澤の様子を見る限り今は聞かないほうがいいと彼なりに察したらしい。


どうせすぐに先生たちが俺たちのところに来て話を聞き出すだろうからその前に少しでも昼飯を食べておこうと思った。俺は買ったサンドイッチとおにぎりを古澤の前に差し出しどっちがいいか尋ねたが古澤は聞こえていないようだった。


「古澤、おい、古澤って。」

「…え?ああ、ごめん、ぼーっとしてた。」

「まあ仕方ないって。お前どっちがいい?さっき買いそびれただろ。好きなほう選べよ。」


「ん、あ、ありがとう。でもごめん、俺食欲ないみたいで。ちょっとトイレ行ってくる。」


そう言って教室を出て行ってしまった。

古澤が出て行くと俺は藤谷に何があったのか事細かく説明させられ全てを話すと案の定藤谷も怒りを全面的に出していた。


俗に言うコワモテ系の藤谷がそれをやると迫力がなかなかのものだったが。

「絡んできたそのゴミ先輩、血だらけだったんだろ?…その、死ぬってことはあるのかな。」

そんなこと考えてもなかった。


ーー死ぬ?


あり得ない。

「それはないよ。死にはしないさ。」


「でも首や手首からの出血なんだろ?それってやばいんじゃねえの?」


「いやいや、あのゴミ先輩がそんなに簡単に死ぬと思うか?」


「うーん、まあ、でも、シュッケツタリョウって言葉ニュースとかで聞くぞ?

うーん… 」


なんだか府に落ちないといった様子の藤谷。


ここで俺はあることに気づく。


なぜ、今、死なないと言い切れた?

なぜ、死なないことに自信があった?


ガラスが刺さっていた箇所からしてもあれは致命傷になり得る。

それにあの血の量。

藤谷が言っていることももっともだ。

生まれてこのかた見たことがない大量出血だった。


登り棒から落ちておでこ切ったときだって、図工の時間にカッターダンボール切ってた勢いで指を切ったって、鉄棒でバランスを崩して鉄棒が鼻にクリーンヒットして鼻血が出たときだって、あの量はない。


ビビるのが当然。

サスペンスドラマで木彫りの熊に殴られて死んでる人の周りにできた血溜まりの量の方が近い。


それなのに俺はなんの迷いもなく死なないと藤谷に言った。

適当に返事をしたわけではない。


俺はあのゴミ先輩が心から許せないが、死ぬよりも生きて自分のやってきたことを償って欲しいと、アキちゃんと同じ状況になればいいと思った。

死んで欲しいとは思わなかった。


そしてタイミングよくガラスが突き刺さる先輩の映像が見えた。


それだけだ。


1つ思いついた考えがあったがあまりにも馬鹿馬鹿しすぎるし、聞いたこともない。


俺が見ているのは予知だろ?そうだ。

今までずっとそうだった。

今回だって…そうだよな。

だいたい予知なんて都合よく見えない。都合よく予知ができるんならテストの問題だとか、宝くじの当選番号だとかなんだって見えるわけで。できないから一般ピーポーしてるわけでーー


「…じょう!九条!」

「えっ、あぁ、悪い、何?」

デジャブ。おお、完全に自分の中にいた。

「おいおい、お前までぼーっとすんなよー。あと先生呼んでる。」


そう言いながら教室のドアの方を指差すと担任と生徒指導の先生が立っていた。

その後ろにはさっきよりは幾分かよろしくなった顔色の古澤が立っていた。


まあ、こうなるわな。

「ちょっと行ってくるわ。」

「おう。このおにぎり食っていいか?」

「だーめ、それは古澤の。」


そんなやりとりをして教室を出た。

藤谷がーーそんな状況を目の当たりにしたのに九条はいつもと変わらないんだな…ーーなんて不思議に思っていることなどいざ知らず。

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