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53話「それはきっと無理」





 今朝、ウキウキとドキドキで教室に着くと、体操服に着替えているモモ達がいた。他の登校してきた生徒も着替えて気合いを入れていた。

「ゆりー!おはよー!」

「おぉ、おはよー」

「ゆりおはよー!」

「ゆり、早く着替えちゃって」

 挨拶もなしに着替えを急かんでくる梓を不思議に思いながら体操服に着替え始める。


「よし、やるぞ野郎共ー」

 副担任の先生が男子を纏めて円陣を組んでいる。副担任の言葉に男子達が雄叫びを上げる。それを外から眺める私達女子。

「よーし、ゆりも気合いを入れようかー」

「十分気合い入れてきたよ」

 モモの言葉に呆れながら答える私だったが、後ろにいた梓にガッチリホールドされて席に着く。

「まだ足りませーん」

「レーッツ!」

 梓と朱音は櫛とゴムとシュシュを手にして私の髪を弄り出した。モモが机に設置した鏡を見ながら2人が左右に髪を纏め出した。

「ちょいと待て!2つ縛りは嫌だ!」

 私は作業している2人の手を掴んで離そうと引っ張るが、力を入れているのか全く退かない。

「ゆり、“2つ縛り”じゃなくて“ツインテール”ね」

「駄目だよー?ゆり、女の子ならそういうの分かってないとヤバいよ?」

「いや知ってるわっ!」

 梓とモモにツッコむがそれでも尚、手を手を止めない梓と朱音。

「おいーっ!」


 鏡に移る私の顔はさすがの自分でもびっくりする程ブサイク。

「あのねぇ、こういうのは私じゃなくてモモみたいに可愛い子がやるもんなんだよ」

「だってモモ髪短いじゃん?」

 梓の横でモモと朱音が頷いている。

「だったらモモの大好きなゆりでツインテールしようかってなったの」

 モモと朱音が頷いて同意している。

 モモの裏切り者!

「ゆりのツインテールも可愛いよ!はいチーズ!」

 次動画お願いしまーす!と言っている朱音を無視して、梓がシュシュを着けてくる。

「可愛いよ、ゆり」

「あ、ありがとう……」

 何故か梓に言われると照れる私がいる。

「ゆり、最後にお願い!にっこにっこにーって言って!」

「却下」

 朱音の願いを却下した所で先生がジャージ姿で教室に入ってきた。

「よーし、皆!3年生を押さえての優勝は無理でも、せめて学年1位を目指そう!いいね!?」

 先生の問い掛けに男子が雄叫びを上げる。



 いつものチャイムを合図に体育館に集まると、ある人に見つかる。

「その頭どうしたの?茅野」

 鈴木裕介だ。

「友達にやられた」

 渋い顔をしながら言うと苦笑いされた。

「でもいいじゃん、可愛いよ」

 そう言って縛った髪を触ってくる鈴木は目を細めながらこちらを見てくる。

「……鈴木って意外と変な奴だよね」

「えっ!どういうこと?!」

「そのままの意味なんだが……」


 列に並ぶ為に裕介と分かれてすぐにモモが駆け寄ってくる。

「さっきのって前にプレゼント貰ってた人だよね?!」

「そうだよ」

「ゆりはモモのだもん!」

「そうだねー、モモも私のだよ~」

 ギュッと手を回すとモモは安心したようでアハッと笑い、一緒に列に並ぶ。



「――この事に十分注意して下さい」

 やっと校長の話も終えていよいよ競技ごとに分かれる。

「最初はバドミントンだねー、優勝しようね!ゆり!」

「そーだねー、優勝は無理かもしれないけど」

 モモと腕を組ながら移動していると、後ろから誰かに押された。

「後ろから見てると恋人同士に見えたんだけど」

「いつの間にモモとゆりはそんな関係になったの?」

 朱音と梓だ。私達と同じ体勢で腕を組んでいる。

「人の事言えないじゃん」

「あたしとゆりはねー、こういう関係だったのだよ!」

 モモの言っている事は嘘です。冗談なんです。


「そっ、そんなっ!私とは遊びだったのっ?!」

 私達4人に割り込んで来たのは中庭さんだった。

 若干涙目なのは演技だろう。

「え、だっ誰?」

「あなたの彼氏二股してたのね、そんな男はダメよ」

 私がツッコむより先にモモと梓がノリだした。

 アワアワしている朱音を横目に、私は即興で物語を作る。

「フッ、そんなわけないだろ?俺にはモモだけだ」

「そっか、よかったわ」

 モモがノリノリで対応する。

「じゃあこの女はなんなのよ」

「そうよっ、わたしとは遊びだったっていうの?!ひどいわ!」

 すかさず、梓と中庭さんが割り込む。

「別に俺は、お前にそういう感情で動いていたんじゃないんだ。 ただ普通に接した、それを勝手に解釈したに過ぎないな」

 中庭さんは「そんなっ…」と泣き真似をする。

 梓とオロオロしている朱音が中庭さんの背中を撫でた。梓は演技だろうが、朱音は本気で心配しているのだろう。

「ほら、モモ行こう、時間がもったいないぜ」

 最高のキメ顔をモモに向けながら、体育館の端に移動する。


 演技だと知って怒ったり笑ったりしている朱音を無視して、対戦中のバドミントンを見ていると、向こう側から何かが光ったのに気付く。

 写真部の人がアルバム用に撮っているのだろう。

「ゆり、次だって!」

 カメラの方を見ているとモモが割り込んでくる。

「今やってるのが終わったら私達の所と2年2組がやるって」

「うわ、先輩じゃん」

 本音をポロリと溢すぐらいに嫌に思った。

「でもこれは勝負だからね!先輩だろうと真っ向勝負!」

 ね!と同意を求めてくるモモ。



 モモはペアの大塚君とコートに行ってしまったので私の横には朱音と梓いる。

「モモー!頑張れよー!」

「モモー頑張れー」

 朱音と私の声援に大きく手を降って答える。

「意外とあの2人いい感じだよね」

 ずっと喋らなかった梓が場違いな事を言い出す。

「モモさ、変な感じにフラれたじゃん、だから最近も空元気の時があったり、ちょっと無理して笑ったりとか」

 他の人達の声援や羽を返す音が響く中、梓は話を続ける。

「そういうの苦手だし、モモには新しい恋をして忘れてほしいし。けどモモにはモモのペースで頑張ってほしいって思ってるよ」

 こんな一気に話す梓は珍しい。

「少しでも可能性があるなら私はモモに加担するって決めてるから」

 梓は見てないようで見てるし、心配してなさそうに見えてもやっぱり心配してるんだ。

「梓?モモになにするって?」

「おいっ!加担するって言ったんだよ!」

「……かたん?……へぇ……」

「絶対意味分かってないよね?力を貸すよってこと!」

 バカな朱音は私の説明でやっと納得したようだ。

「モチロン、ゆりと朱音もモモに加担するよね?」

 梓の顔は笑っていたが、怖い雰囲気を醸し出していた。




 結局、先輩には勝つことは出来ず、初戦敗退となり、続いてのドッジボールまで気長に待つしかなくなった。

「くっそー、負けたねーあの時スマッシュちゃんと決めてればなぁー」

「まぁしょうがないよ、先輩達にはまだまだってこと」

 熱気が私達を襲ってくる為、外に避難したが、外もまた日差しが強い。

「私達に逃げ場はないのか……」

「くそぉ、サンがこんなにもホットとは思わなかったぜ、ダークソウルが浄化されていくっ……」

 暑さに弱い梓は朱音の後ろに陣取って少しでも涼もうとしている。

 朱音は暑さに強いのか、バカの通常運転。


「ぅおいっ!ドッジボールやるよっ!」

 後ろから大声で叫ばれた私達は急いでクラスメイトと合流する。

「始まるね!ドッジボール!」

「うん、同学年でありますように……」

 いるのか分からない神様に願ってみる。

『1年1組と1年4組は左側のコートに集まってください』

 アナウンスが人を集めて、コートの回りには見物人でいっぱいになる。

 相手が同学年であることに私達は喜ぶ。

「良かったね、思いっきり当てれるよ」

 作戦では、ボールを回して早く投げれる人が積極的に当てよう。題して、HS(エイチエス)作戦。


 絶対最後まで生き残ってやる!と意気込んだ矢先に当てられて外野に移動した私。

 内野得意じゃないなと思いながら、内野にいる3人を見てみる。

 梓とモモは気配を消すようにして逃げ回っている。楽しそう。

 朱音は相手チームを挑発して、笑いながら逃げ回っている。すげぇ楽しそう。

 別に羨ましくはない。始まって早々に当たってあまり動かない外野がつまらない訳じゃない。

 でもなんだろう。私が当たってから誰1人当たらない事がこんなに空しいなんて、思いもしなかった。


「勝てたのは嬉しいよ?嬉しいけどなんか……」

「い、いや~勝てて良かったね~!この調子で次も行ってみよ~!ねっ、ゆり!」

 モモに気を遣われるなんて。


 2回戦でも始まって早々に当てられた私は、きっと内野より外野の方が活躍出来ると思う。

「モモ逃げて~!」

「朱音!変に挑発すんな!」

「梓!もっとハキハキと逃げよう?!」

 外野に回ってもボールを回してこない辺り、私は戦力外なのだろう。だったら3人に対してツッコミでもしてよう。




 ドッジボールは良い所まで行った。だか、僅差で3年生に勝ちを譲ってしまった。

 最初こそは、ちょっとやりにくかったけど、チーム内に見知った顔があった。軽音楽部部長の清水舞先輩と副部長の橋本奈緒美先輩。

 橋本先輩が本気で来いと言ってから三宅さんや中庭さんは積極的に投げ始めた。

 そんなこんなで共に内野を少なくしていって、2、3人残った所で制限時間となり、僅差で私達は負けた。



 お昼休憩を挟んでからバレーはやるようで、教室で喋りながらご飯を食べる。

 担任から貰った対戦表では、バレーの対戦相手は2年4組だったらしい。

 食べる間も食べ終わっても朱音はもう楽しみなようで、ソワソワしている。ソワソワしている朱音の横では梓が髪を縛り直している。

「っし!ゆり、気合い入れ直してあげる」

 おいでおいでと手で合図された私は梓と朱音に背を向けて座る。

 ツインテールなんてしたことがないから自分では結び直す事が出来ない。その為、梓の言うことに従うしかない現状。



 体育館に行くと、直ぐ様バレーに取り掛かるらしい。

「あ、冨田さーん、茅野さーん!新垣さーん!」

 しょうもない話で盛り上がってたらモモ以外が呼ばれた。バレーの順番が回ってきたらしい。

「じゃあ行ってくんね!応援してよー?」

「分かってるー!めっちゃ大きい声で応援するわー!」

 朱音の手振りに答えるようにモモも返して、クラスメイトが集まるステージ前に駆け寄る。


「誰か得意な人いないの?!」

 駆け寄ってすぐに中庭さんの声が響いてきた。

「どうしたの?」

 私より先に朱音が近くにいた谷さんに質問する。

「バレーやったことある人がいないの」

 つまり、バレー経験者がいなくてルールもあまり理解していない人達が多いわけだ。

「まどか、私経験者だよ」

 隣の梓が挙手しながら中庭さんに話す。

「基本的な事は教えられるし、ゆりと朱音もルールは知ってるみたいだよ。だから大丈夫」

 梓がそう言うと中庭さんは梓の手を取ってありがとうと何度か繰り返す。



「とりあえずボールを下に落とさなければ繋げられるから」

 梓がコート全体に聞こえるように言うと、開始の合図で笛がなる。

 相手ボールに始まり、最初に朱音がレシーブをする。ネット手前に居た中庭さんのトスによってボールが上がり、あっという間に梓のスパイクで相手陣地に落ちる。

「……うおぉぉ、すげぇ!」

「新垣さーんすごーい!」

 トスを上げた中庭さんまでも梓に感嘆の声を上げる。

「私もバーンってやりたい!」

 霧山さんが梓の真似をして素振りをしている。

 ちなみに私は補欠組で同じ補欠組の相沢さんにバレーの説明をしている。していたらあの梓のスパイクだ。 

 声を上げないだけで、私もビックリしている。隣の相沢さんも私と同じ表情をしている。

「したいならしていいけど、ネットに触れないようにね」

 称賛の声を浴びている梓はどうでもいいように元に戻って霧山さんにアドバイスを送っている。


「凄いんだね新垣さん」

「うん、経験者だとは知ってけど、普通に上手いね」

 その後も梓や霧山さん、朱音がスパイクを打つ。その中でもやっぱり梓のスパイク姿勢が綺麗だと分かる。

 皆の楽しそうな表情を見ていると、審査員が笛を大きく鳴らす。

「なに?もう終わったの?どうしたの?」

 ルールを知らない相沢さんは戸惑っている。

「相手チームが3回以上ラリー続けちゃったみたいだね」

「え、ダメなの?」

「うん、3回の短いラリーで攻撃か何かしなきゃダメなんだよ」

 へぇ~と言いながら再開したラリーを目で追う相沢さん。



 少しして、試合は終了した。結果は私達の負け。

 原因としては相手チームよりスパイクを打てる人が少なくて、体力の消耗が此方の方が激しかった。

 相手チームには経験者がいない情報で少し有利だと思ったが、やっぱりそこは先輩としての意地なのか、私達よりボールを積極的に拾っていた。

 敗因はそこなのかなと自己分析をしながら朱音と梓にお疲れの声を送る。


 悔しそうに俯いて一言も話さない梓を慰めるようにモモが背中を擦る。

 邪魔をしないように私と朱音は2人の背中を見つめるように、体育館内で見守る。

「悔しかったね……梓は唯一のバレー経験者だから余計頼られてプレッシャーだったでしょ」

 小さな声で梓を慰めるモモ。

 私も慰めたいけど、補欠だった私に慰められても逆に梓を傷つけちゃうのが怖かった。

「大丈夫だよ、誰も梓を責める人いないよ」

 梓は頭に掛かっている自分のタオルで顔を覆うのが分かった。泣いているのかと分かると、何故か私も涙目になる。

「こんな風に泣くのは……初めて……中学の時は負けても泣かなかったのに……」

 泣いている梓を見せる訳にはいけないと扉の所に陣取りように座り込んで、誰一人通さないように見張る。


 モモと梓、私と朱音がお互い背を向けるように座っても聞こえてくる声に私も泣きそうになる。

「あたしも、もっと上手くスパイク打てればなぁ……」

 不意に隣の朱音が反省するように呟く。

「スリムになれば少しは上手く打てるんじゃない?」

「……ダイエットしようかな……」

「それはきっと無理」

「んでだよっ!」

「シーっ!」

 梓の泣き声は色んな音でかき消されて他の人に聞こえる事はなかった。



 男子がちらほら見えるのは、きっとサッカーがそろそろ終わるからだろう。

「そろそろ外行っとく?」

 朱音の提案に同意すると移動を始める。

 男子が戻りつつあった体育館を出ると、丁度顔を洗い終わった梓とモモに合流する。

「もう外行くの?」

「うん、サッカーが終わったらいよいよリレーだからね!」

 梓を元気付ける為か、変な動きを取り入れて説明する朱音。

「じゃあうちらも行こうかモモ」

 梓はいつもと同じように話している。でもよく見ると目元が赤い。

「じゃあ行こうぜー!」

 朱音は気付いてるのかな。



 グラウンドに出ると男子達がまだサッカーをやっていた。

「大澤さーん!新垣さーん!」

 回りを見渡していると、此方に手を振りながら駆け寄ってくる菅谷君。

「菅谷くん!今やってるのって決勝?」

「うん、そうだよ!俺達は1回戦で負けちゃったからずっと見てたんだ」

 菅谷君は苦笑いしながら説明してくれた。

 確かに回りには同じクラスの男子達がいる。座り込んで見てたり、立ったまま見てたり。


 菅谷君と喋っていると、サッカー決勝戦が終わったらしい。サッカーは3年2組が優勝。

 その場が拍手喝采になったので、私達も拍手をする。

「俺達、最初に3年2組と当たったんだ、だから嬉しいよ」

 菅谷君は私達に聞こえるように話し出した。

「俺達に勝ったのに、途中で負けて優勝出来ないと嫌だなぁって思ってたし、俺達との試合後に絶対優勝するから応援してくれって言われたし」

 応援した甲斐があったよ!と話す菅谷君は本当に嬉しそうだった。

『これからリレーの準備をします!クラスマッチ実行委員は速やかに準備お願いします!』

 アナウンスによってバラバラにいた生徒達がグラウンドの隅の方に自然と集まる。


『これからリレーを始めます。各自、立ち位置を確認の上、コースに集まってください』

 グラウンド上には新しく白い線が引かれていて、その線を消さないように内側に入ると私と朱音はコースに、モモと梓は私と朱音の勇姿を間近で見れる場所に移動する。

 1年からリレーを始める為、急いで列に並ぶ。

「朱音もこっちだっけ?」

「そーだよー!忘れたのー?」

 私達のクラスで最初に走るのは三宅さん。アンカー以外は半周で、アンカーのローマス君は1周半走ることになるらしい。


 三宅さんから始まったリレー。今のところ2位だ。転ぶことなく高野くんに渡ったのを見て、朱音がスタンバイをする。

「頑張れよ朱音!」

 私の声援に朱音は声に出さず親指を立てる。

 朱音にバトンが渡って順調に走ってるのを確認しながらスタートラインに立つ。

「ゆり!頑張れ!」

 中庭さんの声援に朱音と同じように親指を立てる。

 朱音からバトンを貰った卜部が此方に走ってくる。まだ2位だ。少しでも差を縮められるように願いながら卜部からのバトンを貰って1位の背中に走り出す。



 息を整えながら、私からのバトンで走ってる小松君を見る。1位との差が少し縮まった気がする。

 残りの中庭さんとローマス君で1位になる事は出来るだろうか。

「まどかー!行けー!!」

 中庭さんにバトンが渡った途端、隣の朱音が大きく声援を送る。

 1位との差が少しづつ縮まってアンカーへバトンが渡る時、一瞬抜いたように錯覚した。

「ローマスくーん!頑張れー!!」

「ローマスくーん!お兄さんが見てるよー!!」

 アンカーのローマス君にクラス全員で声援を送る。他のクラスの声援を殺す勢いで送ったからか、1位の3組を抜いた。

 1位になったことでますます声援は大きくなるばかり。2位との差も少しづつ広がっている。

 残り半周。

「ローマスくーん!頑張れー!」

「お兄さんが見てるよー!!」

 お兄さんが見てるから何なんだよ。


 ゴールしたローマス君の周りに同じクラスの男子達が群がっている。

「やったねー、1位だよー!」

 別の所で声援を送っていたモモと梓が駆け寄ってきた。

「ドヤドヤっ!あたし速かった?」

「速かったよー!」

 モモに抱き着かれた朱音はドヤ顔で私と梓を見てきた。

「いやー疲れたー」

「全競技お疲れ様でーす」

 朱音のドヤ顔を無視して梓が預かっていたタオルで汗を拭く。


 その後、2年生と3年生もリレーで競ってクラスマッチは終わった。

 体育館で閉会式を行った後、教室に戻った私は席に座った途端、力が抜けるように机に伏せた。

「茅野さん、お疲れ様」

「おぉローマス君、ローマス君もお疲れ様」

 お互いに拳をぶつけると、教室に先生が入ってきてホームルームを始めた。


 結果、優勝は勿論掠りもしなかった。優勝は3年2組。準優勝は3年3組。

 暑かったり疲れたりしたけど、やっぱり動くと気持ち良いし楽しい。

 来年こそは3年生抑えて優勝しよう。




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