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38話「うっそぉ?!」



 うどんを食べ終えた私達は、次に行く店を決める。

「ん~、私はないかな~」

「あ、あたし有印用品行きたい、インクなくなっちゃったから買わないと」

「その前にさくらんぼ行っていい?」

「うん、いいよ」

「じゃぁさくらんぼ行って有印行って、他誰かありますかー」

 他のお客で賑わっている中、行き先を決めた私達はお盆を戻してフードコートを出る。


「さくらんぼってこっちだよね?」

 ショッピングモールは大きくてどこに何の店があるか時々分からなくなる。

 モモは自問自答して率先して歩く。時々思うが、モモってせっかちなのか歩くのが早い時がある。 着いていくのでやっとの私は、モモと朱音の会話に入れない。


 やっとの思いで着いたさくらんぼには、同じ年の女の子が沢山いた。キャピキャピした店にあまり入らない私は、新鮮味を感じて周りを見渡す。 店の端から端までピンクの装飾品やら売り物やらが所狭しと置かれている。

「ゆり見てー!可愛くな~い?」

「うん、そーだねー」

 棒読み過ぎ!なんて突っ込まれても私にはどうしたらいいか分からないよ。 共感してほしくて聞いたんだから、棒読みでもいいじゃないか。

 私と同じくこういった店にあまり入らないという梓は、朱音の後ろを着いて店の奥まで行っている。


「あ、ゆり!ゆりにはこんなのいいんじゃない?」

 モモが見せてきたのはハンドタオルだった。可愛らしいキャラがタオル全体に描かれていた。

「私にこんな可愛らしいの似合わないよ」

 え~?そ~ぉ?と言うモモはハンドタオルを広げて見る。

「ゆりは好きなキャラ何?」

 突然の質問に少し戸惑いながらも考える。

「ん~?別に好きなキャラいないかなー」

「えー?まじでー?」

 まじでー、と軽く返しながら歩いていると、朱音達と合流した。朱音はもう買い物を済ませたらしく小さめの袋を手にしていた。

「え、朱音もう買い終わったの?」

「うん、付箋(ふせん)買った」

 そう言いながら袋を差し出す朱音。

「ちょっと待って!すぐ買ってくる!」

 モモは慌てたようにレジに向かった。



 次に向かった店は梓のリクエストの有印用品。着いてすぐに梓は文房具コーナーに向かう。

 沢山歩いて疲れた私はソファに座ってモモ達の観察をする。

 梓と同じ所にいたモモは色んなペンを物色していた。

 朱音の様子を見ようとしたが、モモ達の近くにはいなかった。

「っあー」

 と思ったら私の横にいた。足をダラ~ンとしてソファの背(もた)れに体を預ける朱音。

「お疲れですなー」

「あんさんもなー」

 変な関西弁で会話を始める私と朱音。

「お疲れですわー」

「ホンマですわー」

 会話をしながらモモと梓を見やる。未だに物色しているモモは梓と一緒に会話を楽しんでいた。

「次何処行くー?」

「ん~……何処でもー」

 2人にも聞かないとじゃない?とモモ達を指差しながら朱音に言う。すると、「せやなー」と言いながら欠伸をする朱音。

 その後、何をするでもなく、変な関西弁を交えながらの会話は続いた。



「次何処行くー?」

 買い物を終えたモモと梓がソファまで来た。

「んー、私は行くとこないかなー」

 朱音も私と同じ意見のようで便乗してくる。モモと梓も考えるが、特にここと言った所はないらしい。

「……あ、じゃあ服屋巡りしよ!」

 突然提案してきたのはモモだった。

「……なにそれ」

 苦笑いしながらモモに主旨を聞く。

「その名の通り、服屋さんの店だけを見て回る!」

 よくやるんだー!と言っているモモに私達は苦笑い。

「じゃあ行きますか!」

 そういって私と朱音はソファから立つ。



「服屋巡りってこんななの?」

 隣の梓に問うと、さぁ?と首を傾げる。最初に入ったのは2階にある有名な服屋。

 適当に服を見て店内を回る私達。私と朱音はもう飽きている。モモはファッションに興味があるし、梓も意外と乙女な所がある為、飽きてる様子は一切ない。

「モモなんか買ったね」

「ホントだ、見て回るだけじゃなく、ちゃんと買うんだね」

 店の奥まで来てしまった私と朱音はレジにモモがいるのを発見する。


「ゆりと朱音は何か買うの?」

 私と朱音の姿を見つけたモモが駆け寄ってくる。

「いや、見たけど買うものはないかな」

「うん、どれがいいとか分かんないし」

 私と朱音がそう言うと、モモはえー?と言いながらまた服を見始めた。

「んー、あ!これとかゆりいいんじゃない?」

 青い服を持って私の体に服を合わせるモモ。反射的に腕を伸ばして体と服を密着させる。

「えー?んー、朱音はどうよ?」

 自分では分からないので、隣の朱音に聞いてみる。

「いいんじゃない?ゆりって青系似合うよね」

 朱音に誉められるなんて思っても見なかった。


 結局モモに勧められた服を買ってしまった私は、皆と一緒に別の店に移動する。次に来た店は3階にある服屋。

「私ここ来たことないや」

「うっそぉ?!」

「そんな驚くこと?」

「あたしもないけど?」

「あたしもない」

 モモ以外の私達はこの店に入った事がない。それを聞いたモモが凄い驚いている。

「ゆりや朱音は何処で服買ってるの?」

「しまむや」

「しまむやとか、だな」

 他には?!と慌てたように聞いてくるモモに私と朱音は考える。

「ん~、さっきのユニクヨとか?」

「ヒートテックはユニクヨだね」

 私と朱音の意見が一致する。だいたいしまむやで買うけど、しまむやに無いものをユニクヨで買うって感じだろう。


「ラインオンとかって男性物が多いと思ってた」

 皆で店内を回っていると、思いの外女性物が多い事に気付く。今まで外見だけしか見なかった私は驚きを隠せない。

「あたしもそう思ってた」

 梓が私の意見に賛同する。意外と乙女な梓でさえも男性物が多いと思って、来たことがないのか。 モモは来たことあるみたいだし、流石我らのファッションリーダー。

「確かにラインオンは男性物が少し多いけど、ちゃんと女性物もありますー」

 何も知らなかった私達にモモが口を尖らせながら言う。


 その後、ラインオンの店内を見て回る私達はモモの買い物を待って、他の服屋に移動する。

 モモがよく服を買う店に行ったり、その近くにある有名な服屋に行ったりして、モモの手には色んな服屋の袋がある。 お金を心配した私達だが、今朝お母さんから小遣いとしての五千札を渡されたらしい。 元から財布に入ってたのを足すと九千円あったらしく、今日は沢山買おうと意気込んでいたらしい。



「買ったね~」

 フードコートの空いている席に座った私達は、休憩としてクレープを買って食べた。

 生クリームを口元に着けたままのモモが背凭れに寄り掛かって大きく伸びをする。

「歩き疲れた……」

「足いてぇ~」

 私と朱音は足を揉みながらクレープを食べる。梓も足が痛いようで、足を擦りながらクレープを食べる。

「どっかの誰かさんがあっち行ったりこっち行ったりするからね」

 梓の言葉にモモが苦笑いしながら謝る。首を動かした事によって、鼻に生クリームが付いた事をモモは知らない。


 口元と鼻に生クリームを付けながらモモが何処行くか決めていく。

「靴屋行こ!彼処でブーツ買ってコーデが完成するの!」

 知らぬ内にそんな事やってたのか。

 クレープを食べ終えた私達はフードコートの出口に歩き出す。

「あたし何か変?」

 何か店の人に笑われたんだけど?と言うモモは未だにに分からないようだ。

「まぁ、分からない事が変だよね」

「あたしならすぐ分かると思うんだけど」

「それ分からないって色んな意味でヤバいよ」

 どういう事~?と私達を見てくるモモは未だに分からない。

「「「クリームついてる」」」

 鼻と口元を指差しながら言う私達に、戸惑いながら鼻と口元を触るモモ。

「……もぉ!早く言ってよ!」



「差し色に出来るブーツないかな……」

 靴屋に着いた私達はモモの後を着いていく。

「あ、これこの間買ったブーツだ」

 私達に見せてきたのは茶色のブーツで、今の季節に合わせて涼しいように作ったらしい。

「なんだったら今日のゆりとか梓の格好にも会うよ」

 そういって私の足元にそのブーツを置いたモモ。そのまま私のファッションをチェックするように体全体の見る。

「うん、ゆりか梓買ったら?」

 いきなり訪問セールスみたいに買うことを勧めてくるモモに、私と梓は全力で拒否する。

「お金がないよ!」

「これ以外でブーツに会う服とか分かんないし!」


 何とか理由を付けてモモの勧めを交わした私と梓は、空気となっていた朱音の後ろ姿を見つける。

「どーん」

「はいドーン!」

 モモがブーツを買いに行った間、朱音で暇を潰す私と梓。

 朱音の背中に体重を掛ける。梓の次に体重を掛けると、朱音は女性らしからぬ声を上げる。

「ちょっ、重っ」

「やーいやーい!擽りの仕返しじゃー!」

「仕返しじゃー」

 さくらんぼでモモがレジにいる間に擽られた時の仕返しだ。


「そろそろ帰る?」

 現在の時間は午後7時。近くにあった大きい時計は長針が2と3の間に位置していた。

「そうだね、帰るか」

 といっても駅までは同じだけどね。と梓が笑い掛ける。


「さっむ!」

「さみぃ!」

「今日風あったんだ……」

「髪がっ」

 外に出た途端、風に攻撃された私達だった。




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