37話「ホント天使!」
そら君達の虫取りに付き合った3日後、筋肉痛とさよならした私は、急いで髪を整える。
「ゆり!ご飯は?!」
「いらない!」
アイロンで髪を真っ直ぐに整えながらお母さんに叫ぶ。
1週間前に約束した時間まであと2時間。自転車で駅に行って電車に乗る。 約束した場所は2駅先にあり、駅から少し歩いた所にある為、急いで支度をする。
「行ってきまーす!」
何とか支度を終えて、急いで駅に向かう。
お母さんが出してくれた自転車に股がり、足に力を入れる。
「待ったー?」
私が約束の場所についてすぐ、朱音が掛けてきた。
「今来た所」
「良かった、さっ、行きましょ?」
何のキャラなのか、腕を組んできた朱音を振りほどく私。
「いや、何キャラだよ!」
「……ぶりっ子?」
何故に疑問系!と心の中だけでツッコミをした私は、朱音を隣に置いて後2人が来るのを待つ。
「ごめーん!お待たせ~!」
少しすると、モモと梓が一緒に掛けてきた。
「もぉ、待ったぁ!」
朱音がぶりっ子を演じる。
「ごめんごめん、待ったよな、ごめんな」
朱音のノリにノッた梓が、朱音の頭を撫でながら彼氏のように振る舞う。楽しくなった朱音は、笑いながら顔を膨らませる。
「ほら、もう行こうぜ」
梓が朱音の肩を抱いて歩きだす。
よく分からない私とモモは、その後を着いていくのに必死だった。
梓と朱音による即興芝居は2階のゲーセンの前で終わった。
「……さっ、ゲーセン行こうか」
ずっと肩を抱いていた梓が手を離すと、さっきまでのニヤニヤ顔がなくなり、いつもの真顔に戻った。 そのままの顔でゲーセンを指差す梓は、何処からが本気で何処までが嘘なのか分からない。
「朱音はー、あれやりたーい!」
彼女役が抜けていない朱音があるゲームを指差す。
指差しの先には、トラウマとなったゲームがあった。前に私を無理矢理ゲームに参加させられたあのゲームだ。
ぶりっ子キャラの彼女があんなゲームやるか!とツッコミたくなるが、それを堪えて梓とモモの背中を押して違う道を進む。
「はいレッツゴー!」
不意に捕まれた服を引っ張られる。
「なんでだぁー!」
「はい!今度こそ絶対やらないからな!」
セットされている銃を仕舞ってバッグを手にする。
「はぁぁ!スッキリしたぁ!」
良かったですねー、と棒読みに言いながら梓とモモの姿を探す。あちこちで色んなゲームをやっていたり、他の客の声でゲーセン内は騒がしい。
「おー!ちょっ、待って!これやらせて!」
店の奥に向かって歩いていく途中、止まってはUFOキャッチャーをやる朱音。
「あ」
「やっと見つけたー!」
音ゲーを集まるエリアを探索していると探し人を見つける。
「朱音ー?朱音ー!」
と同時にまた1人が行方不明になる。
「朱音がいない!」
焦ったように梓とモモに知らせる。
「……だーいじょーぶ!適当に見てればその内見つかるさ!」
顔を合わせる梓とモモは、少ししてモモが言う。
「……そうだね!」
適当に見ていよう!
朱音を見つける間、太鼓の鉄人をやる私達。
「……すごっ」
モモは普通だけど、梓凄いな!
普通モードでやるモモと難しいモードでやる梓。しかも1回も間違っていない事に驚く。
――梓、スペックどうなってんだよ!
――いたー
不意に小さく聞こえた声に周りを見回す。
「いーたー!」
朱音が此方に向かって走ってくるのが分かった。
私の体に抱き着いてくる朱音は、私の胸の位置で頭をぐりぐりする。
「家宝にすっぺー!」
「何私の天使の真似してんだ!」
天使の真似をするな!朱音がやったって可愛くないからな! 天使がやるから可愛いんだ!天使なんだ!
「聖川しょ――」
「庄之助じゃねぇよ!」
あんなおじさんと一緒にするな!
その後、やっとプリクラをやることに辿り着いた。いつものように可愛く決めたり、面白く決めたりして落書きをする。
ゲーセンを出た私達はここから結構歩いた所にある本屋に向かう。
「あ、あたしよくここで服買うよ!」
不意に声をあげたモモに私達は関心の声を掛ける。
「流石、やっぱりモモは女子力の塊だね」
「そーだねー、よっ!ファッションリーダー!」
「ねー?……さっ、早く本屋行こ!」
店の中には入らず、外見だけ見た私達はそのまま足を本屋に向けて動かす。
本屋に着いた私達は、別々に行動しだす。
「ファッションリーダー足るもの、常にファッション雑誌を見ているのさ!」
店入ってすぐに置いてあるファッション雑誌コーナーに早足で向かうモモ。
「こんなキュンキュンする恋してみたいよなー」
以外と乙女な梓は、レジの横に陳列されているケータイ小説の棚に向かう。
「いつ2次元に行っても良いように、いろんな漫画読んどかないとね!」
漫画と言えば朱音!っていう考えが定着しつつある程漫画を持っている。
私はと言えば、文庫本?
「何かいいのあるかな?」
店内ということもあり、小声で面白そうな文庫本を探す私。
暫くした後、レジ前に集まる私。
「新しいの2冊買っちゃった」
梓は色の違うケータイ小説を1冊ずつ買ったらしい。微かに嬉しそうに笑う。
「今月の買ったー!」
モモは毎月買って見ているファッション雑誌を袋に入れて持っている。
「新刊あったから買ってきた」
朱音は3冊買ったらしい。全巻集めている漫画の新刊と、試し読みで見つけた漫画を2冊。
「これ知ってる?今度映画化するんだって」
私が買った文庫本は今年の冬に公開される本で、最近CMで見たのを思い出して買ってみた。
次に入った店は本屋の近くにあるCDショップ店。
「何か最近出てたかな?」
今度は別行動をしないで、ジャニーズ関連やアニメ関連の音楽を見ていく。
「ゆり!天使!天使がいた!」
ジャニーズ関連を見ていた私を呼ぶ朱音。
天使と言うワードに反応した私は朱音の指差す先を見て素早く手に取る。
「私の天使!ここにいたのね!」
いつ見ても天使は天使だった。その大きく開いている口も大きく見開かれた目も可愛い。まさに私の天使!
「天使が……天使がいるよ!朱音!」
「ね!いたでしょ?ホント天使!」
私と朱音ではしゃいでいると、梓の拳が頭にヒットした。
「いっ……」
「いっ、たぁ~」
2人して頭を抑えながら後ろを振り向く。
「静かにしろ」
大魔王が降臨したようだった。
「ゆりと朱音はあそこ寄らなくていいの?」
CDショップを出てすぐにモモが質問してきた。モモの指差す方へ顔を向けて考える。
「んー、私はいいかな、特に買う物ないし」
「んー、あたしもいいやー」
私に続いて朱音も答える。
「そーっ、じゃぁお昼食べに行こ!お腹減ったー」
モモの提案に皆で了承してフードコートまで歩いていく。
「あたし何食べようかなー」
モモが考えながら歩く。その後ろを私と梓で歩く。モモの隣て歩いている朱音が思い付いたように声を上げる。
「あたし丸釜製麺にしようかなー」
朱音が言った店はうどんの店だった。全国的に店を持つ有名の店だ。
「じゃぁ私も朱音と一緒の所にしよー」
丸釜製麺のうどんは何度食べても飽きない美味しさだ。特に好きなのが釜玉うどんなのだが、乗せてくれる温泉卵を潰してうどんに絡めて食べるのはうどんの食べ方で一番好きかもしれない。
フードコートには沢山の人で溢れていた。丸釜製麺は勿論、たこ焼き店やミック等も行列が出来ていた。
結局、皆して丸釜製麺のうどんを注文した。
「釜玉うどんお願いします!」