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35話「どうちたの~?」



 夏休みが始まって1週間が経った今日は8月1日。太陽が出ている為、外には出ないで家の中だけで過ごす。


 時々、網戸の隙間から入ってくる風が部屋の中を涼しくしてくれる。

 リビングに行けばエアコンで涼しく過ごせる所を、ママ友の登場により自分の部屋で扇風機と時折入ってくる風で涼んでいる。


「……あ?」

 数学の課題を全部解いて答え合わせをしている。左上をホッチキスで止められているそれは、両面印刷のようで、答えの載っているプリントが一番最後に止められている。 その為、答え合わせをする際に、答え合わせ中のプリントと解答欄のプリントを(めく)ったり戻したりの連続で答え合わせしずらい。

「……見ずれぇな、何処だよ」

 ましてや、課題となっているプリントは解答欄含めて8枚。7枚のプリントと1枚の解答欄になっている為、解答欄の文字が小さくて見ずらい。


 夏休みの課題で一番最初にやっておくべきなのは、その人それぞれだ。 漢字が得意な人は漢字プリントから。数学が得意な人は数学プリントから。

 考えるな、感じろ!な人は習字や絵からだね。

「ゆりー!ごはーん!」

 どうやらママ友は帰ったらしい。お母さんの声に反応して大きな声で返事をすると、数学のプリントをそのままにしてリビングに向かった。






 お昼ご飯を食べ終えた後、数学プリントの答え合わせを終わらせる。

「……っだぁらっしゃぁあ!」

 終わったぁ!と大きい声を部屋いっぱいに響かせる。数学の次は何やろう?と課題を取り出す。

 漢字のプリントが両面印刷で4枚、英語のプリントも両面印刷で4枚、おまけにノートもある。

 読書感想文もあるし、絵も描かなきゃいけない。

 世界史の青木先生からは、一番の夏休みの思い出を描くから、と1学期の最後の授業で言っていた。9月最初の授業で描く事になるだろう。


 手に取ったのは英語だった。きっと数学の次に英語が得意だからだろう。

 課題の範囲表を確認しながら英語ノートをパラパラと開く。

「……うっわ、マジか」

 確認した所、約8ページが課題とされている。

 とりあえず漢字ノートも確認してみる。

「……」

 英語からにしよう。



 

 丁度4ページ終わった所で席を立つ。

 扉に近付きながら時計に目をやると、3時30分だった。

 リビングには誰も居なく、いつもより少し暗かった。周りを見渡してから台所に向かおうとすると、足下にみいちゃんが歩み寄ってきた。

 にゃ~ぁ、と鳴くみいちゃんは、構え!と言っているようでついつい可愛くて抱っこしてしまう。

 これは休憩だ、少しくらい抱っこしても誰も怒らない。だって、こんなに可愛いのだからね!

「にゃ~ぁ、どうちたの~?みいちゃん可愛い~!か~わ~い~い~!ニャァ!ニャニャニャァ!にゃ~イデッ!」

 構ってあげたのになんだい!蹴ることないじゃない!


 みいちゃんに蹴られた胸元を擦りながら台所に行く。冷蔵庫を開けると、昨日と同じようにラップでくるまれているチーズケーキを取り出す。

 一昨日、休みだったお姉ちゃんが作った物だ。休みの日はお友達とお出掛けか、お菓子作りをしているお姉ちゃんは手先が器用なのだ。 私のスマホストラップもお姉ちゃんが作ってくれた名前入りの刺繍のストラップだ。渡された時はビックリした。

「無くした時用に付けときな」

 確かそう言っていた。


 チーズケーキとアイスコーヒーを持って部屋に戻る。

 リビングの扉を開けると、みいちゃんが私の足と扉の隙間を走っていく。

「あっぶないよー」

 みいちゃんは我関せずと言った感じで、私と同じ方向に歩いていく。

 みいちゃんは私の部屋の前で止まると振り向く。

「なにー、みいちゃん、私の部屋に入りたいのー?可愛いねー、どうぞー」

 ニヤニヤしながら扉を開けると、やっぱりみいちゃんは我関せずと言った感じでスイーッとベッドに上ると寛ぎ始める。



 チーズケーキを食べ終えると、ラップを机の横のゴミ箱に捨てる。皿に乗せないで良かった。 食べ終わった後、皿洗うのが面倒だ。

「さっ!」

 アイスコーヒーの二口程飲んだ後、気合いを入れて残りの英語ノートの続きのする。

 糖分摂取、オッケー!


 続き再開して20分、スマホがなった。

 スマホがなった事によって、スマホを置いといたベッドに目が行く。 少しウトウトして寝そうだったみいちゃんも、いきなりの振動にビックリしてスマホに威嚇している。

「ごめんね~?みいちゃん」

 スマホを手にした私は、表示画面に出ている文字を見て電話に出る。


「……もしもしー?」

『やっと出たー!』

 無料電話アプリで掛けてきたであろうモモ。

「どうしたのー?」

『ずっと会話出て来なかったからさー』

 モモの言葉で分かって私は、スピーカー電話に切り替えてから電話表示画面を閉じる。そのままの指で操作して無料通知アプリを開く。

「ごめんごめん、課題やってた」

『はぁぁ、真面目だねぇ』

「真面目だねぇって、これが普通だから」

 モモの笑い声を聞きながら、最初のメッセージから1つ1つ読んでいく。

『でさ!7日空いてる?』

 モモからの言葉と同時に要件を知った私は、モモと電話しながら文字を打っていく。

「うん、大丈夫だよ」

『何も予定ない?』

「ないよ」

 モモに言ったのと同じ事をグループメッセージに送る。


 無料通話アプリではモモの他に朱音と梓もメッセージを上げていた。

『やったー!おっ、やったー!』

「っ、何何?何で2回もやったーって言ったの?」

『ゆりの言葉とゆりのメッセージに』

 なんて言いながら笑っているモモ。

 英語ノートをそのままに、みいちゃんの頭を撫でながらベッドに腰掛ける。

『場所は決まったんだけど、何時からにするかはまだなんだよねー』

 困ったように言うモモは、続けて私に聞いてくる。

『ゆりは何時なら大丈夫?』

「別に、朝早くなければ大丈夫だよ」

 そっかー、とモモが言うと電話がいきなり切れた。


 なんだったんだ?何故いきなり切った……?


 少しすると、モモから個人でメッセージを送ってきた。

 弟くんがイタズラで切ったらしい。弟くんに対しての怒りスタンプを送ってくるのは何でだろうか。



 (しばら)くメッセージを送り合っていると家の何処かで扉の音がした。

 操作してたスマホをベッドに無造作に置くと、私の膝に伏せていたみいちゃんを抱いて部屋を出る。

 突然の事に驚きながらも腕の中に収まっているみいちゃんは、私に顔を向けて小さく鳴く。

 玄関に続く廊下を歩くと、お母さんと鉢合わせになる。

「あら、ゆり何? みいちゃんとお出迎え?」

 買ってきた物を両手に持っているお母さんは、私に笑い掛ける。 左手で大きいエコバッグを持ち、右腕に小さいエコバッグを掛けている。

 右手に待っていた家の鍵を置くと、手を伸ばしてみいちゃんの頭を撫でる。そのままの手で私の頭も撫でるお母さん。

「お留守番ありがとう」

 いつも見てる笑顔で言った言葉に少し恥ずかしさが出てくる。

 初めて1人でお留守番した時もお母さんに同じ事を言ってくれたのを思い出す。 当時の私は小学校高学年だったし、みいちゃんも居たことで不安等は不思議と出なかった。ちょっと寂しさがあったりしたが、今となっては可愛い思い出のようだ。


「ゆり?突っ立ってないでリビング入るよ?」

 みいちゃんを抱いたまま思い出に浸っていると、後ろからお母さんの声が聞こえてきた。

 我に返った私は、みいちゃんを抱え直してお母さんの後を着いていく。




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