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27話「それだー!!!」



――現場の茅野ゆりです!此方(こちら)が割られた硝子ケースです!――


 結局、朱音が後から追ってきて3人だけで割れた硝子ケースを見にきた。

「確かに、生で見ても分かる、斜めに割れてるね。なんでだろう?」

 私とモモと朱音の3人は、丁度硝子ケースの割れている前にしゃがんで、まじまじと見る。

「谷がわざと斜めに撮ったって事はなくなったね」

「あ、ここヒビ!」

 私とモモで話している間に、朱音はまたヒビを見つけたようだ。


 ふと、梓が言ってた可能性の話を思い出す。

「梓が言ってたんだけどさ。谷さんより先に校舎内に入った男子生徒が2年生なら、割れてる事に気付かずに行く事があるかもよって」

 2人に挟まれる形でしゃがんでた私は、両端の二人からの視線に負けて立ち上がる。

「ほら、丁度硝子ケースと2年生の下駄箱の間に建ってあるこの太い柱」

 硝子ケースを向いてた顔を後ろに向けて、それを触りながら2人に話す。

「もし男子生徒が2年1組か2組の場合、ここに居ても気付かないでしょ?上に行くときも、この柱が邪魔でこうやって斜めに歩いていく必要がある。そうなったらそこの硝子ケースは死角になってあまり見えない」

 梓に話を聞かされた時はあまり期待しなかったけど、実際に自分で検証してみたら、思いの外硝子ケースが見えない。

 私が動作を着けながら説明すると、モモと朱音もやってみる。

「……あ!確かに!」

「あまり硝子ケースが見えないね、梓の言った通りだ」

 やってみて思う、梓の言った事は本当かもしれない、と。

 その後、チャイムが鳴り、私達は急いで教室に戻った。



 5時間目が終わり、いつものおやつタイムにおやつを広げる。

「思ったんだけどさ、先生達は聞いたのかな?硝子ケースの割れる音」

 突然梓が話題を変えた。さっきまで皆でおやつの話をしていたのに、何故か話題を硝子ケースの謎に変えた梓は続けて口を開く。

「時間的に、朝でしょ?だったら、先生の誰かが割れた音を聞いてる筈でしょ?」

 梓が人差し指と親指を顎に沿えて考えるポーズを取る。

「でも、今日教室に来た先生達は誰も聞いてないって言ってたよ?」

 考えるポーズを取っている梓にモモが疑問系で返す。

「それが可笑しいんだよ。だって先生って、早く来るもんでしょ?なのに誰一人その音を聞いてない」

 同じポーズのまま梓が皆に問い掛けるように話す。

「つまり、どういう意味?」

 朱音の頭では到底解決出来ないだろう。


 朱音に分かるように説明する私達。

「ほぉー、つまり犯行時間は先生が来るより先って事?」

「もっと正確には警備の人が帰ってから先生達が来るまでの間、かな?」

 朱音の言葉に付け加えるように中庭さんが言う。

「でも先生達って、大体何時に来てるの?」

 一番の疑問、私の言った言葉に皆して固まる。

「……何時なんだろう」

 モモの小さい声が空しく消える。



 コーヒーの匂いが充満する室内は少々息苦しい。

「俺はぁ、確か7時50分頃?」

「それは本当ですね?」

 放課後、皆して予定が無いのを良いことに、探偵気取りで職員室に来た。犯行時間を明白にする為だ。

 前もって振り分けした担当の先生に話を聞いて行く。

「おう。確か、丁度磯野先生も来てたぞ。ですよね?磯野先生」

 隣の磯野先生に話し掛ける青木先生。

「えぇ、そうですよ。確か、私が車から出た時に青木先生の車が駐輪場に入って来たんですよね?あの赤い車」

「えぇ、そうです。話もしましたよね。ほらぁ!茅野ぉ、何?あの硝子ケースの犯人俺だと思ってる?」

 ムカつく顔をしながら私に聞いてくる青木先生。殴りたい衝動を抑えつつ、冷静に答える。

「別に、全先生達に同じ事聞いてるんで」

「別に、って……エリカさまかよ!」

 私の言った一言に青木先生はツッコミを入れる。誰よ、エリカさまって。

「誰ですか、エリカさまって」

 首を傾げて青木先生に聞く。

「えぇ!?知らないの?!エリカさまだよ!あの!」

 “あの”って言われても分からない。

「磯野先生は分かりますよね?!エリカさま!」

「はい、分かりますよ。澤尻エリカさんですよね?有名人の」

 首を傾げながら考えていると、青木先生と磯野先生が会話を始めてしまった。一応2人のアリバイは確認取れたので、そのままにして別の先生に話を聞く。



 何とか全先生に聞く事が出来た私達は、図書室に移動してアリバイ確認をする。 そこから導かれた結果、犯行時間とされる時間は4時から6時までの間となった。 その間の2時間で犯行が出来る人が硝子ケースを割った犯人という事だ。

「警備員さんが帰ったのが4時手前でしょ?早くて4時って、幾らなんでもそんな早起きな生徒居ないでしょ!」

 谷さんの言う言葉にモモが反論する。

「でも、そうなったら学校とは関係ない人が硝子ケースを割ったって事になるよ。そんなんだったらうちらがこんな事やったって到底分かんないじゃん!」

 “到底”という言葉がモモの口から出たことに、場違いだが感動してしまった。


 皆で考えていると、突然梓が図書室のカウンターを指差した。

「ど、とうしたの梓」

 戸惑いながらも梓に問い掛ける私。

「まだ話を聞けてない人居た」

 指差しの先をジッと見詰める梓。指先と目線を辿る私達。

「あ!花!お花屋さんだ!」

 学校の近くにあるお花屋さんは、よく学校にお花や種を届けてくれる。それを使って花壇に植えたり、定期的に水をあげたりしている美化委員をよく見掛ける。

「確かに関係あるし、話も聞いてないけど…幾らなんでもお花屋さんが学校の硝子ケースを割るかな?」

 皆が納得しかけた所で、谷さんが口を開く。

「確かにそうだけど、お花屋の位置から校門と裏門が見えるでしょ?」

「「「それだー!!!」」」

 梓は冷静に、店を開いている位置を示しながら谷さんに話す。それに対して叫んだのは私と中庭さんと三宅さん。 谷さんは論破されたかのように固まっていて、朱音とモモと飛田さんは店の位置を確認しているのか、天を仰いでいる。


――ここで別行動を取る私達。朱音とモモ、谷さんと三宅さんの4人は、学校の近くで店を開いているお花屋の店長さんに話を聞きに行った。 残った私達は、謎の男子生徒を探すべく各教室に聞き込みに行く。 さて、少しずつ明らかになっていく謎。犯人は一体、誰なのか?!そして割った理由とは?!――




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