14話「ピーターパンか」
テスト週間の殆どを遊んで過ごしていた私達。タイテツやプリクラ、シューティングゲームにカラオケ。沢山遊んだ記憶がある。
テストは現代文、数学A、世界史、英語、化学、家庭、保健体育の7教科あり、初日の今日は数学A、化学、家庭の3教科。
数学は得意だし、公式さえ覚えればなんとかなる。ケアレスミスさえしなければ90点は行ける筈。
化学は少し苦手だが、化学式を少し覚えれば赤点は免れる。60点前後かな。
家庭はまぁ、それなりに取れるだろう。殆ど捨ててるけど、休み時間に軽ーく教科書見れば赤点は免れる筈! 似たような言葉が沢山あるからそこはちゃんと覚えて、『理由を述べよ』みたいな問題は注意!少しでも言葉が少ないと丸を貰えないらしい。
チャイムがなると同時に、監視役の先生がテスト用紙を配り始めた。
「机ん中何もないなー?」
配りながら言う先生に、生徒皆が机の中を調べる。
机の中に手を突っ込んで叩くと簡単に調べられる。そのせいで、教室が一斉に五月蝿くなる。
テスト用紙が配られると一気に静かになる教室。
「始めていいよー」
先生の合図で一斉にペン音が奏でるように鳴る。
約3時間のテストを終えると、一時的な解放感に身を委ねて、倒れるように机に伏せる。
「ゆり、帰ろう」
少し雲が浮いている空を眺めながら、明日のテストの事を考えていると名前を呼ばれた。
「あー、うん。あれ?モモは?」
「強制的に話を聞かされてる」
「またっすか……」
梓と朱音が一緒にいた。モモは職員室で話を聞かされているらしい。どんだけ職員室好きなんだ、モモ。
「とりあえず、職員室までお迎えということで」
「はいよ」
椅子を閉まって歩き出す。男子達がふざけているのを横目に教室を出る。
「失礼しましたー」
職員室の前で待っていると、ようやくモモが帰って来た。
「今回はどんな話を?」
「簡単に言うと、テストぐらい真面目に受けて、っていうお話でした」
「モモの寝方は、私今寝てますよーみたいな寝方だからバレちゃうんだよ。 もっと自然な感じに、シャーペン持って寝てればそうそうバレないよ?」
「なるほどぉ……」
「さて、帰りますか」
4人で笑いながら話す。
「あ、またゆりの家行きたい!」
「おー、いいねー」
「みいちゃんに癒してもらおう」
「ねぇ、私の意見は?」
何故か私の家で勉強する事になってしまった。この人達は、何故私の意見を聞かずに決めてしまうのだろう。
「あ、そういえばさ、数学のテストで最後の大きい7番あったじゃん?その1問目の答え何?」
いきなり話を変えたモモに私達は一瞬答えるのが遅くなった。
「えー、何だっけ?」
「えー?なんか変にムズくなかった?」
「うーん、あたし途中でやめた」
今日のテストを振り返りながら、あーだこーだ話していると家に着いた。
「みいちゃんは?」
家に上がってすぐに朱音が言った。みいちゃんの事しか考えてない人は帰ってもらいたいのだが?
「みいちゃん、朱音の事が嫌いなんじゃない?」
私が前に、お姉ちゃんに言われた言葉をそっくり朱音に言ってみる。
「そ、そんなっ……みいちゃんっ、なんでっ」
「最近のみいちゃんね、近所の猫の所に行こうとしてるの」
「朱音の恋は一方通行」
「ドンマイ、朱音」
落ち込んでいる朱音に梓が恋に例えて言った。それにモモもノッかり、朱音の肩に手を置いている。
「恋はね、辛いんだよ、朱音」
「……別にみいちゃんに恋してるわけじゃないよ?!」
まぁまぁ。
「さぁ!勉強をぉ――しましょう?」
本当はもっとドンっと言いたかった。途中から疑問系になってしまった私は、モモ達を見る。
私の机の上や引き出しの中を物色しているモモ、ベットに寝転がりながらみいちゃんと戯れる朱音、タンスを開けて服やら下着やらを物色している梓。
「梓、いつの間に変態になってしまったの?」
「大丈夫、ゆりの女子力をあげるため」
いや、意味分かんないから。真面目な顔して何言ってんの。
「……何してんの?!物色やめーい! みいちゃん取り上げるよ!?勉強やりますよー!?」
「「「帰ったらやるー」」」
笑顔で言う3人。
「……来た意味!」
「「「遊びに来ましたー」」」
挙手しながら笑顔で言う3人。
もー、あー言えばこー言うんだから。
「でもモモ、私の家で勉強するって言ってなかった?」
「いーや?言ってないよ?ね?」
「「うん、言ってない」」
「ゆり、何勘違いしてんの。確かに、ゆりの家に行きたいとは言ったけど、そこで勉強やるとは言ってないよ。記憶大丈夫?」
そうだったか?勉強するって、言ってなかった?
「ほら、ゆり、あたしちゃんと録音したけど、聞く?」
『あ、またゆりの家行きたい!』
『おー、いいねー』
『みいちゃんに癒してもらおう』
『私の意見は?』
『さぁーいこー』
『夢の彼方へー』
『ピーターパンか』
『ちょ、ちょい待って』
「ホントだ、言ってない」
「ね?」
「「ね!」」
「……しょうがないなぁ」
長時間ぶっ通しで遊んだのなんて久しぶりだ。
「あー楽しかったぁ」
「ね」
「ゆり、マルカー上手いね」
「当然!中学生の時にめっちゃやってたから!」
「この間のゲームでは負けたのにね」
「そっ、それは言わないで!忘れて!」
「そろそろ帰ろうか」
部屋で漫画読んで寛いでいると梓が言い出した。
「そうだねー。ゆり、これ何処にあった?」
「そこの漫画棚、端の方に置いといてー」
「テーブルの上の、――ふっ!これっ描いたの誰?」
「ん~? ぶっ!あっは、何これ!?誰だよっ、こんなん描いたの!」
「ん~、あ、あたし」
「朱音ぇ、お前っ!何っ、何描いてんの?!めっちゃうまいー!」
テーブルの上を片付ける時に見つけたのは、朱音が描いた今日の監視役先生の似顔絵。
「それっ、青木先生だろ!」
「うん、そう。でコレが宇野で、コレが佐藤先生」
「おぉーうまー」
「写真撮っていい?」
青木先生は今日の1時間目の監視役先生。世界史の先生でこの間のもやしのTシャツを来ていたサツマイモ体型の先生。 特徴は、絶妙なサツマイモ体型と遠くからでも見える濃い髭。
宇野は2時間目の監視役先生。英語の先生で、背が低い先生。沢山いる先生の中でも一番低いだろう。 そのせいか、生徒の殆どは影で呼び捨てで呼んでいる。 そんな事を知らない先生はシークレットシューズを履いて少しでも高さを足そうとしている。
佐藤先生は3時間目の監視役先生。体育の先生で、背が高い先生。 宇野の隣に立つと宇野の低さが際立つ。この間、身長を聞いた所、「191センチ」と言っていた。 調べてみると、沢山いる先生の中でも一番高い事が分かった。
朱音が描いた先生達の似顔絵を写真に収めると、片付けを再開する。
「あー、楽しかった」
「また明日ね」
「うん、モモはちゃんと勉強してよ?」
「分かってるよ~」
「……本当に分かってる?明日現代文あるからね?」
「もー、分かってる!また明日ね、バイバイ!」
「バイバ~イ、ゆりも勉強しなよ~」
「朱音には言われたくないわ!」
「ひでぇ!」
大きく手を振る3人に、玄関前で手を振り替えす。
さて、これから勉強しなきゃ。