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13話「狙ってねぇわ!」




 昨日からテスト1週間前で部活動禁止になっている。

「今日どうする?」

「勉強?どうしよっか」

「違う違う!遊びだよ!」


 テスト週間だろうと殆どの生徒が勉強しないだろう。このモモのように。

 殆どの生徒が一夜漬けだろ。テスト当日は2、3教科ずつだから頑張れば結構点は行くだろう。そう、これが!一夜漬けの術!つって!……


「ゆり何やってんの?忍者?」

「え、ニンニン!つって、昨日ナルト読んだから、ね……」

 変に格好つけて術を掛ける時の組み手を皆に見られた。その場凌(ばしの)ぎの言葉で逃げると、他の皆は会話し始めた。


「さぁ。では、早速行きますか!」

「行こう!夢の彼方へ!」

「ピーターパンか」

「どこ行くの?」

 馬鹿な事してた私はどこに行くのか聞いていなかった。冷静に突っ込んでる梓に聞くと、「プリクラ取りに」と一言。

 昨日はタイテツ――太鼓の鉄人――だった。 昨日何回やったと思ってる?10回以上だよ! お陰で昨日の夜お母さんに怒られたよ! 後でこっそりお父さんにお小遣い貰ったから大丈夫だけど、今日はあまりゲームやらないようにしよう?!


「あまりゲームはやらない方向でお願いね」

 電車に乗って目的地に着く間に私はモモに言った。

「分かってるって!」

 本当に分かってる?何か嫌な予感する。


「さぁ、やって参りました!プリクラコーナ~!」

「イェーイ!パフパフ~!ヒューヒュ~!」

 何故か異様にテンションが高いモモと朱音。

 モモ!分かってるから叫ばないで!他校の生徒が見てる! 朱音も! 何一緒になって盛り上げようとしてんの!迷惑でしょ!? 拍手だけにしときなさい!てあれ?!梓が拍手してる?! 何故モモのテンションにノッた?!

「はいはい。適当に空いてるの見つけて、プリクラ取るよ」

 進んで!とモモと朱音の背中を押しながら歩き始める。沢山いる女性の中を掻き分けながら空いてるプリクラ機を探す。

 モモはプリクラについて詳しいから、どのプリクラ機が可愛く写れるか知っているらしい。

「ここ空いてる!これ美肌になれる奴だ、これでいい?」

 空いてたら何でも良いんじゃないかな。プリクラ機って1つ1つ機能に違いがあるのか。

 そんな事を思いながら、承諾してプリクラ機に入る。


『可愛くお茶目に決めちゃおう!』

 プリクラ機の言う通りに可愛くお茶目に決める私達。しかし、撮る時の光が眩しくて半目になっている私と朱音。それを見て機内で大爆笑の私達。

『自慢のお目目をパッチリ!』

 今度は半目にならないように、目を見開く。すると、何かホラー風になってしまった。それに皆して爆笑。

「ゆり面白すぎ!」

「ゆり、もしかして狙ってる?」

「狙ってねぇわ!」

 笑いながらカメラにピースする。すると、前に居た筈の朱音が私の横に居た。

「朱音、そこだと見切れるん――」

  カシャッ

 その写真を見ると、朱音以外の私達が固まった。カメラに向かって笑顔でピースしているモモと梓。それに対して、横を向いている私、私のすぐ横に朱音の真顔が見切れている。

「「「心霊写真……」」」

 私とモモと梓の声が重なる。私達3人が見詰め会って朱音の顔を見ると、何故かドヤ顔。 何が面白いのか、モモの小さな笑い声が火種になり、私達は笑った。

『皆だーい好き!』

 その後、皆で抱き合ったり、カメラ目線でカメラに向かってかめはめ波をしたりと、変なポーズを撮った。

 落書きコーナーで心霊写真をホラー風に仕立てあげた朱音は大満足、と言った顔をしている。


「今度これ!」

 主にモモが先陣切っていくから、空いてるプリクラ機を見つけるのは早い。


『皆でおしくらまんじゅうだぁー!』

 真ん中に集まって、全身を撮る。こうやって見ると、モモと梓の足が細いのが分かる。

『今日は気合い入れて来たよー!』

 カメラ目線でガッツポーズを撮る。

 今度は上手く撮れた。目が半目になってないし、瞑っちゃってるのもない。



 落書きはいまいち苦手だ。その為、モモと朱音に任せて、私は後ろで見ている。

 モモと朱音は、私や梓、それから自分自身の顔にスタンプやらメイクやらを落書きしていく。それから、日付や季節物の言葉を足していく。

 大体の写真に落書きをした所で、落書き終了。


 プリクラコーナーの一角には、出来上がりのプリクラを鋏で切り分ける事が出来る便利な場所があるらしい。心優しい朱音に切り分けてもらっている。

「画像送る?」

「あ、うん、梓もだよね?」

「お願いしまーす」

 送られてきたのは、さっきの心霊写真だった。

「モモ、これ気に入った?」

「うん、面白い」

 笑いながら会話をするモモと梓と私。


「ねぇ!あれやろう!」

 プリクラコーナーを出て色んなゲームを見ていると、朱音が提案してきた。朱音の指差す先には、シューティングゲーム。

「でもこれ、2人でやるゲームだよ。それにこれって、ゾンビが出てくるやつでしょ?や――」

「あたしパスで」

 やだよ。と私が言い切る前に梓が拒否してしまう。

「じゃぁ梓は、私と一緒にタイテツしよう!」

 待って?!私の意見は?!私の意見も聞いてー!?私もやりたくないよー!!

「じゃ、ゆり、やろっか!」

 朱音の笑顔が怖い。



「もう絶対やらない」

「えー?なんで?面白かったでしょ?」

「んなわけあるかっ!最初の部屋で銃弾なくなるわ、次の部屋でライフがなくなるわ。 もーやりたくない!」

「えー?でも楽しかったでしょ?笑ってたじゃん」

「楽しくねぇっ!引き笑いだよ!あんなの来て『わぁー楽しー』ってなるかっ!」

 朱音と私が口論していると、モモと梓が戻ってきた。

「あー、楽しかった。ゆりーお疲れー」

「お疲れー」

「な・に・が!『お疲れー』だぁ!」

「ゆり、犠牲があって救いがあるんだよ」

 なに真顔で言ってんだ!そんな格好いい事言っても、はいそーですかってなんないよ?!


「まぁまぁゆり、あれでもやって忘れよう、ね?」

 梓に対して文句を言っていると、モモが私を宥めてきた。それと同時に、あるゲームを提案してきた。

 モモの指差しの先にはマルオカート――通称マルカー。丁度4人分の席が空いている。 私達はモモに承諾して、マルカーの前に移動する。

 よくテレビゲームでやっていた私には楽勝だろう。

「私、楽勝だね」

「なんで?」

「私は、中学の頃に何度もやっているのだよ!テレビゲームで!」

「ふ~ん。実際に操縦するのが初めてなら、そんな事言えないよ」

「な、なんだと?!」

「ふん!せいぜい最下位にはならないように頑張るんだな」

「なっ!朱音もな!」

 一体何者なんだ、朱音は。どんな作戦があると言うんだ。絶対に負けられない! そう!今ここで!私には負けられない戦いがあ

「始めるよ、ゆり」

 ……梓、空気、読もう?



 結果、最下位は私。おかしいなぁ……

「あーれ~?ゆり、楽勝なんじゃないの~?」

「別に~?手加減しすぎただけだしー」

 ふ~ん。と私の言葉に朱音がニヤニヤしている。

 正直、めっちゃ悔しい。 だって、あの朱音に負けたんだよ?!

 顔に出さずに悔しがっていると、モモが変な事を言い出した。

「じゃぁステバァ行こう!」

 は?ステバァ?なんで?ゲームは良いの?何でコーヒー店に行くの?


「マルカーで最下位の人、ステバァで皆のコーヒー自腹。あたしは確実に言ったよ。 馬鹿な事やってたゆりと朱音は聞いてなかった?」

 ……マジか。

 朱音も今聞いたのか、物凄いガッツポーズを連発している。

 梓の考える事はえげつない。あのコーヒー店有名だし、高いじゃん。 私達みたいな働いてない女子高生はそう簡単に飲めるものじゃない。

 何か梓、生き生きしてるけど、好きなの?ステバァ好きなの?友達の財布を犠牲にしてまで飲みたい?


「さぁ、ゆり、行こうか」

 梓の笑顔が怖い。


 今日の星座占い、山羊座最下位だったのかな……




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