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11話「アイスよろしく」




「鬼ごっこやる人、この指止ーまれ!」

「イェーイ!」

「……は?」

「……ん?」

 突然、中庭さんが言った一言に私達は固まった。

 今日は、モモがプリントをやってきていなかったから、と先生から下された罰でやらされているプリントの手伝いの為、教室に残って一緒にやっていた。主に梓が。

 私と朱音はコンビニで買ってきたアニメ雑誌を読んでいた。 何故か一緒に残っていた中庭さん、谷さん、三宅さんは黒板に落書きをしていた。筈だが

「どうしたの?いきなり」


 中庭さんの一言に喜んでいた三宅さんと谷さんは、早くも鬼を決めようとじゃんけん前のいつもの儀式をしている。

 何が「よし来い」だ!まだやると決めてないし、モモがまだプリント終わってないから!

「鬼ごっこ、久しぶりにやりたいし、つまんないから」

 だったら帰れよ!まぁ、私も?やりたい気持ちはあるけどね?でも、まだモモがプリント終わってな――

「終わったー!鬼ごっこやろう!鬼じゃんけんする!?」

 早っ!え、本当に終わったの?! やりたいからってやけくそに終わらせた?!

「大丈夫、ちゃんとやったよ」

 私の心を読み取ったのか、梓が教えてくれた。良かった、後で職員室来なさいコースはもう走らないようだ。


「ルール説明しまーす。校門出ちゃ駄目ね。校舎内も先生に怒られるから駄目。 制限時間は最終下校時刻、チャイムがなった時点で鬼だった人はコンビニで皆の分のアイス奢り!」

 中庭さんの顔が悪い顔になっている。

 鬼や、まさしく鬼や。お主も悪よのぉ。



 私は今、何処にいるでしょう?学校の奥のごみ置き場。

 燃えるゴミ、燃えないゴミ、ペットボトル、缶。缶の横に身を潜めて隠れる。

 最初の鬼は梓。始まって少し経ったが、まだ近くにいる気配はない。誰かタッチされたかな。


「まどか~、谷~、だーれもいない」

 ゴミ置き場の身を潜めて少し、誰かの声が聞こえた。息を潜めながらこっちに来ない事を願う。

 だが、その願いはすぐに打ち砕ける。

「ゆり、めっけ!」

 三宅さんだった。タッチして、三宅さんは逃げていった。追い掛けるつもりだったが、三宅さんは足が速い。梓よくタッチ出来たな。


 三宅さんが逃げて行った方とは逆方向に行ってみる。もっと簡単にタッチ出来る人を探す。

 校舎の前を歩いていたら、モモを見つけた。

「やべぇ、見つかった!あはは!」

 誰かと一緒にいるのか、モモは誰かと話ながら逃げていく。校舎裏に逃げるモモを追い掛ける。 すると誰かいた。その後ろ姿はすぐに分かった。

「待てや朱音ぇぇ!」

 すぐに標的を変える。

「えぇぇ?!何故にぃぃ?!」


「ちょっ!何でこっち来るんだよ!」

 モモが校舎前に出ようと曲がると、朱音も同じ方向に曲がる。その行動にモモが朱音に突っ込む。

 校舎前に出ると中庭さん、梓、谷さん、三宅さんがいた。4人は私達を見ると、(きびす)を返して走り出した。

 この際、もう誰でもいいからタッチしたい。もうすぐで最終下校時刻のチャイムがなる。それより前に絶対――!

「絶対、に!タッチ!してやらぁぁぁ!」

「「「「「そんな全力で鬼ごっこすなぁ!」」」」」

 今日一のツッコミだと思う。その声はモモと朱音、中庭さんに谷さん、三宅さんの声が乗っていた。思わず笑ってしまった私は、足に限界が来たのか、突然コケた。

 血だ。

「ゆり!大丈夫?」

 最初に気付いた朱音が足を止めて、此方に駆け寄ってきた。その間も私は怪我した所を見ていた。

 良かった、スカートは破けてない。


「ゆり?大丈夫?痛い?」

「うわー、ゆり大丈夫?痛そー」

 思わず泣いてしまう。怪我した痛みからか、皆の優しさにか、分からないが泣いた。

「うぅ、痛い…」

 とりあえず痛い事を言う。すると、皆して慌て出した。

「あー、ゆり泣くな泣くな!」

「痛いねーゆり、大丈夫だよー」

「ゆり大丈夫?!泣かないでー!」

「ゆ、ゆり!とりあえず立てる?保健室行こう!」

 朱音に手を差し出されて、私はそれに手を置く。


「タッチ」


「はぇ?」

「ん?」

「え?」

「……あ」

 私の言葉に皆して各々反応する。梓は気付いたようだ。


    キーンコーンカーンコーン


「朱音、アイスよろしく」

 さっきなったチャイムは制限時間である最終下校時刻のチャイム。


「…んあぁぁぁ!」

 ようやく事態が分かった朱音は奇声を発した。

「うわ、ゆり、さっきの演技?」

「まぁ痛いのはホントだよ。泣くほどではない」

「ゆり怖ぇ」

「さぁ、アイス何にしよう」



 私の膝には可愛らしい絆創膏。こんな絆創膏を持っているモモは女子力高い。

 コンビニに向かう途中、

「今度私が何か好きなの買ってやっから」

 私の前を歩く谷さんが朱音を励ましている。

 谷さんは朱音を抱き締めながら励ます。すると、朱音は元気を取り戻したように、馬鹿なことをし始めた。


「さぁ、どれにする?私もう腹を括ったからドーンと出してきたまえ」

 何そのドヤ顔、むかつく。皆も思ったらしい。

「何だよそのドヤ顔、朱音ちょっとウザいよ」

「ほら、じゃぁ、あたしこれにしようかな」

「そーだね、私もこれにしようかな」

「わー、そんなに沢山あるなら全部買おうかなー」

 モモは私の思った事を言った。中庭さんと三宅さんはわざと高いアイスを手に取る。谷さんは全部を買うとか言い出した。私もそれに便乗する。

「あー、ドーンと出していいなら全部買う事出来るね」

 唯一何も言わない梓は、朱音で遊ばないのかと思っていたら、(おもむろ)にアイスを手に取る。

「最後の1つだけど、私これね」

 手に取ったアイスは朱音の好きなのアイスだった。梓の言葉が本当なのか確認してみると、アイスコーナーに同じのはなかった。


 結局、朱音は梓と半分こにアイスを食べた。

 外はもう真っ暗になっていたが、皆で仲良く食べた。外のベンチに座って食べたそれは、少しだけ蟻の餌となった。





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