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10話「怖いご時世だわ~」




 5時間目の授業は世界史。先生が面白おかしく説明するから笑いが絶えない授業だ。 今も、先生がコロンブスの武勇伝を面白く話しながら説明していて、皆笑っている。面白くて暗記も出来るから世界史の授業は楽しい。

「分かる?こーれ全部!コロンブスがしたんだよ、スゲーよな」

 よ!コロンブス先輩さすがっ!と黒板に描いたコロンブスの似顔絵に向かって先生が言っている。 コロンブスの似顔絵上手いな。

 コロンブスの武勇伝は分かったけど、いまいち分からないのもある。先生の服だ。

 白地に黒字で『もやし』とあるが、そのTシャツを着る先生はどっからどうみてもさつまいも体型。 もやし体型に見せたいのか、もやしが好きなのか、よく分からないがその服先生には似合わない。


「所で先生、何でそんなTシャツ着てんの?」

 ありがとう、よくぞ聞いてくれた会沢さん。

「え?もやしが好きだから」

 後者だったー!逆に何でもやしが好きでそんな体型になった?!皆もポカンとしてるよ!

 知らんぷりするかのように先生は黒板に文字を書いていく。

「よーし!じゃぁ、番号順に答え書いてけー」

 プリントの問題の答え合わせだ。先生の言葉にポカンとしていた皆は一斉に動き出した。


「ゆりー、ここ合ってる?」

「ん~?分からん!」

「え~?あ、ゆりの所合ってるよ」

「ありがとー」

「「ゆりー、梓ー」」

 梓と確かめ合いっこしながら話していると、モモと朱音が同時に左右から来た。

 二人も確かめ合いに来たのかプリントとシャーペンを持っている。

「ここってこれで合ってる?」

「うん、合ってるよ」

「ゆり、ここ分かる?」

「……梓、分かる?」

 モモは梓に、朱音は私に聞いてきた。梓は分かっているようでモモと話し出したが、私は朱音に質問されても分からないので、梓に聞く。

「プリント見ていいよ」

 今だけ梓が神に見える。

 梓のプリントは全ての枠に答えが書かれていて、私と朱音とモモは一斉に答えを写し出した。



 梓のお陰でプリントには赤い丸がびっしりと書かれている。

 授業が終わるとそれを閉まって体操服に着替え始める。 今日の体育は体育館でやるらしく、早く着替え終えた男子達がぃやっふぅーしながら窓枠を飛び越えていく。

 普通に扉開けて行けや。窓枠壊れたらどないすんねん、可哀想やろ窓枠さんが。

 馬鹿な男子達に呆れながらも着替え終えた私達も急いで体育館に駆けていく。


 ラジオ体操をダラダラやるともう一回やらされる為、きちんとやる。 始めの授業の時は何回もやらされた。

 その後すぐのランニングも時間内に全員が元の位置に居ないとペナルティーでまた全員で走らされる。

「今日は自由に動いて。一人でも動いてない奴いたら次回マラソンな」

 先生の言葉に全員でブーイング。

 ブーブー!何だよ!全体責任にするな!自己責任にしろ!大体、何で今回も自習なんだよ!前回もじゃないか!授業放棄!

 皆してブーイングしてたら先生が言った。

「これ以上抗議がある人にはもれなく職員室に招待しまーす」

 瞬間、口を開いていた皆が黙る。私も例外ではなく、開きかけてた口を固く結ぶ。

 そんな私達を見て、先生がニヤニヤする。職権乱用。


 結局、先生は体育教師専用の職員室に行ってしまった。それと同時に皆が動き出す。 仕方なく私も動き出して何か道具持ってこようとすると、先に行ったモモが4人分のラケットと羽を持ってきた。

 バドミントンか、いいだろう。この右手に宿りし悪魔の力で叩き潰してや――

「ゆり行くよ」

 ちょっと梓!断じて中二病ではないけど、やりたいじゃん!こういうの一回やってみたいでしょ?!

「ゆりは私とー、ね?」

 モモが私とやりたいと言ってくれた。嬉しいし、可愛いし、何だこの生き物。


 体力があまりない私は休み休みでモモとやる。が限界が来た。

「朱音、パス」

 ヨロヨロになりながらも朱音とバトンタッチをして壁に凭れ掛かる。 横には少しだけ息が荒い梓。似た者同士の私達は何だか姉妹みたい。

 モモ達を見ると凄い生き生きとバドミントンをやっている。楽しそう。 朱音も見た目よりは体力あるし、時々“笑いの神”と讃えられている程に笑いが落ちてくる。 そんな朱音としてる方が楽しいだろう。

 暫く二人の様子を見ていると、視界の端で先生を捉える。

「梓!やろ!」

 先生の方を指しながら梓に言うと、凄い速さで位置に着く。

 暫くやっていると先生はまた消えていた。 疲れた体を壁に凭れさす。そんなのをあと2回程して授業は終わった。



 1日ってこんな長いっけ?

 最後の授業が体育だったからか、疲れたし、こんなに長く感じた日はないと思う。

 最小限の動きで着替えを終えた私は、鞄を枕にして頭を預ける。 丁度見える外の電柱に止まっていた雀を見ていると、先生の声が聞こえた。

 帰りのホームルームだ。鞄を顎置きにして前を向くと、先生がプリントか何かを持ってるのが見えた。

 先生の話によると、最近不審者がいるらしい。

「やぁ~ね~、不審者ですってよ奥さん、怖いご時世だわ~」

「そうね、奥さん、嫌なご時世になってしまったわ」

 思いつきでやり始めたキャラに、隣の梓もノリノリで会話する。 ダラダラしてる奥さんとか無表情の奥さんがこの世にいるのかは分からない。

 二人で馬鹿やってると前からプリントが配られてきた。

 『不審者撃退法』?そんなの相手の股間に一発だろ! あ、書かれてる。丁寧に絵まで描かれてるし。


「先生!こんなの作ったら、これからの人生、俺達事あるごとにムスコが狙われるっすよ!」

「いいじゃん。狙われろ。そして当たれ。山上の場合、凄い真面目になるかも?」

「今度、あたしに喧嘩売ってきたらこれで買ってやるよ」

 やってくれ、会沢さん。

「やったらな、仕返しに胸揉むぞ」

 うわっ、山上サイテーだな。

「うわっ山上サイテー!セクハラ!先生!山上の事、セクハラで訴えていいですか?!」

「山上サイテー!リサこっちおいで!危ない!」

 山上の一言に「山上マジキモい」や「まさか山上が会沢の事をそんな目で」とか色々言われ出した。

「山上サイテーだな、ね」

「そうだね、この状態もそうだけど、あんな事言った時点で女の敵」

 梓の言葉に私もうんうんと頷く。


 ホームルーム後、山上の発言はあっという間に学年内に知れ渡った。

「先に言ったの会沢じゃん!何で俺ばっかり批難されなきゃなんないんだよ!納得いかねー」

 不貞腐れながら帰っていった山上。

 まだ学園内よりはいいだろう。学園内に知れ渡ったらこれからの高校生活が大変になるだろうな。 なったらなったで面白そうだけど。


 



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