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9話「廊下は走るな~」



 今日からまた学校。週始めってなんか憂鬱になるのはしょうがない。昨日は朱音と遊んで楽しかったのに。


 学校へと自転車を漕いでいると、(かご)の中の鞄から音がした。 スマホを取り出して見てみると、モモからのおはようメールだった。

 自転車を停めて返信すると、マナーモードにしてから今度は制服の胸ポケットに仕舞う。

 自転車を漕ぎ始めて少しするとスマホが振動する。自転車を停めてスマホを確認すると、やっぱりメールだ。

 まだ来ないのかという内容だった。ここから学校までは後10分ぐらいかなと思い、そう返信して胸ポケットへ。

 自転車を漕ぎ始めて少しすると、またスマホが振動する。今度のメールは了解メールだろうと思い、自転車を漕ぎながらスマホを取って確認すると案の定そうだった。

 スマホを戻してから、少し早く漕ぎ出した。



 10分後、学校が始まる5分前に着いた。

 あぶねぇ~、急いで行かなくちゃ!昇降口でシューズに履き替えて急いでダッシュ。

 4階建ての校舎は一番上の階から順番に1年2年3年となっている為、結構走る事になる。ちなみに1階は職員室はもちろん、放送室や職員玄関、会議室、保健室、その他諸々。

 職員室の横にある階段をひたすら登って4階に到着。そこから急いで走る。

「おーい!茅野!何走ってんだ?」

「見れば分かるでしょ!遅刻しそうなの!また後で!」

 返事を言うのに停めた足をすぐに動かす。クラスメイトの殆どがこちらを見てた。恥ずかしいし、何か言ってるのが聞こえる。


      キーンコーンカーンコーン♪

 おっとぉ?!

 はいセーフ、まだ先生来てない。あっぶねぇ~。

 いきなり開いたドアにクラスメイトの殆どがこちらに目を向けたが、それを無視して席に着く。

「ゆり、おはよう、遅かったね」

「ハァ、ハァ、うん」

 隣の席の梓と話をしながら、机の中を整理していると、先生入ってきた。

 1組、2組の生徒や用のある先生達は会議室前の階段から上って教室に向かうから、もしそちら側の階段から行ってたら先生と鉢合わせする可能性大だっただろう。そんな事になったら確実に遅刻届け書かされる。


 1時間目は殆ど寝てた。

 だって化学だもん!この間寝ちゃったのは5時間目のせいじゃない、化学の授業だったからだ!

 化学の先生は太っている男の先生。普段は岩木先生と呼んでるが、裏ではイワッキーと呼んでいる。

 イワッキーの黒板に書く字は小さいし、汚いし、読みずらい。その為、この時間だけ眼鏡率が高まる。私も例外ではない。

 中学時代は裸眼で受けていたが、高校に入ってから眼鏡を作った。イワッキーのお陰でこんなにも目が悪くなっていたのかと分かった。

 家族の中でも私だけが裸眼だったのに高校に入ってから私も眼鏡族の仲間入りを果たしてしまった。


 イワッキーのお陰であまり目が悪くならなくて済んだ反面、イワッキーに困っている事がある。それは授業中の話し声だ。

 イワッキーの声を聞いていると、版書をしていた筈なのにいつの間にか寝ている事がある。初めての化学の授業の時も、知らず内に寝ていた。

 イワッキーは、特に寝てる生徒には知らんぷりだから、別に堂々と寝ていても怒られない。その為、化学の時間を別名昼寝の時間と呼ぶ。



 その後、5分の読書タイムでも寝てしまった私は、朝のホームルーム後、机に項垂れて1人反省会を開いていた。

 1時間目と合わせると40分程寝ただろうか。寝すぎて頭が痛い気がする。気のせいだと思えば痛くない。でも寝すぎたせいか、動く気がしない。


 動きだそうとすると、誰かが頭を叩いてきた。

「ゆり~?どしたの?項垂れてるね」

 中庭さんだった。机に項垂れている私を心配してくれたのか、見た顔は困り顔。

「いや~、何か疲れてね~」

 笑いながら言う私は、ホントは疲れてなかった。でも、あの中庭さんに心配されるという貴重な体験をした私はなんとなく嘘を吐いた。

「あはは、確か朝ギリギリに登校してたよね、走ってきたんでしょ?でもね、ゆり。そんなんで疲れてちゃ駄目だよ。部活動入ったのに、そんなんでどうする!ましてや、うちら女子高生だよ?なったばかりだよ?!朝走って登校したぐらいで疲れてちゃ舐められるよ?!ほら、もっとシャキッとしなきゃ!」

 痛い痛い。中庭さんどした、何故いきなり背中叩く。

 気合いなの?気合いを入れてるの?逆に気合いに押し潰されそうなんですけど。


 中庭さんの気合いを背中で感じながらも、話題を変える。

「な、中庭さん!部活、谷さんと同じにしたってホント?」

 私の質問に中庭さんは手を止める。

 中庭さんの気合い、しかと背中で跳ね返したよ。力強いね、中庭さん。

「うん、意外?」

「うん、谷さんもだけど、二人供体力ある方なんだし運動部に入らないの?」

 二人の体力は凄い。体育の授業でドッジボールをした時、必死に逃げ切って終わっても、次の試合でも全力で逃げ切る事が出来る。体育終わった後にも、何かしら遊びをしたがる。

 ホント、何でボランティア部にしたんだろう?

「う~ん、まぁ、別に、いいかなぁ、興味あまりないし、メンドイし?」

「あはは、そっか、中庭さんらしい」

 中庭さんと話しているとチャイムがなった。気合いの押し付けは痛かったが、久しぶりに中庭さんと話が出来た。




 お昼休みになってすぐに誰かが私を訪ねてきたらしい。

 クラスメイトの子に言われて廊下に出てみると、今朝少しだけ話した奴がいた。

「よ!久しぶりー!朝大丈夫だった?」

「まぁ大丈夫だった」

 そんなに久しぶりでもないと思うが…。

 まぁ、自己紹介してやろう。こいつは鈴木祐介。中学が一緒だった奴。あまり話した事はないけど3年間同じクラスだったし、ムードメーカーみたいな存在だったから覚えてる。確か、テニス部に所属してたけど、今はどうなのだろうか?

「俺、テニス部に入ったんだ!茅野、入ってないって聞いたから良かったらどう?」

「えっと、私、軽音部に入ったんだけど」

「あっ、そっか…」


 何この気まずい空気。それだけの用なら私もう戻りたい。腹減った。

「ゆりー?弁当食べないのー?」

「今いくー!」

 ほらー、モモ達用意出来ちゃって、食い始めてるし。私も腹減ったー。

「ごめん、私弁当食べたいから、じゃ」

 食欲を抑えられない事を理由に教室に入ろうと分かれを言う。

 瞬間、いきなり腕を掴まれた。

 はぁ?何?早く弁当食べたいんですけど!早く要件言ってよね。


「ごめん、これ、渡したくて」

 祐介の手には小さめのプラスチック製の袋。

 何なのか分からず固まってる私に、出した袋を押し付けられる。中を見ると、水玉柄の包装紙に包まれた何か。

 チラリと祐介に目線を向けると催促された。手にしてみると柔らかめで、辞書と同じくらいの大きさだが軽い。振ってみると小さい音でカシャカシャなる。

 何これ、新しいジャンルのイタズラ?


「開けていいよ」

 何もまだ言ってないんですけど…まぁいっか、早く弁当食いたい。

 綺麗にラッピングしているそれを丁寧に取ると、ハンドサイズのタオルとキャラクターストラップとシュシュ。タオルとストラップはキャラクターが描かれていて、某夢の国の有名なキャラクター。私の好きなキャラだった。

「え、何?何でこれ私に?今日誕生日でもなんでもないんだけど」

「卜部に聞いた!1月に誕生日迎えてるって。ちょっと遅めの誕プレってことで、校則でシュシュは着けてても大丈夫らしいから良かったら使って」

「あぁ、そうなの、ありがとう」

 戸惑いながらに言うと、祐介は嬉しそうに笑顔で言った。

「渡せて良かったよ、またな」

 廊下を走っていく裕介。

「コラー、廊下は走るな~」

 途中先生に起こられてたけど、無事教室に入っていった。


 ちょっと遅めって言ってたけど、バリバリ遅めだよ。

 微かに微笑みながら、私も教室に戻った。


 皆はもう殆ど食べ終えていた。残り25分でお昼休みが終わる。




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