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死神天使と呪われ少女  作者: 天音詩音
第一章 死神天使と呪われ少女
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第四話 暖かい思い出

「人間って、面倒臭いね」


「なによ、いきなり」


朝食の時間、リアンは開口一番に人間である二人を目の前にして、平然と失礼な事を口にした。


「僕たち天使は、身体中にマナが流れてるから、あんた達人間みたいにわざわざこういった食物から、マナを摂取する必要がないんだよ」


天使は下級上級関係なく、身体の中にマナが宿っているため、食事はおろか睡眠も必要ない。


人間は多少のマナは元から身体に流れているが、この様に食物などから定期的にマナを摂取しないと、いつかは尽きてしまう。


悪魔などは天の加護が一切ないため、人間よりも更にマナが必要になる。

そのため、生物を殺害し、そのマナを吸い取って生きているのだ。


「へぇ、そうなんだ、すごいね!天使って」


笑顔で褒め称えてくるルーチェに、リアンは半眼で溜息をつき、


「前にも言ったことあるし、だから食事は必要ないっていつも言ってるだろ」


うーん、とルーチェはちょっと困ったような表情になるが、すぐに笑顔に戻る。


「ごめんね、私って、何でかすごく忘れっぽいの…それに、食事はいらなくても、味がわからないわけじゃないでしょ?美味しくない?」


「いや、味は良いと思うけど…」


「よかった!まだまだあるから、おかわりは遠慮しないでしてね!」


たまに凄い失敗する時があるんだよね〜、とそのまま話を続けるルーチェ。


「でも、僕はただでさえ居候なんだしさ…」


「アンタ、遠慮なさそうに見えて、結構気にしてんのね」


ソフィアが意外そうに目を見開く。


「僕を何だと思ってるんだ」


僕だってそれくらい気にする、と少し不貞腐れるリアン。


「私がここに居てって言い出したんだし、気にしなくていいんだよ」


でも、とルーチェは続ける。


「そう言われても、やっぱり遠慮しちゃうよね」


しばらく悩んでいる様な素振りをしていたが、少しして何か思い付いたのか、表情が明るくなり、


「じゃあ、頼み事をしても良いかな?」


と、言ったのだった。









「で、何でこうなるの」


ルーチェがしたお願いとは、リアンと共に晩御飯の食材を買いに行くことだった。


「下界に来たのは、初めてでしょ?案内がてらに買い出しを手伝って貰おうかなって」


「あぁ、荷物持ち?」


「荷物は私でも持てるから、大丈夫だよ」


「なに?僕を貧弱扱いしてるの?」


荷物は僕が持つから、と言って聞かない様子のリアン。


「えーと、なら、半分お願いしよっかな」


「!?」


荷物を受け取ったリアンだったが、予想以上の重さに、目を見開いて驚愕する。


「大丈夫?やっぱり私が持とうか?」


「これくらい…平気だよ…!というか、見た目の割に意外と重いんだね」


この重さの荷物を二つ抱えていた少女は、一体何者なんだと思うリアン。


「そっちも持つ」


そう言うと、彼はルーチェの分の荷物も抱えてしまうが、


「!??!」


今自分が持っていた荷物の倍の重さに、思わず膝をついてしまう。


「わわ!、そ、それは私が持つから!」


「いいよ…僕の方が図体はでかいのに、あんたより軽いの持ってるとか、そっちの方が苦痛」


そう言って、意地だけで立ち上がり、スタスタと先へ進んでしまう。


「無理しないで、大変だったら言ってね」


「平気だってば。というか、あんた人間だよね?何でこんな、天使の僕でも苦労する重さの物を、平然と持ってられるのさ?」


何気ない質問だったのだが、ルーチェは一瞬言葉に詰まってしまう。


「?どうかした?」


「あ…ううん、何でもないの。私にも、何でこんなに力持ちなのか、わかんないんだよね生まれつきかな、あはは…」


そう言って、誤魔化す様に笑う。


その様子に違和感を感じたが、追求する事は躊躇われ、そのまま話題が変わってしまう。


「そういえば、リアンは天界に戻らなくても大丈夫なの?」


「戻った所で、他の天使に疎まれるだけだし。…迷惑だっていうなら出てくけど」


「そういう訳じゃないの!ただ、戻らないでいても大丈夫なのかなって思っただけだよ」


「別に、…まぁ、ミカは少しうるさいかもだけど」


再び、ミカという名前が出てくる。


「…そのミカって天使さんは、友達なの?」


「あー、いや、そいつ結構…いや、かなり名高い天使…大天使なんだけど、何故か僕みたいな下級天使に、構って来ててさ、友達っていうより遊び道具とかとしか思ってないだろうけど」


どこか皮肉気にそう言って、リアンは続ける。


「ただの一端の下級天使が、そんな大天使様に構われてるからか、僕は他の天使からの風当たりが凄い強いんだ」


何も知らない奴らからのね、とリアンは刺々しい態度で言い放った。


「そうなんだ、でも、本当にそのミカって大天使さんはリアンのこと、ただの遊び道具だと思ってるのかな?」


「そうに決まってるじゃないか、僕みたいな…」


「僕みたいな、って言い方、よくないよ」


ルーチェは、リアンの言葉を遮る。


「リアンには、良い所だって沢山あるんだから」


「ないよ、そんなの…」


「だって、今もこうして荷物持ってくれてるし」


リアンの顔が少し赤くなる。


「こ、これは、僕が女に重い荷物を持たせるろくでなしとか思われるのが嫌だから…」


「それに、なんだかんだ言って私に付き合ってくれるし」


にこにことルーチェは笑う。


「私もあんまり人に好かれなくて、友達って呼べるのはソフィアしかいなかったんだ。だから、リアンと会えて嬉しいよ」


「…あっそ…変わってるね」


照れ隠しなのか素っ気なく言うリアンだが、既に耳まで真っ赤になっている。


「だからね、そんな風に自分を卑下しちゃ駄目だよ、お節介かもしれないけど」


「…別に、もうお節介とか思ってない」


「!そっか!良かった」


調子が狂う…と、リアンは小さく呟いた。






***






天界。


そこには、純白の羽を持ち、金色に光る輪を頭上浮かばせる種族、天使が存在する。


「あれー?」


その中でも、神々しい程の光を持つ天使が声を上げた。


「あの子はどこに行ったの?いつもならその辺で他の子達に絡まれてるのに」


柔らかい口調でそう言う天使は、銀の長い髪と神秘的な金の瞳を持ち、恐ろしい程美しい中性的な顔立ちをしていた。


「あの下級天使でしたら、他の下級天使に下界へと落とされたようです」


「…下界に?」


「はい」


すると、美しい天使は、何かを考える様に顎に手をかける。


「うーん、なぁんか前にもこんな事あった気がするんだよねぇ」


「ならば、誰かが記憶を操作しているのでは?」


美しい天使の曖昧な言葉に、隣で聞いていた天使は、疑う事なくそんな事を言う。


「いや、気がするだけだし、そう判断するのはまだ早いよ」


「貴方様がそう感じたのであれば、それに間違いなど御座いません」


「天使は全知ではないよ」


美しい天使は先程までの気の抜けた表情から、冷めた表情へと変わる。


「あーあ、やっぱお前達はつまんないね、あの子とは違う」


美しい天使は心底つまらなそうに溜息をつく。


「申し訳御座いません」


「まぁそれはもうどうでもいいけど…、もし今の話が本当なら」







「大天使ミカエル様の記憶を『何度も』操作するなんて、生意気な奴もいるもんだねぇ」

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