第二話
まだまだ暑い日が続く頃、俺は商品を仕入れるべくアルタイルの森と呼ばれる場所へと向かう。
今日は冒険者用の手頃なサイズのブロードソードを買い付けに人里離れた、この森を訪れたのだ。
動物や魔物が共存する、このエリアは滅多に人が入ることはなく彼らが住むには絶好の環境であり、しかも良い鉄が採掘される場所でもありました。
そして崖から見下ろすと眼下には広大な森が広がっているのが見え別に目は悪くはないが眼鏡をかけると広大に広がる森を見渡す。
(さて今回は何処にゲートを作ったのかな)
眼鏡を通して眼下の森を見下げると緑色の光が見える場所がありました。
あれが今日のゲートらしい。
この眼鏡は隠してある入り口、多くの場合、魔方陣などの魔力を探ることができる道具なのです。
入り口に到着するとゲートをくぐり中へと進むと小さな祠のようなものが見えてくるのである。
彼らの結界は短い期間で変わるために、あまり強力なものではなく通ろうと思えば誰でも通れるのです。
国の宝物庫などは許可されたものしか通ることが出来ない結界も存在するのだ。
それでも、たまに予期せぬ来訪者が来るためにゲートの前には門番が二人ほど立っているが長年通っていると何も言わずとも通してくれる。
(よく見知ったもので長いことココにも通っているな)
小さな集落で人々は人間よりも小さいが良く鍛えられた体躯をしており村のあちこちの家からはモクモクと白い煙が上がり金属を叩く音が、あちらこちらから聞こえてきました。
そう、ここはドワーフの集落なのです。
「お前か」
「ドームさん、こんにちは」
むすっとした顔で俺を迎えるのは師匠の時代から世話になっている一人のドワーフ。
「ブロードソードってありますか?」
鼻先で示した方向には無造作に積まれた多くの武器があり中から欲しいものを選んでいくのだが別に金を要求されるでもなく自分が前から決めていた値段の金貨を置いていく。
「じゃ、これ代金と土産の麦酒置いていくから」
「あぁ」
これが俺と彼の取引だが基本的にドワーフは人間を嫌う。
鉄は神聖なものであり全ての穢れを嫌う彼らにとっては人間は愚かで間違いばかりなのであろう。
いつか聞いたことがある。
どうして鉄を打ち続けるのかと。
別に誰かに誉められるわけでも取引しない限り金にもならない。
彼が言うには、そこに鉄があるから打ち続け、それをせずにはいられないのだと。
彼らの生き甲斐は酒を呑むことと鉄を鍛えあげることなのである。
外に物を売りにいく役割のドワーフもいるが、ほとんどの者は鉄を打ち続ける。
錬金術で地中の砂鉄を集め固めた剣を作ることは出来るが、それはただの鉄の塊であるが彼らのように鍛え上げた武器には到底敵うものではない。
外に出ることが極端に少ない彼らの武器は、かなりの高値で取引され無骨なデザインではあるが性能は保証されている。
そんな彼らと取引したい商人は山ほどいるだろうと思うが、こうして直に買い付けることの出来る商人は数少ない上に、ここまでの秘境に、ただの商人は護衛なしでは辿り着けすらしないだろう。
彼らは酒の材料がなくなると森から出ていき知り合いのところで酒の材料と引き換えに武器やアクセサリーと交換する。
酒を呑むのと鉄を鍛えること以外のことは面倒くさがり外の世界に出る武器や装飾品の数は少ない。
村にくれば彼らが鍛え上げた武器の数々が、こんなにも無造作に置かれているのにも関わらずなのにである。
(まぁ、俺も滅多に人に売ることもないが)
ドームはドワーフの中でも武器職人では最高峰のレベルだと俺は思っている。
なんの飾り気もない何の変鉄もない武器だが使えば分かるし見た目も分かる人間にしか分からない。
俺は武器の目利きなんて出来ないが、それでも彼が打った剣を持ち使えば分かる程度には剣を使えるように師に育てられた。
仕入れた武器を背負うと再び帰り道への途を歩む。
師匠が、いつドワーフ達の村に顔を見せるかもしれないし彼らに話を聞くことも出来るからである。
(やはり今回もダメか)
10年前から誰も1度も見たことはないそうで最後に会ったのはドームだけであり、その彼も消えて以降、見たことはないそうである。
1ヶ月の間に及ぶ旅路で立ち寄った村や街などで、それらしき話を聞いて回るが10年の間、まったく手がかりすら見つけられていなかった。
(ふぅ、また何も収穫はなしか)
野宿にも飽きて途中にある少し大きな街で今日は泊まって明日は心配性な俺は無駄に多くなってしまった荷物を、ここの休日に行われる市に出そうと思っている。
(いつもいつも思うがアイテムを用意しすぎてしまうな、たまには役には立つんだが)
宿屋の窓辺でドワーフ達が作った度数の高い酒を果実を絞った果汁で割りながら呑んでいた。
安心して眠れる場所ってのも大事だと最近は感じてしまうと歳なのかなと思うこともある。
□ □ □
朝早く目覚めると用意を始める。
一応ドームはが作った剣も出すが売れないだろうなと売るつもりもないのに出してしまう。
本当に見た目だけは、ごく、一般的なブロードソードなのである。
金属は熱し鍛え上げると硬度などが増したり粘り強くなったり俺には知るよしもないがドワーフが振ったハンマーには魔力が込められていて星が降るように見えることから昔話では星降るハンマーと呼ばれている。
彼らの鉄を鍛え上げる腕もさることながら材質の鉄も不純物などが混じらす、そして特徴は微量のオリハルコンと呼ばれる金属が含まれており、その金属に力、この場合は魔力や錬気なのだがを使えば切れ味や強度が増すのである。
どんなドワーフがやってもではないのが特長ではあるのだが・・・。
微量とは言っても、この恩恵はかなり大きいと思う。
(今まで出してきたけど売ったのは、あいつらだけだったな)
売るつもりなんてなかったが、たまたま露店で商品として出した金貨500枚という普通なら小さな家が立つぐらいの値段であり見た目は何の変鉄もない平凡なものであったのにも関わらず。
含み笑うと俺は朝から笑っている自分がいることに驚くもので師匠が行方知れずになってから、あいつに会うまでは笑うなんてことも億劫になっていたのである。
レイナのことを言えた立場ではないなと改めて思っている。
荷物から1本取り出すと露店に並べるために剣とポーション、それに少しだけ珍しいアイテムをカバンに詰め込むと宿屋を出る。
(まずは露店の許可を取りにいかねば)
どこの街にでもあるものではないが、この山間の途中にある湖に隣接する街には、それがあり近くの村から集まってきた者達や商人が集まり、ちょっとした祭なのだ。
許可も地元の人間ならば優先的に入れてもらえるが余所者やランクが下の駆け出し商人では、いきなりの話は確実に露店を出すことは叶わないが俺は錬金術の才能はなくとも商才はあるのか人に恵まれたのか結構ランクが高いのである。
ギルドに着くと商工会ギルドの受け付けに向かう。
「すみません隅の方で良いので露店を開きたいのですが」
「ご予約はされているのでしょうか?紹介状はお持ちですか?」
「いえ」
「それでしたら今日は無理かもしれませんギルドカードはお持ちでしょうか?」
いつもなら、ぶっきらぼうな武力系な男に、かなりの確率でけなされるところなのだが、このレイクシティでは女性が受付をしているらしい。
「これで良いか?」
「シルバーランク!?っですかローグ様、お一人様の商人ですか?」
確かに1人で商人をしている人間でシルバーランクを持つものは少ないのだ怪しまれても仕方ないなと確認作業に入る受付の女性を待つことにする。
大勢の商人を抱える商団クラスはクランマスターと呼ばれる人間がカードを持ち、そのときばかりの免状を発行され店を開いたりするもので大規模な商団は最高ランクである虹色のカードを大体持っている。
個人で色つきを持てる商人が少ないのだ。
「お待たせいたしました本物ですね失礼いたしました」
「良いよ慣れてるから」
いつも、このようなやりとりばかりで慣れてしまっているがカードのランクは不正に入手することは難しいし俺が、こんなランクになったのも戦闘専属のクランであるクランマスターの女の力でもあった。
虹、金、銀、銅、赤、緑、白とランクずけされるのだが一番下は白であり登録料を払えば誰にでもなれるし、ある程度の権利もえられるから別段、不便ではないのだが急に、こんなところの祭で露店を開くなんてことは出来ないのだ。
「それでは銀以上のランクの方のための特別枠に入れさせていただきますが、よろしいでしょうか?」
「一番端で良いよ白の人達がやってるとこで、あんまり売れないだろうし」
「はいっ?」
「露店の登録料が安いとこでいいよ」
府におちないのか困った顔をするが真面目に言っているのだなと確認すると書類にサインをする。
「白ランクの方が1名不参加となっていますので、そこで、よろしいでしょうか?」
「あぁ」
「では、どうぞ良き商運を」
「ありがとう」
ギルドから外に出ると紙に書いてある場所へ向かう。
(B区画の29か自分から言っておいて何だが随分外だな)
人混みが、まばらになってくる方へ歩いていくと店も、まばらで何でも売っているような場所へと出ていくとポツンと小さく空いたところを見つけて敷物を広げ椅子をだし商品を並べていく。
こんなところで足を止める客も滅多に居らず、たまに横目で、こちらを見ては通りすぎていく。
(まっ想像はしていたけど、この値段じゃな)
自分でも売る気があるのかというラインナップである。
ひとつめ
<普通ではないポーション銀貨20枚>
これは中身が普通のポーションとは一味違う。
買えば分かる代物だが1本、銀貨2枚から3枚なのだから売れないが分かる人間には分かるように、そのために中身を見える瓶にしているのに。
<普通ではないブロードソード金貨500枚>
うん、我ながら売れないのが分かるぞ。
その他にも、ちょいちょい出してあるが値段は高い。
それでも正規品の半額ほどだが、この辺を歩いている駆け出しの冒険者や掘り出し物を探す駆け出しの商人には多分わからないレベルなのは間違いない。
(いつものことだな)
こんな売る気もないやりかたなのに銀の称号をもらえてしまっているのは、たまに価値が分かる者が中には居るからであり、そんな者が居れば全て買っていってしまう。
「なぁ、おっさん、この剣いくらや?」
「ん?」
まだまだ少女の面影が見える女が俺に話しかけてきてドームが作った剣を指差す。
「金貨500枚」
「は?どー見ても普通のブロードソードやろ?アホちゃうんか」
「そう思うなら買わなくて良い」
そう俺が冷たくあしらうと何か言いたそうな顔をしているのが窺える。
(ふむ、この剣が普通じゃないのが分かってるのか?)
強気の態度で出てしまった以上、引き下がれないのか口をモゴモゴとしている。
「気になるなら抜いても構わないぞ」
「ほんまか!」
よっぽど触ってみたかったのか飛び付くように剣を持ち眺めると、こちらを真剣な目で見る。
「わけがあって良い武器探してるんや、これ譲ってくれんか?」
「金貨500枚だ」
「アホか!いくら良い物だろうが普通のブロードソードやで!」
「普通ので良いなら、その辺で買えば良いだろ」
「むぐぐ・・」
なにか小競り合いをしていると周りに人が集まってくるとイチャモンをつけるように、わざと大声を出して喚きちらしてくるが、こちとら商人稼業まっしぐらな錬金術師だ負けるわけがない。
「こんな普通のブロードソード金貨500枚やて、そんなえげつない商売してるんやで、このオッサン」
「そうだぞ!その子の言う通りだ」
みな頷きながら彼女の味方をしだし、こちらにつめよってくる。
「ほな、このこと商人ギルドに黙っててやるさかい、これ金貨2枚でもろてくで!」
そして金貨2枚を放り投げて持っていこうとする彼女の手をとると剣を取り返し金貨を返す。
「別にギルドに言いたければ良いぞ、それよりも俺の商売を邪魔するな」
「あとで、吠えずらかいても知らんで!」
女の子は、それだけ言うと立ち去り周りのギャラリーも、つまらなそうに、はけていってしまった。
(やれやれ、今日は商売には向かない日だな)
「相変わらずだな!貴様は」
いきなり声をかけられ顔を上げると見知った顔が見える。
「何で、お前がココにいるんだリアーナ?」
「仕事に決まっているだろうがバカか貴様は」
俺が座っていると見下げてくるリアーナという女が目の前で仁王立ちをしている。
彼女はドームの剣を持つ1人でローグをシルバーの称号にした張本人であった。
リアーナは身長は150㎝ぐらいだろうか小さい体に長い金髪をおろし白銀の鎧にブロードソードを携えて仁王立ちしているのだが後ろには彼女のクランメンバーで槍の使い手の女性オリビア、こちらは俺よりも背が高く赤毛で短い髪型をしており、こちらを申し訳なさそうに見ている。
そして、もう一人のクランメンバーで最年少であろう少女イクシオーネが無表情で立っていた。
「おいパンツ見えるぞ、そんなとこに立つと」
「私が美しすぎるからな、そんな目で私を見るのだろう?見たいなら見れば良いぞ」
「ん?いや別に」
「おい!この清らかな乙女が居るのにっ!?まぁ良いその剣をもらおうか?さっきの女は要らんようだしな、それよりも私が2本目を買う約束をしてたのに何故、連絡をよこさんのだ」
そういや、この剣を俺から買ってから年に一度か二度、顔を見合わせるたびに、そんなことを言っていたなと思い出す。
「すまん・・忘れてた」
「ふざけているのか貴様」
今にも殴りかかってきそうなリアーナを落ち着かせているオリビアをよそにイクシオーネはアクビをし始めると、さっきの少女が戻ってきたようだ。
「ここや!ここ!商人の風上にもおけんやつが居るんや!」
「アンタか滅茶苦茶な値段設定してる商人ってのは」
ギルドの職員らしき男が、いきなり怒鳴る。
「値段に見合った設定だと思いますが?」
剣を差し出すと目を通して鞘に戻すと俺の方を睨み付ける。
「どう見ても普通のブロードソードだが、この値段設定はなんだ」
おいおい商人ギルドに勤務しながら目利きも出来ないのかと騒ぐ男を冷めた目線で見ている。
(まぁ、俺も剣の目利きなんて出来ないけどな)
笑えてしまってニヤけていると益々と怒りだし、何処かに連れていくなどと怒鳴り始めた。
「ぷっすまない本当に商人ギルドの人間なのか?」
「何をっ君、これを見たまえ」
さしだすカードには確かに商人ギルドの職員を証明する紋章が描かれており正規の職員らしいが。
「こっちにこい!」
俺の手をつかむと連れていこうとする職員の腕をリアーナが掴み睨んでいる。
「貴様は本当のバカだなギルド職員のくせに目利きも録に出来んのか?」
「僕はサイノスで、きちんと教育を受けた高ランクだぞ目利きなんぞ容易いわ!それよりも、お前は誰だ」
「私はデビルローズのリアーナだが」
「は・・ひっ?」
職員の動きが凍りついたようにフリーズをする。
「戦闘ギルド所属でクラン四位の?」
「何か文句でもあるのか?その剣は私が金貨500枚で買うのだが邪魔をしないでもらえるか」
「な・・なななぜ、あなたのような人が、こんな剣を金貨500枚で・・」
「私には最高の剣に見えるがな?」
「そっその女も、この男とグルなのよ!」
少女が叫ぶと、やれやれといった様子でリアーナは、ゆっくりと、その剣を持つ。
「私が買うから使っても構わんな?」
「お前は客だ買うなら好きにしろ」
ゆっくりとした動作で剣を鞘から抜くと眺めだす。
「ほうっ素晴らしい出来映えだな、一体こんなもの何処で手に入れるんだ?」
「企業秘密」
「まったく貴様というやつは、いつも、それだな」
抜いたまま辺りをキョロキョロとすると何か見つけたようでニヤリと笑う。
「なぁギルド職員殿、大層りっぱな剣を持っているな」
剣を誉められ嬉しそうにしているようだ。
「この剣はね現在、生きている鍛冶屋の中で最高峰の人の作品だよ強く折れないうえに切れ味も申し分ないんだ」
「ほお、折れないのか?」
「そこらの、なまくらじゃ傷ひとつ付かないよ!あっ・・」
「ほーう、なまくらじゃ傷ひとつ付かないか安心したよ」
「まっまて、そっそんなこと」
「折れないんだろう?貴方様が普通の剣と呼んだ剣なぞ傷ひとつつかないのだろう?それとも、それは安物か?」
「ふんっ、どうせ傷ひとつつきやしないさっ」
焦りは見えるが腹をくくったのか剣を突きだす。
(どれぐらいの値段がするんだ?)
薬は扱うが武器なんかは専門外な俺でも気になるが、やつの持っている剣はバスターソード並に分厚いが刀身は1メートルほど使い勝手も良さそうだしリアーナの細腕で、どうにかなるものでもなさそうなのだが。
「心配することはない、お前は知らんだろうがな」
リアーナのクランメンバーであるオリビアが俺の横に立つとアクビをしながら話しかけてきたのだ。
「魔法やなんかで強化は出来るが、どう見ても斬れるもんじゃなさそうだけどな」
「見てれば分かるよ」
オリビアが耳許で小さな声で耳打ちをしてきた。
「さて行くか」
リアーナは両手で剣を持つと地面に置いた剣に向かって・・向かって・・。
(手元が見えないぞ)
気づいたときには振り終えて、ただ土の地面に半分ほどブロードソードが埋まっているところである。
「ふんっ僕の剣にびびって外したな!?音なんて・・なっ!?」
そこには見事に半分になった彼の剣が真っ二つに分かれていた。
「良かったな、こんなナマクラに切断されるなんて偽物だと分かった」
「・・・・」
その剣を見て泣きながら膝を地面につけて二つに分かれた剣を呆然と見ている。
「おい、オリビア、本当に偽物か?」
「いや、中々の剣だぞ人間のものにしてはだが」
値段が高いのは装飾に使われている宝石や見事な彫刻のせいだろうが人間の刀鍛冶の中では名刀の類らしい。
(それを聞いてしまったら何だか気の毒になるが目利きも出来ないのが悪いのだな)
剣の目利きが出来れば自分の剣を2つにされることもなかったわけで授業料だと思ってもらおうと遠くを見ている男を放っておいて店じまいを始めたのである。
「あー金は後でも良いけど、どうする?」
「持ち合わせがないからなギルドまで来い」
「はいはい、まいどあり」
そして俺達はギルドに向かおうとすると先ほど因縁をつけてきた少女がリアーナの前に立ちはだかると、いきなり土下座をするのだったが、その体は少し震えているように見える。
「すみませんでしたっ!でもっでも強い武器が必要なんです、どうか譲ってくれませんか」
「何をたわけたことを言っておるのだ誰のせいで、こうなったのだ?」
(なんか訳ありっぽいが関わるのは止すか)
スルーして素通りしようとすると足を掴まれた。
「すみません、すみません、どうか話だけでも」
「え?剣の所有者は、今あっちだから頼むならリアーナにしてくれよ」
「なっ!?なんということを貴様」
二人でなすりつけているとイクシオーネが俺とリアーナの前に出てくる。
「話だけ聞いてやればいい」
それは、とても小さい声で俺には何を言ったか聞こえなかった。
「はぁ・・もう、しょうがないわね話だけよ」
「ありがとうございます」
どうやら話はついたようなので立ち去ろうとするとイクシオーネとリアーナに掴まれ引きずられて行く。
(マジかよ・・動けないぞ)
思いきり暴れれば、きっと抜け出すことは難なく出来るだろうが止めて大人しく引きずられて行くのでした。