お仕事っぽい
no-side
少年は森を翔ける。一般人には到底出せない速度で影から影へと駆け抜ける。
少年はこの仕事に不満を持っていた。
ボスのことにも不満を持っていた。
自分より弱いボスが自分より上に立っていることが不満でならなかった。
さらに言うならこの仕事も不満だった。
少年はこの国の生まれではない。さらに言えばボスや仲間たちもこの国の生まれではない。
少年は別の、遠い国の貧民街で生まれた。
持ち前の顔の良さと人当たりの良さ、そして戦闘力の高さで貧民街の子供達をまとめ上げていた。
ボスに出会ったのはそんな中のある日のことだった。
数で負かされ、幼い子供達を盾に服従を強要された。
少年は嫌々ながらボスに従っていたが、それもついに我慢の限界を迎えそうになっていた。
(あんな、あんな子供たちを狙うなんて!!)
少年はボスに従っていた時も幼い子供に決して手を挙げなかった。
しかし今回の仕事の本質は、幼い子供、しかも二人を攫い、殺すことだ。
例え憎き貴族だとしても子供を殺すことは未来を殺すことだ。
ボスは邪魔されることを恐れたのか少年を仕事の大事な所から離したが、少年は自分がその仕事に一分でも関わっているのが我慢ならない。
「…絶対に邪魔してやる。」
少年に守るべきものは既にいない。
守るべき幼い子供たちは悪辣な環境で監禁されたせいで死んだと、脱出を果たした仲間から伝えられた。
少年に守るべきものは既にいない。
守れなかった罪悪感とボスへの憎しみを糧に、少年は瞳を燃やしながら駆ける速度を上げた。
少年の背を精霊たちが悲しそうに見送っていた。