不穏な影が近付いてるっぽい
no-side
コルヴォ・チェル二・ラインツバートは困惑していた。
目の前には土砂で埋まった山道。幸いにして怪我をしたものは居ないが土砂を撤去するまでこの道を通れないのだ。
「コルヴォ様、周辺に人影はありません。」
「そうか…引き続き警戒をしてくれ。」
「はっ」
馬車で屋敷に向かう途中、突然轟音が鳴り響き、目の前が土砂で埋まった。
昨日は雨が夜通し降っていたらしいがそれも弱く、影響があるとは思えないものだった。
「なにか作為的なものを感じるな。」
もうじき日が暮れる。コルヴォの脳裏に愛すべき妹の姿が浮かび、言い知れない不安に駆られる。
しかしコルヴォにはその不安を解決するだけの手立ては無く、悔しげに目の前の土砂を睨むばかり。
「どーすんのボス、結構カンのいいやついんじゃん。」
虚空に響く声は若く、少年のようだった。
「あれが、ラインツバート家次期当主コルヴォ・チェル二・ラインツバートだ。ここでの任務は足止め、放置して構わないだろう。」
崖の上には人影が1つあった。いつからいたのかわからない、奇妙な人影だ。
確かにそこにいる。存在感はあるのだが警戒を出来ないのだ。
例えば森の木、彼等がそばに生えていて風にざわめくことを警戒する人間がいるだろうか。
そんな大自然と同じ、奇妙な気配の消し方をしている人影はやがてボスとの通信が終わったのか立ち上がりその場から消えた。
崖の上には気持ちの悪い、不気味な静けさのみが残った。