一か八かっぽい
リンクスside
「…リンクスさまリュコス様。ユキヒョ、セツリッカの隙を突いてあの子を私の元へ連れてきてもらうことはできますか?」
気でも触れたかと思った。
目の前の嬢ちゃん、カナリヤを見つめると一点の曇りもない真剣な目で俺を見つめている。
「俺に死ねと言ってんのか?」
子供を喪ったばかりの正気のなくした精霊はかなり手強い。
そしてセツリッカは貴重種だけあってティティより格が段違いに高い。
そんな生き物に突っ込んだ、さらに大切な子供の死体を奪っただなんて言ったら確実に氷漬けになって笑えない氷像になるだろう。
「ちがいます、あの子…生きてます。かろうじてですが。あの子を助けられたらきっと、セツリッカも…」
「…わかった。おい、あー?リュコス?手伝え。どんなことでもいい一瞬、あのセツリッカの視界を奪え」
「…了解」
胡乱な目で見つめた俺に必死に食い下がったカナリヤ。
その言葉にはっと顔を上げてセツリッカの足元を見る。
赤いボロ雑巾のようになった塊が微かに、本当に微かに動いた。
「…わかった。」
助けるつもりなのだろう。きっと才能的技能に回復系があるのかもしれない。
正直このままジリ貧になり死ぬ、しか描けなかったに未来一筋だけ光が指した。
(ティティ、リュコス、目隠しだ。)
(…何をする気だい。)
(カナリヤが足元の子供連れてこいって、回復系があるのかもしれない。)
(流石愛し子だね…)
念話でいくつか打ち合わせをし、俺は魔力の質をティティと同化した。
血に宿る精霊ってのは一種の共生関係になる。精霊は安定した魔力を食べれるし、人間は身体の魔力を安定させられる。
そしてさらに、精霊は人間の繊細な魔力の使い方を学べるし、人間は魔力の質の同化と共に精霊の性質を借りることができる。
ティティの性質。
今回は狩りの性質を借りる。
ティティのようなサバラピュリアの狩りは奇襲が多い。
猫らしく物陰や相手の後ろから気配を絶ち、一気に飛び掛かる。
それに倣い息を殺した。
ティティの力が流れ込み手足に暖かな魔力が満ちていき、安心感と高揚感が俺を包んだ。
『凍てついた土地の同胞よ、聞く耳を持たぬのであれば私とて容赦しないよ』
『乾いた土地の同胞よ、力の差も分からぬほど愚かな者よ。その申し出、受けて立とうではないか。』
二匹が向かい合い、ティティが飛び上がった。
ティティと同時に俺も走り、ユキヒョウの視線が上に上がったのを利用し、スライディングの要領で足元の子供を抱きかかえてから前に跳ぶ。
『貴様っ!!』
子供を取られたことに気付いたセツリッカがターゲットを俺に変えてその力強い前足を振り落としてきた。
「リュコス!!」
「オルカっ水縛!!」
『承知したっ』
リュコスの方から涼やかな魔力の波がセツリッカを襲う。
両前足を水で縛められたセツリッカはその場でバランスを崩して倒れ込んだ。
その隙に俺たちはカナリヤの元へ戻る。
「ほら、コイツ助かるのか?」
「…助けます。じゃないとセツリッカに殺される」
背後では子供を取られたセツリッカが声にならない叫びで慟哭していた。




