ぴんちっぽい
カナリヤside
Q、今何が起きてるでしょう?
ヒントー、漂う妖しい香り、光り輝く魔法陣、謎の呪文に魔法陣に連れていかれる私達。
「離せ、離しなさい!!」
「くそっ離せ!!」
「おお、極上の贄になるだろうて、こぉんなイキのいい童が二人とな」
A、ピンチです。しかもかなり詰んだ状況の。
そこ、展開早いとか言わない。
なんでこんな状況になったかと言うと…事態は少しだけ溯る。
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疲れてしまったのか、しばらくしてでん…リュコス様は目をつぶって動かなくなってしまった。
…一応死んではいないと思う。私はオルカさんにリュコス様の体内のことは任せ、子供達がリュコス様の状態を見守りつつ、オルカさんと魔法談義をすることにした。
「魔法って、どうやって使うのですか?」
『今のままでは出来ないだろうがまず、魔力を感知し、流れを掴み、大気の精霊たちの魔力と混ぜつつ具現化する。詠唱は精霊たちに伝わりやすい言葉になっていると言われている。』
「なるほど…詠唱をしないことは?」
『出来る、多分そなたも出来るだろう。精霊たちに愛されれば誰だって詠唱破棄は出来る。ただ訓練が必要なだけだ。』
オルカさんって博識だなぁ…なんて思いながら私は魔法のサイクルを考える。
なぜだか無性に心が弾んでいる。…殿下が辛い思いしてるのに、というかこの状況なのに不謹慎、いえ不敬かしら?
魔力を感知、まず当たり前のことだ。
自身のことを知らずに何ができるだろう。
魔力の流れを掴む、多分血のようなものなのかな、血に宿る精霊って居るから魔力=血液でも合ってるかも。
そんな仮説を立てながら私はずっと気になっていたことを口にした。
「血に宿る精霊ってどのようなものなのですか?」
『血に宿る精霊とは、血液中の魔力量が常人より多い場合、魔力は暴走しやすくなり、それを防ぐために精霊を召喚、身体に溶け込ませ精霊に魔力の流れを管理させると言うものだ。いわゆる一心同体や一蓮托生と言うものだな。』
血に宿る精霊…すごい。
それを宿らせる魔力を持つリュコス様がすごいの?
それに今更ながら、そんな設定あったっけ?
思い返そうとすると頭の奥が鈍く痛む。
むむ、と唸りながら考え込んでいるとオルカさんから思わぬ爆弾を落とされた。
『ちなみにカナリヤ嬢、おぬしも付けると思うぞ、しかも複数』
「え、どういうーーー」
ことですか、そう続けようとした瞬間、扉が乱暴に開く。
「ひゃはっ死んでないかいおちびさんたち 」
聞こえてきた笑い声は私のお姉様の脚を折った奴の声だった。
「お前…」
妙に唇の赤い男だった。
サーカスの道化のような格好をした、白い髪と肌を持つ、死神のような雰囲気の男。
どこか夢の中で生きているようなその焦点の定まらない赤い瞳が話の通じる相手ではないと如実に語っていた。
「すぐに私たちを開放しなさいっ、お姉様に乱暴した罪、必ず償わせてやるっ!! 」
しかし思い出したのはお姉様の悲鳴とあの乾いた折れた音。
一気に頭に血が登り、私は入ってきた男を睨み、叫んだ。
「ひゃはっ、おじょーさまは怖い怖い。怒った子猫みたい…でもさぁ」
急に声が低くなったと感じた瞬間、私の身体は宙に飛び、壁に激突した。
「がっ…ぐ、ふ……」
「カナリヤ嬢!!」
「調子乗ってんじゃぁだめでしょー?カルフィおにいさんは優しいけど、生意気な子猫はだぁいきらいなんだぁ」
令嬢として若干あるまじきうめき声をあげながら私は床を転がる。
と言うかそいつに追撃されてる。
『カナリヤ嬢!! 』
「女性を足蹴にするな!」
【お姉ちゃん!!】
【そいつ僕たちに痛いことしたやつ!】
【にげて!】
おチビちゃん達が私を守ろうと前に立ってくれるけど、悲しいかな霊体はやはり物理的に触れないらしい。
(だめ…心を揺らがさないで…私が皆を守るから。)
おチビちゃん達に語りかけながらオルカさんを見る。
なんとなく体を動かすのは無理だ的な意識を読み取り、最低限の内臓は守れるように身体を縮めた。
リュコス様は私の名前を呼びなが悔しそうな顔をしている。
一撃一撃が重く、骨の軋む感覚がする。
かろうじて保っていた意識も飛びそうになり、ここで意識を飛ばしたらあとはどうなるのか、想像するのも嫌なので文字通り歯を食い縛る。
口の中は血とホコリが混じり吐き気がし、蹴られる衝撃で頭が揺れさらに気持ち悪い。
「なあ、それ生贄なんだから死なせたらダメなんじゃねぇの?」
爽やかなティノールと共に痛みは止んだ。
もうダメだと、痛みに朦朧とした意識を晴らしてくれたのは今日出会ったばかりの優しい山猫の声だった。
【お兄ちゃん!!】
【兄ちゃん!! 】




