予感はあたりっぽい
屋敷の周りは酷い有様だった。
人々は苦しみ悶え、生きていることが不思議なほどだった。
追い付いてきた侍従達は口々に自らの愛する者、家族の名を叫び屋敷や、周りの領民の元に駆け寄っていった。
「リュコスっカナリヤ嬢!!」
「カナリヤーっシスネ、母上ーっっ」
貴族や王としては最も悪手とされる醜態を晒しながら二人は駆ける。
疾く疾く、一瞬でも速く家族の元へ行くために。
「みんな無事か!!」
「コルヴォ!!」
「こーちゃん!」
「お兄様!!」
母の恥ずかしい呼び名に思わず崩れ落ちそうになるも大方無事なようでよかったと安堵のため息をつきかけるがこの場にいるもう一人の父親が悲痛な声をあげた。
「リュコスとカナリヤ嬢はっ」
「…拐われた。」
歴戦の友は悔しそうに壁を殴りながら吐き捨てる。
王はそんな友を責める事が出来なかった。
彼の後ろに控えているカナリヤの姉、シスネは不自然に片足を浮かせ顔に脂汗をかいていた。
きっと、骨を折られるかそれに近い行為をされたのだろう。
「…まずは領民の安否確認及び領民の手当、まずはそれからだその後動ける者で二人の捜索に当たる。」
「御意に」
血を吐くような思いで紡いだ言葉は、せめてもの王としての矜持だった。




