まばたきをすると世界が変わっていたっぽい
「なに…これ」
「どうしたんだ?」
殿下の言葉に私は答えられない。答える余裕が無い。
それほどまでに目の前の光景がショッキングだった。
部屋には黒を主体とした色とりどりのキラキラした粒が大量に漂っている。
そしてベットの周りには薄い灰色で半透明の小さな人型のなにかが20人?人でいいのか?が取り巻いている。
中には獣の耳や尻尾が見えるものもいた。
むしろ悲鳴をあげなかったことが奇跡だ。
【あれぇ?お姉ちゃん見えてる?】
【僕らのこと見えてる?】
【リンクス兄ちゃん見えてなかった】
【でもお姉ちゃん僕らのこと見てるよ?】
口々にわちゃわちゃと騒ぎ出す声は幼く、時々リンクスと言う名が聞こえてくる。
「オルカ、カナリヤ嬢は一体何を見ているんだ?」
『大方才能的技能に精霊の眼やそれに類する物が入っていたんだろう。人外が見えるようになる。』
そんな二人の会話を横に私はその半透明の塊にコンタクトを取ろうとした。
(聞こえる?おチビちゃん達)
【およ?聞こえるよー】
【おチビちゃん達じゃないから聞こえなーい】
【えーお姉ちゃんの声聞こえたじゃん!!】
子供というのはなぜこうも騒がしいのだろう。
そんなことを思いながらも私は笑顔を意識しつつ語りかける。
(もしかしてリンクスさんの兄弟?)
【そうだよー!】
【リンクスお兄ちゃんの弟!】
【リンクスお兄ちゃんつよいんだよ!】
(わかったわかった、その弟くんたちがどうしてここにいるの?)
【お兄ちゃんの魔力についてきたの】
そこから始まった話は、リンクスさんから聞いた話より数倍、タチが悪かった。
子供達は劣悪な環境に監禁され、さらに早く死ぬようにと食事もほとんど与えられず暴力や暴言は当たり前だったというのだ。
「ひどい…」
【だからね、しかえしをするの】
【僕たちひとつになってリンクスお兄ちゃんの敵を殺すの】
【殺すのー!】
【同じことをしかえしをするの】
無邪気で、それでいて邪気に満ちいている子供達の言葉。
それと同時に黒い粒が子供達の身体に入っていく。
それにつられどんどん黒に近づいていく子供達にオルカさんが慌てた様に警告を飛ばした。
『いかん、カナリヤ嬢よその子供達を止めよ。闇に落ちたら戻れなくなるぞ!!』
「わかりました!」
(落ち着いてっ仕返しをしちゃダメ。君たちを殺した人とお揃いになるのよ!?)
闇に落ちるの意味がわからなかったけど不穏な言葉なのはわかった。
思いのままに叫ぶと子供達は不安そうに揺れた。
【そしたら、僕たちはどうしたらいいの?】
【痛いんだよ、苦しいんだよ?】
(いい子たち。私について来なさい。ここで私が無事に脱出出来たら教会に行ってあげる。そこでターナトゥス様に祈ってあげる。私はターナトゥス様の加護を持ってるからきっと次の人生は幸せに過ごせるはずだから、ね?)
私の言葉に迷ったように子供達が揺れた。
もちろん言葉に確証なんてない。この場限りのものだが本当に真剣に祈りにいく。
もし、加護を付けた=お気に入りという予想が外れたとしても幸せな人生を送るようにお願いする。
そんな気持ちを込めて子供達を見つめた。
「お前たち、中途半端に精霊化しているな。復讐したらあのリンクスってやつが苦しむだけだ、あいつはお前らが無事にあの世に行けることを願ってただろ?」
突然、殿下がしみじみと諭すように伝えると子供達は少しだけ苦しそうに頷いた。
え、と言うか殿下さっきまで見えてなかったのに。
思わず殿下を見ると目の辺りにうっすらと蒼の魔力が覆うように展開されている。
『我が同調して見せてみた。お前も将来の旦那に頭のおかしな奴だと思われるのは嫌だろう?』
少し自慢げなオルカさんは可愛いけどひとつだけ聞き逃せないセリフがあった。
「あの話破談になったんじゃないんですか?」
「破談になどしないっ」
私の言葉を若干食い気味に遮り、強い光を瞳に宿らせながら私を見つめる殿下。
…死亡フラグは折れてなかったのか。
そしてなんでだろう…前にお父様の猟犬のジーンが私に自分で狩ってきた獲物を差し出してきた時と同じ目な気がする。
お父様に楯突くジーン、あの時が最初で最後だったなぁ。
「…その、悪かった。父上やそなたの母上に諭されようやく気付いた。根も葉もない噂に踊らされそなたを傷付けた、己の罪を。」
しょんぼり、この一言に尽きるほど殿下は項垂れている。
お互い芋虫状態で上手く目も合わない状態だけど充分殿下が反省しているのはわかった。
フラグを折るためには嫌われないと行けないのに少しだけ、許してあげてもいいかと思ってしまった。
「殿下、わたし達はまだ子供です。間違えることもあります。なので私は殿下の謝罪を受け入れます。」
「そ、そうか!」
「ただし、これからに期待しますね。」
「そうか…」
「そして倒れた時に一応伝えたんですがここの人間は殿下を王太子殿下とわかっていないのでお名前で呼ばせていただきます。よろしいですね?リュコスさま」
「そうか!」
目に見えて殿下の機嫌の上下が激しい。
狼というより犬みたい。
と言うかそうかしか言ってないの気付いていないのかしら。
【お姉ちゃんたちラブラブー?】
…お黙りなさいおチビ達。
殿下に犬属性が…もっとクールなキャラにする予定だったのに…




