見識の聖女様のご到着っぽい
感想での殿下の嫌われようが…www
カナリヤside
「見識の聖女様のご到着でございます。」
「見識の聖女様…?」
セバスの告げた聞き慣れない言葉に首を傾げると、すかさずお姉様が耳打ちをしてくれた。
「見識の聖女様、貴族の才能的技能披露の儀で教会から有料で出張って…出て来てくれる方。才能的技能に『見えぬ秘密出て来ぬ秘密を暴く権利』って言うのを持っていて普段はそれを紙に染み込ませたのでやってるの。今日はラインツバード家の娘だからってわざわざ出張っ…やって来てくださったのよ」
お姉様何か言葉に毒がありませんか?
だけど不思議、お兄様も陛下も到着してないのにどうやって来たんだろう。
なにか、嫌な予感がした。
「さ、聖女様こちらへ。」
セバスのエスコートで現れた聖女様はなんというか…気持ち悪かった。
フードを被り大きな本を抱え、目には包帯を巻いている。そして、動きがどこか人形めいている。
「…聖女様、なの?」
「ええ、あれが聖女様よ。教会のお造りなさった聖女様の1人。」
お姉様と失礼にならない程度に囁きを交わしているとふと、窓から視線を感じた。
「…?」
視線を向けても何もいない。
なぜだろう、急にこの場にいることが怖くなってきた。
「カナリヤ・エル・ラインツバード、前へ。」
指定の位置についた聖女様が私を呼ぶ。
不気味なほど感情のない中性的な、からっぽな声だった。
「手を」
開かれた、分厚い本の上に手を置かされる。
冷たくも暖かくもない無機質な温度の手た。
「我は乞う、この者の隠された秘密をこの本に移すことを。我は乞う、この者の隠された秘密が我が主の元で暴かれることを」
手を上から押さえ付けながら聖女様の詠唱は続く。
ぞわり
突然本と聖女様の手から私の手に何万もの虫が這ってきたような気持ちの悪い感覚が走る。
「ひっ、離してぇ!いや、気持ち悪い!離して!! 」
「カナリヤ!!」
突然身体中の血管に異物が入ったような、心臓を直接撫でくり回されたような不快感が私を襲い、体の端から侵略され、染められていくようなその感覚に半狂乱になって暴れた。
これはなに?聖女様なんかじゃない。
神様に仕えてる人間なんかじゃない!
「離せ!離して…!! 」
「我は乞う、主の気まぐれにてこの者の秘密が顕になることを我は乞うこの者が主の元に隷属することを…」
「いやぁぁぁぁ!!」
みんなの声も何も聞こえない、耳に、頭の中にひたすら詠唱が響く。
どんなに暴れても聖女様の身体はびくともしなかった。
「カナリヤ嬢!!」
「カナリヤっ」
「ぐっ!?」
強い衝撃に急に身体が軽くなると同時に暖かい何かに包まれた。
この声は…殿下?
暖かい腕の主を見上げるとやはり殿下で未だに震える身体を強く抱きしめてくれる。
視線を聖女様に戻すとお父様が身体ごと聖女様に体当たりして私を引き剥がしてくれたようだった。
「貴様、何者だ。教会の手の者ではないな!!」
初めて見るお父様の怖い顔。
吹っ飛ばされた聖女様は花瓶や少し高めのせとものの破片に塗れながら手足を曲げてはいけない方向に曲げている。
それでも、死んでない。
この奇妙な、不気味なモノはまだ生きてる。なぜかそう、確信できた。
「答えよっ貴様は何者だ。」
お父様の威圧感たっぷりの言葉にも沈黙しか帰ってこない。
「お、お父様…」
「きゃはっ」
「がっ…」
唐突に聖女様が人間離れした動きでお父様に殴りかかった。