交流をはかってみるっぽい
canary-side
いつまでもお互い無言ってわけにもいかないし…とりあえず許嫁だし…会話しないと駄目だよね?
「あの…」
「…聞け」
おおう、まさかの発言かぶり。
「なんだ」
「い、いいえ、殿下からどうぞ。」
今更だけど一部の場合を除き、身分の下の者が身分の上の者に先に話しかけるのは無粋な事と取られる。
さっきまでの私は結構なマナー違反だ。
今更ながら自分の事が怖い。
もしも殿下が短気だったら、もしも私のお父様が立場の弱い貴族だったら。
私はうち首にされても文句は言えない。
「お前達の噂はかねがね聞いている。どれも虫酸の走るものばかりだ。大方この縁談もお前の父親が捩じ込んだ物だろう。破談にするならお前から父親に言うんだな。もしこの縁談を諦めずに私の寵愛を求めるのなら諦めることだ、私がお前を愛する事はない。」
…ない。うわぁ、ないないない。
うん、大丈夫だ。この人なら絶対に好きになることなんてない。
てか、この子大丈夫なのかな。このまま育ったら最悪な王様になりそうだけど。
まあ、王子と婚約者にならなければルートからは外れると思うから願ったり叶ったりだけど。
「かしこまりました。」
「ほう、物分りがいいやつだ。」
殿下が意外と言うように目を開く。
「それでは2人で双方の父を交えてお話をしましょう。私だって愛のない結婚は嫌ですわ。」
実は不安だった。もしも作中のカナリヤと同じで盲目的な恋に落ちたら…なんて考えてたから。
でも、最初から愛が無くなる関係なんて絶対に嫌。
政略結婚だとしても仲間のような、恋情ではなくてもそんな優しい心を持った生活をしたいから。
「政略結婚は貴族の務めのようですけど私は必ず愛情を持って殿方に嫁ぎたいと思っております。なので殿下のお言葉には感謝いたしますわ。」
最低限交流を持とうと思ったけどこれは無理。
私は見てわかるほどわざとらしい愛想笑いを浮かべてやった。