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モノノケ三姉妹の事件簿『人ならざるモノの悲劇』より  作者: ☆よーたん☆
第零幕〜プロローグ〜
1/29

第零話〜月夜の三姉妹〜

初投稿なので色々読みにくい部分もあるかもしれません。

様々な方に読んで頂いて楽しんで貰えれば幸いです。

あと、プロローグは笑えるポイントはありませんが、全体の基本物語はコメディタッチに仕上がりますので、怖い話が苦手な方でも大丈夫だと思います。


はぁ…。


はぁ…、はぁ……。


女は月灯りを頼りに森の中を走る。

もう何十分は走り続けているのだろう。

自分の息も絶え絶えになってきて、そろそろ体力の限界である事が分かる様に走るスピードも落ちてきていた。


だが、女は走る事を止める事は出来ない。

何故ならば、後ろには女を追う物音と人影があったからだ。


自分は人に恨みを買われる様な事をした覚えは無い。

むしろ、人からは好かれる方なので、誰かに追われる事等あり得ない。

しかし、女は確実に“誰か’’に追われていた。


そう遠くない後ろの方から、ガサガサと草木を揺らす音、パキパキと地面に落ちている小枝を踏み鳴らす音、それらが女の背中越しに聞こえている。



(一体誰なの?)



ストーカーかとも一瞬考えたのだが、それは多分無い。

人に好かれる方ではあるが、容姿に関しては申し訳ないがお世辞にも良くないからだ。

ならば、後ろから追ってくる人影は一体何なのか。

考えても全く思い当たる節が無い。


「あっ?!」


女は木屑に足を取られ転んでしまった。

街灯も無い、月灯りだけが頼りの道であった為、考え事をして走ってしまっていたので“うっかり”障害物を見落としてしまっていた。


「もぅ!なんなのよ!」


追われている事もだが、今居る“この場所”にも全く見当がつかない。

周りには不気味に揺れる木々、昼にピクニックか何かに訪れれば良いだろう森の中に今、自分は居た。


(どうして私は森の中に居るのだろう)


暗がりの獣道で横たわりながら、自分の行動を振り返る。

朝はいつも通りに職場に着き、夕方の定時まで仕事をしていた。

そして、職場を出る直前に上司に話しかけられ………。



そこから……。



そこから……。



そこから記憶が途切れている。

その後に思い出す事とは、自分は何故か森の中に倒れていて、目の前に鼻息が荒い何か得体の知れない人影に出くわした事だ。

それは、身の毛がよだつ程の臭い獣臭がする男の様な姿だった。

自分と同じ様に二本足で立ち、服も着ていて、自分に分かる言葉も発していた。

しかし、それは人間では無い存在。


その相手の顔は月灯りを背にしていたせいかよく見えなかったが、本能的に身の危険を感じてその場から逃げ出したのだった。


そして今、女の目の前に居た人影の顔は月灯りに照らされてよく見える。


女はその容姿を見て声にならない声をあげた。

それは両眼が黄色く光った“豹”に似た顔の化物。


「ゲームオーバー♪」


その化物との距離はかなり近く、自分の顔に相手の鼻息がかかり、思わず鼻が曲がるくらいの獣臭に嗚咽が走る。

そして、低い唸り声とヨダレをすする音が聞こえると、女の恐怖は最高潮に達してしまい、悲鳴をあげる為に口を開いた瞬間、目の前が真っ暗となりそこからの記憶は無い。


月灯りに照らされた女の身体は紅く彩られ、暫くは何かを引き裂く音や何かを食べている様な音が森の中に響いていたのだった。



女の意識が無くなった数分後、化物に近づく人影が三つ。


「遅かった!?」と、長い髪を頭の後ろで一つに結ぶ少女はそう呟く。

すると化物にも、その声が聞こえていた様で女の身体から引きちぎった腕を食べるのを止め振り返った。


「お食事中にゴメンね〜?貴方が襲った相手の女性は手配書の人間じゃないわよ〜?」

腰の位置まで伸びた長い黒髪の少女は化物相手に注意をした。


化物は食べるのに夢中になり、人の近づく気配が感じとれなかったのか、三つの人影はかなり近い距離に居た事に驚くが、それより自分の姿を見ても悲鳴一つあげない輩の事が気になると、姿を見たくて黄色く光眼を凝らす。

すると、三つの人影の真ん中にはショートカットで背の高い少女が腕組みをしながら「あんた、妖怪でしょ?人を襲っても良いルールを知らない程、若くもないでしょうに」と、軽く説教をした。


月灯りが三つの人影に当たると女性三人組で、着物の様なデザインの服を身に付けていたのが分かる。


「お前達、ただの人間じゃないな?陰陽師か?」

化物は口から滴り落ちる紅いヨダレを手で拭うと、三人の少女達に正体を尋ねると、彼女達はニッコリと微笑んで「ただの人間よ」と呟いた。


月が雲に隠れると少女達の姿は闇に消えてしまうが、赤、青、ピンクの眼光が一つづつ見える。


「半妖か?」


野太い声が暗い森の中に聞こえると、何かと何かが暴れ回る音が鳴り響き、明け方にはそれも聞こえなくなり、鳥がさえずる声が爽やかに聞こえる。


そして翌朝、その森に沢山の警察が現場検証にやってくると、真っ赤な血に染まった肉片や臓器、それと動物の毛が沢山落ちていた。



(あいつら、今回はまた派手にやりやがったな…)


現場検証に来ていた1人の太った中年男性警察官は、手に白い手袋をはめながら周りを見渡すと何か強い力によって薙ぎ倒された大木や、引っ掻き傷が残された地面を見ながら思う。


暫くすると鑑識から、その場に居た警察官全員に報告が入る。

殺害された被害者のDNA及び、身に付けていた物品から該当した身元は、昨夜から都内で行方不明になっている“黄島サイエンスアカデミー”で働く女性科学者である事が分かった。

そして、今居るこの場所は都内から遠く離れた山の中。

鑑識が被害者が殺害された時刻を割り出して分かった事だが、最後に殺害された女性が目撃された場所から、この山中への移動は瞬間移動でも出来ない限り、辿り着けない場所である。

それに付近に落ちていた動物の毛が普通の動物のDNAでは無い事や、殺害方法を考慮し現時刻を持ってこの事件を彼が担当する“不可能犯罪”事件と断定され、指揮権は太った中年警察官の管轄下に置かれる事になる。




そして、この殺害事件が今迄の不可能犯罪を超える事件だとは思いもよらなかった……。

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