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森川君観察日記  作者: 井上ぴこ
森川君本編
7/47

7.安藤、観察する

遅くなりました。

 佐伯と水石によるプロフィールは思ったより役に立った。ふざけて書いたものと言っていたので期待はしていなかったけれど、情報としては結構多かった。

 半分くらいはくだらない内容だったが。


 たとえば、小学生のころ田んぼに落ちて嵌って出られなくなったこととか、中学生のころは友達が告白されているのを覗こうとして後ろから誰かに押されて廊下をスライディングして転んだとか。

 これ以上書くとさすがに森川君が可哀想なので割愛。

 っていうか何したら田んぼに落ちるんだろう?その辺のことが一切書かれていなかったので明日佐伯に聞いてみよう。


 これを校内新聞に張られていたら軽く苛めになっていたと思う。ある意味良かったのかもしれない。



 プロフィールは先輩もとても喜んでくれた。

 次の日の返事が細かい文字で1頁ぎっちり書いてあって引いた。勿論読んでいない。

 あんな細かい字を読むのは疲れる。もともと一方的にさせられた交換日記なので返事は関係ない。それに読んだら読んだで変になりそう。なるな。



 今日からは森川君の生活を観察しないといけない。本当にストーカーだと思われたらどうしよう。


 幸いにも安藤の席は廊下側の一番後ろ、森川君は中央の列の前から三番目と板書を写しながら観察できる。

 これならストーカーと思われずに済みそうだとにやりと笑ったが、そもそもストーカーと思われたらこのクラスでの平穏がなくなることに安藤は気づかなかった。



 10月6日 晴れ

 今日の森川君は1時間目から寝ていた。途中で先生に起こされたが、また寝た。

 休み時間に焼きそばパンを食べる。

 2時間目は英語だったため机に突っ伏して寝ていた。先生も起きているより寝ている方が楽だし可愛げがあるから放置していた。

 「森川は寝ていると無害だな」と先生が朗らかに笑ったら森川君が寝言で「デブのハゲめ」と言ったためクラス中が変な空気に包まれた。

 寝ているときも森川君は森川君だと感じた。

 3・4時間目も熟睡だった。

 5時間目は体育だったため張り切って取り組んでいた。あれだけ寝ていたのによく動けるなと感心。

 6時間目は体育ではしゃぎすぎたからかまた寝ていた。



 「ん?」

 これ寝てばっかりじゃない?

 ノートを書き終えてから気が付いた。

 今日だけ特に寝ていたのか、それともいつも寝てばかりいるのか。

 観察初日の安藤にはわからない。

 嘘を書くのも気が引けたのでとりあえず今日の分はこのままで渡すことにした。



 10月7日 くもり

 1時間目、授業開始10分で寝る。2時間目まで熟睡。

 休み時間にコーラを一気飲みしてむせる。

 3時間目はその名残かしゃっくりが止まらない様子で先生に注意される。

 4時間目は舟をこいで机に頭をぶつけて起きた。

 5・6時間目は爆睡だった。



 「…………」

 まぁいいか。

 今日もノートをそのまま渡すことにした。



 10月8日 晴れ

 1~4時間目まで居眠り。

 5時間目は家庭科だったため起きていた。主要教科以外は起きていることが多い。

 6時間目はまた寝ていた。



 「………………………………………………………………」

 もはや寝すぎていて書くことがない。

 3日も書けばさすがにわかる。

 常に寝ているのだ。

 頭が弱い(佐伯風に言うなれば馬鹿)のは知っていた。けれどここまで授業中に寝ているのは知らなかった。観察していなかったので当然だが。

 これではテストだって赤点や赤点ぎりぎりになるわけだ。



 あーノートはこのまま提出すべきか否か。

 安藤は悩む。

 嘘をついたら突き通さないといけない。それも面倒だ。

 「いいか」

 もう面倒臭いのでそのまま出してやった。

いつも読んでいただきありがとうございます。



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