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森川君観察日記  作者: 井上ぴこ
森川君本編
6/47

6.安藤、諦める

 先輩には逆らえない。逆らうとどうなるかわかったものじゃないので、強制的に観察日記はつけなければならない。

 諦めた安藤は仕方なく、本当いやいやながらノートを開いた。

 佐伯はまだ爆笑していたが無視だ。


 黄色と黒のギンガムチェックが悪魔のように見える。


 ノートの中身は至って普通だった。

 安藤の予想では中も奇抜な色で目に悪いのを想像していたので、安堵しつつ文字が書いてあることに気が付いた。

 先輩の性格からすれば、字は丸文字で癖が強いと勝手に思っていたが、達筆で見やすい字だった。


 「はぁ!?」

 書いてある内容は理解できなかったが。



 Q.森川君のプロフィールを教えてください。


 ノートの1行目にこの1文のみ。


 ちょっと待ってほしい。

 自分と森川君の共通点は同じクラスなだけだ。正直話したことも数回しかない。それも必要最低限のことだけ。

 はっきり言って友達でもなんでもないクラスメイトのことなんかよく知っているはずもない。

 まぁ森川君は有名人だから知っていて当然だと思われたのかもしれないが。


 知っていることといえば出席番号と所属している部活、あと英語が苦手なことくらいだ。

 この間のテスト、森川君だけガチで先生に怒られていた。あれはちょっと可哀想だと思った、先生が。ただでさえ、血圧が高そう(平たく言えばデブ)なのに怒りで顔を真っ赤にしちゃってさ。アレで毛細血管2,3本は切れていると思う。あんまり怒ると倒れてしまうからもう森川君は放っておけばいいのに。森川君のせいで寿命は縮んでいるに違いない。その原因は気にしていない様子だったけれど。

 森川君はもう少し気にするべきだ。いろいろと。



 ノートの内容は理解できなかったからか、先生のことを思い出すのに意識が飛んでいた安藤は再びノートに意識を戻した。


 …………。


 うん。見なかったことにしよう。


 何事もなかったかのようにノートを閉じた。

 その瞬間、ノートは開かれる。

 「……………………………………」

 ノートの端に手をかけている佐伯を見る。あえて何も言わない。

 「いや、面白いから」

 「こっちは面白くない」

 「落ち着けよ。ノート見た時点でアウトだから。諦めろって」

 「1日の様子が知りたいって言ってたのになんでプロフィールとか聞いてくるのさ!そんなの自分で調べろよ」

 仮にも先輩は森川君が好きなんじゃないのか。

 ファンなら情報が出回っているのだから、プロフィールくらい根性で調べろ!そんなんじゃファン失格だ。


 「ファン歴が浅いんじゃね?もしくはプライドが高くて聞けなかったか」

 確実に後者だと思った。

 美人で頭が良くて云々の先輩は見るからにプライドが高そうだった。

 プライドが高くて聞けない分、たまたま森川君と同じクラスで平凡な私がいたから無茶ぶりをしたのだろう。

 ということはかなり下に見られている?


 くそっ。悔しいけど怖いから何も仕返しできない。

 それでも悔しいので受験に落ちろと心の中で念じた。


 「で、どうすんのこれ?」

 「どうすんのって言われても、英語が苦手なことしか知らないし」

 「あーあの宮島がめっちゃ顔真っ赤にしてキレてたもんね」

 あいつメタボだからそろそろ森川に病院送りにされんじゃね?と佐伯。


 さっそく情報が少なくて怒られる可能性が出てきた。

 すげー面倒くさい。

 誰か代わってほしい。


 「しょうがないなぁ。貸し5つね」

 と言いながら佐伯はポケットからメモ用紙を取り出して安藤に手渡した。

 「何これ?」

 貸し5つのところは無視した。

 本当に貸しを返したら味をしめてまた繰り返される可能性が高い。

 「水石とこの間ふざけて作った森川のプロフィール」

 「は!?」

 水石はやはり同じクラスで、佐伯・森川君と同じ中学出身。森川君と同じサッカー部だ。

 佐伯は森川君とは仲が悪いが、水石とは仲が良かった。

 「何遊んでんのさ……?」

 「校内新聞に張り付けて遊んでやろうと思って作った。使っていいよ。ふざけてたからあんまり使えるところないかもだけど。ってかふざけてるっていうよりほとんど真実だから困るよねー。本当あいつ馬鹿だわ」

 けろっと言われてどこに突っ込んでいいかわからなくなった安藤は何も言わずにその紙をノートに挟んで閉じた。



 朝から疲れてしまったので、家で書こう。

読んでいただきありがとうございます。

ストックが切れたのでこれからは不定期になります。

最後まで書けるように頑張ります。

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