5.安藤、相談する
安藤は昨日の出来事から全て佐伯に話した。
「何その面白展開。超ウケる」
言いながら馬鹿笑い。明かに他人事だと思って爆笑している。
確かに他人事なら面白い。安藤もきっと爆笑していた。
でも安藤は当事者だ。全く笑えない。
「他人事なら超面白いよねー」
「安藤ドンマーイ」
軽いノリで肩を叩かれても慰められている感じはしない。むしろ馬鹿にされている気がする。うん。気がするんじゃなくて、馬鹿にされている。
「佐伯に話した私が馬鹿だった。もう放っておいて」
「安藤、心外だなぁ。私は確かに馬鹿にしたけど、協力もできるかもよ?」
やっぱり馬鹿にしてたよ、こいつ。
でも最後の協力できるかもとはどういうこと?
意味が分からなくて佐伯を見ればニヤリと意地の悪い笑みを浮かべていた。
「私、森川と同じ中学だから情報仕入れやすいよ」
「!」
確かに佐伯と森川君は同じ中学出身だった。仲が悪いからあんまり考えたこともなかったけど。
「だから安藤が情報少なくて先輩から怒られるの防げるよ」
「なるほど……」
確かに先輩は情報が少なかったらキレそうだ。
もともと理不尽な人だからキレるに違いない。
「同じクラスなのにこれしか森川君について書くことがないの!?彼の魅力がわからないの!?」とか言いそう。
彼の魅力といえば顔が良いことと頭が残念なことだろう。
先輩は彼が馬鹿だと知っているのだろうか?あばたもえくぼとはよく言ったものだ。いや、恋は盲目のほうが合っているか。
って。待って。
はたと気づく。
「私、やるなんて言ってない……」
知らず知らずのうちにやるような感じになってしまっているが、安藤は一言もやるなんて言っていない。
「いいじゃん。日記つけるくらい」
項垂れる安藤に佐伯は声をかけた。
「日記!?」
日記なの、これ!?
安藤の疑問が顔に出ていたらしく、それに佐伯は答える。
「日記じゃん。森川観察して1日の様子をつけるんだから。森川観察日記」
ブッと噴き出しながら。
噴き出したら、余計に面白くなったのか佐伯はまた爆笑しだした。
カブトムシとか朝顔みてー。夏休みの宿題かよと笑いながら言っている。
観察っていうよりストーカーじゃんと安藤は声に出さずひっそりと思った。
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