45.家族紹介は遠慮します(3)
どんなに美人でも森川君関係の人には碌な人はいないと言うことを失念していた安藤は、先輩のことを思い出し、ああ、これまた厄介なことになったと思った。
抱き着いていた彼女は冷静になったのか、少々恥ずかしがって「やだ!私ったら」と安藤から離れた。
「話は以上でいいかな?」
笑顔で安藤は聞く。
「いえ、あのっ」
「じゃあ私はこれで」
有無を言わせず。安藤は校舎へ足を進めた。
関わると面倒。関わると面倒。絶対に面倒。
「待って!待ってください」
後ろから必死な声が聞こえるが、安藤も必死である。これ以上は許容できない。今の生活だって平和とか言っているけれど、実際平和じゃない。
残念に付き纏われるのもブスと連呼されるのだけでももう十分だ。
やっと先輩が卒業したって言うのに、また変なのに関わりたくない。
速足というよりも駆け足で逃げ出す。ここで逃げ切れなければ終わりである。
「待って!お姉さま!!」
「うわっ」
背中からいきなり衝撃を受け、安藤は前のめりになって地面に倒れた。
走っていたので、かなり思いっきり地面とぶつかってしまった。痛い。ものすごく痛い。
起き上がりたいのに、背中に重い何か(想像つくが考えたくない)が乗っかっていてできない。
「やだ!お姉さま、大丈夫ですか!?」
「……そう思うなら、まずどいてくれませんかね?」
慌てた様子の彼女は安藤の背中で狼狽えるばかりで、どいてくれない。
いい加減重いんですけど。
どんなに華奢な容姿でもそれなりに体重はあるし、こっちはこの年でこけた上、地面にうつ伏せ状態で恥ずかしいんですが。
安藤は彼女の下敷きになったまま、制服のポケットを探し、携帯電話を取り出すと、佐伯に電話をかけた。
『もしもし。どうした?』
「タックル喰らって下敷きにされた。助けて」
『は?』
何言ってんだといわんばかりの様子で佐伯は声を漏らした。
自分が佐伯だったら確かにそう思うが、事実なのでこれ以上説明のしようがない。
とりあえず中庭にいるから助けてくれと佐伯に伝え、5分後。
佐伯はやってきて早々ゲラゲラ笑いながら写メを撮りまくりやがった。
クソッ。こいつ、今何もできないからって。
ドン!
「笑ってないで、どかしてもらえませんかね!」
両手を地面に叩きつけて佐伯を睨んだ。
「わかった、わかった。今、森川呼んでやるから」
「ちょっと!誰がそんなことしろって言った!!」
森川君なんて呼んだところで役に立つはずがない。
呼んでいる暇があったら早くどかしてくれよ。もう限界に近いよ。口から内臓出そう。
安藤が苦しんでいるのを無視し、佐伯は森川君を呼びに行ってしまった。
いつまでこの状態でいなきゃいけないんだろう……?
とりあえず気を失ってしまった方が楽なんじゃないかと安藤は思った。
いつもありがとうございます。




