43.家族紹介は遠慮します(1)
すみません。遅くなりました。
3年生になり、新学期が始まった。
安藤、佐伯、森川君、水石、武井の5人はまたも同じクラスだった。
森川君なんて喜びすぎてクラス分けの紙が張り出されているところで安藤が来るのを待っていて、安藤がまだ紙すら見ていない段階で「栞!俺ら同じクラスだよ」とぶんぶん手を振ってきた。
ああ、また同じクラスか。
いつもならため息が出そうになるのに何故かほっとしてしまって、そんな自分の変化にギョッとした。
これはエイプリルフールが原因だ。確実にあの日から意識してしまっている。
「何だ。安藤も森川のこと好きになっちゃったの。それじゃ見ててつまらねぇよ」
いつの間にか後ろにいた佐伯に言われて心臓が飛び出るかと思った。
「まさか!そんな!!恋じゃないし!」
「じゃあ愛か?あーやだやだ。新学期早々人のいちゃつきぶり見るのとか辛いわー」
佐伯は安藤の言うことになんか信じもせず、さっさと校舎の中に入っていった。
「違うからぁ……」
安藤の否定は誰にも届いていなかった。
教室に入れば、生暖かい視線が注がれる。
馴染み深いクラスメイトも今回初めて同じクラスになったクラスメイトも森川君との関係を知っているからか、教室で嬉しそうに安藤の周りを引っ付いて離れない森川君に対して「良かったね」と言わんばかりの視線だ。
「俺ね、春休み栞に逢えなくて超寂しかった」
「うん……」
忙しくなかったけれど、会いたくはなかったとは言えない。
「エイプリル・フールも栞に嘘吐いてすげー嫌だった」
「うん……」
じゃあ吐かなきゃいいのにとも言えない。
「お前、見てるこっちがウザくて仕方ねぇ台詞言ってんじゃねぇよ」
森川君の頭上に佐伯の拳骨がクリーンヒットした。森川君は痛さで屈みこんで頭を抱えてしまった。
「あー新学期早々ウゼェ。授業もダリィのに森川がウザくてイライラする」
「痛ぇ……」
「大丈夫?」
「大丈夫だろ。馬鹿は脳みそ小さい代わりに頭蓋骨が厚いからな」
「マジで!俺の脳みそ小さいの!?」
「ほら、馬鹿だ……」
呆れたため息があちこちから漏れ聞こえた。
「そういえば、お前の妹ウチの高校受けたって聞いたけど、どうなった?」
たんこぶできたかも~とまだ頭を抱えていた森川君を見下ろす形で佐伯が唐突に聞いた。
「そりゃ受かったよ」
「まぁまぐれでお前が受かるくらいだもんな」
聞いておきながら鼻で笑ったし。
「ひでぇっ!」
「択一問題、鉛筆転がしで全問正解したのはすごいが、それは実力ではないから、な」
背中に黒いものを纏った佐伯が微笑んだ。
鉛筆転がして全問正解ってある意味すごい。
「運も実力のうちじゃん」
「……」
何も言わないで微笑む佐伯を見て森川君は顔を反らした。怖いなら言わなきゃいいのに。
「妹は実力、お前は運のみ。レベルが違う」
「森川君の妹ってどんな人?」
「森川と違って神様に祝福されてる子だよ。顔も良くて性格も良くて頭も良い」
「あー」
森川君は顔は良いけどその他は残念だからなぁ。天は二物を与えずを地で行くタイプだ。
「お前が母ちゃんの腹の中に置いてきたもの全部背負って生まれてきたんだろうな」
憐みの視線を森川君に向けた。
いつもありがとうございます。




