36.佐伯、くだらないことで悩む
書いていくうちに方向性がわからなくなりました。
「あーこれ絶対おかしい」
自分の席で漫画を読んでいた佐伯はそう呟いた。
時刻は放課後をまわっており、クラスメイトは帰路に着いているか部活に行っている。
佐伯と安藤は特に何もすることもなく、だらだらと教室に残っている。2人で残っているのに互いに漫画を読んでいるだけだ。
「おかしいって何が?」
漫画からは目線を外さず、一応安藤は声を掛けた。掛けなくても話したければ一方的に漫画を奪い取って話しかけてくる。
漫画を奪われるのを阻止するために声を掛けたと言っても過言ではない。
「これだよ。これ!かー何でいつもイケメンと普通女子が恋に落ちんの?有り得ねー」
読むのも嫌になったのか漫画を閉じて机に置く。
読んでいたのは普通(よりはちょっと地味。平凡)なヒロインが何故かわからないが超イケメンに告白され紆余曲折を経て恋人になる話だ。
大体少女漫画ってこうだという感じのテンプレート漫画である。
「現実見てみろよ。イケメンの連れている女がブスだったら2度見するぞ。『何であんなブスと一緒にいるんだ!?』ってなるだろ」
「あー」
確かにそうかもしれないが、漫画の世界なんだからいいじゃないか。
「ブスと一緒にいたらそれは彼女とは思わず友達だと思うしな。それにブスと本気で付き合ってたら性癖疑うぞ」
「それは言い過ぎだよ……」
人は外見だけが全てじゃない。中身が伴ってこそだろう。中身は素晴らしい人だから付き合ったって人もいるはずだ。
勝手に決めつけるの良くない。
「じゃあ実際考えてみろよ!すげーイケメンがブス連れてるとしたら『中身が素敵なブスなんだな』って思うか!?」
「いや、その考え方おかしいから」
仮定の段階でブスって言ってるじゃないか。中身が素敵なブスってどんだけ失礼なんだ。何様よ。
大体漫画はブスではなくて普通の女子だ。なんでもうブス前提で話をするんだ。
安藤は漫画を読むことは諦めた。佐伯の話を聞いていたらとても続きを読む気になれない。佐伯の机の上に置いてある漫画の上に重ねておいた。
「いくら漫画だからってもう少しリアルを追及してほしいよな」
普通女子と普通男子の恋愛でいいじゃんと佐伯。
「いやいや、そこは漫画だからこそ脚色してほしいんだよ」
佐伯は何もわかっていない。
安藤の持論から言えば、少女漫画は多少の脚色があるからこそ面白いのだ。
見た目が平凡・普通なのも読む人の大多数が普通だからであって、その相手がイケメンなのももしかして現実で私にもそんな出会いがあるかも……と夢を見られるからだ。相手が不細工なんて読む気すら起きない。
現実にそんなうまいことが起こるわけがないのも知っているが、漫画くらいは夢見たっていいじゃないか。
「あ、でもさー安藤もこの漫画と似てね?」
安藤の持論を大人しく聞いていた佐伯は、しばらく考えてからそう言った。
「!」
何を言い出すんだ!?
ギョッとした安藤を気にせず、佐伯は続ける。
「だってさー森川は見た目はイケメンで安藤は普通じゃん。リアルだとこういう感じか。うん」
「待って待って待って。確かに見た目はそうかもしれないけど、漫画とは違うじゃん」
「自分で言ったんじゃん。現実で私にもそんな出会いがあるかもって。出会ってるじゃん、森川と」
一緒にしないでほしい。
漫画ではお互いの気持ちが通じ合って恋人同士になっているが、こっちは片方の気持ちのみだ。
漫画とは違う。絶対違う。
「現実でそういうパターンがあるとイケメンに欠陥があるってことだな。別にブス専だから付き合うわけじゃないよな!」
妙に納得したようだ。
先ほどまでの佐伯の話にあてはめると安藤はブスということになる。
森川君と一緒に外を歩いていたら「何、あのブス?」と二度見され中身が素敵なブスなんだなとは思われないのが、一般の人の意見だと。
実際は森川君の中身が残念であるとはわからないので、大方安藤がブスと思われる。
ひどすぎる。
それ以来、安藤は普通女子とイケメンが恋に落ちる漫画が読めなくなった。読むと何とも言えない微妙な気持ちになる。
いつもありがとうございます。




