31.クリスマス?うちは仏教です(3)
「安藤さん、どういうことかしら?」
はい、怒られました。
どこから聞いたのかわからないが、今日話していた仏教徒の話をなぜか先輩は知っていて、放課後にまた呼び出しをくらい、化学実験室でお説教の真っ最中だ。
今日は椅子にも座らせてもらえず、安藤は床に正座させられている。
12月の床はすごく冷たい。靴下を穿いていても冷気が足に伝わってくる。コンクリ造りだから余計に冷たい。
夏場ならまだしも冬場に床に正座をさせるとは、今日は特にお怒りなのが伝わってくる。
先輩はその目の前で仁王立ちだ。
受験が終わって余裕になったからか、干渉が激しい。
安藤の祈り(呪い)はむなしく、先輩は有名国立大学へ推薦で受験し合格してしまった。
受験が終わればあとは卒業を待つばかりだ。暇なのはわかるが、後輩の恋愛(安藤からしたら恋愛ではない)事情に首を突っ込むことはないだろう。
「あなた、去年はクリスマスに友達と映画を観に出かけているじゃない。なんで今年は森川君と過ごさないの!?」
去年のクリスマス事情までご存じとは。
去年は佐伯らと駅前で遊んでいた。映画見てご飯食べてカラオケに行った。
一体誰が情報を漏らしているんだろう?佐伯?いや、佐伯はないな。
安藤が情報の流出元を考えている間にも先輩のお説教は続く。
「大体、仏教徒と言いながら仏教の行事も知らないのはおかしいわ。森川君も気づかないで調べるなんて純粋すぎるのよ。こんな純粋な森川君を騙して何がしたいの!?」
何もしたくありません。
一緒に過ごしたくないから嘘を吐いたんです。
言ったら社会的に抹消されるから言えない。
「えっと、それはですね……」
何て言い訳するのが一番ベストか、考えるが良い言い訳が浮かばない。
表情で考えがバレる恐れがあるので、顔を俯けた。足元は冷たいのに、背中を冷や汗が流れる。
「わかったわ!!恥ずかしいのね!」
「は?」
俯いていた顔をあげ、先輩の顔をまじまじと見てしまった。
恥ずかしいって何が?
「初めて2人っきりで過ごすイベントですものね。恥ずかしいからそんな嘘ついたのね。でも駄目よ。森川君に嘘吐いちゃ」
少女のように可憐にうふふと笑われると気持ちが悪い。腕に鳥肌が立ちました。これならさっきまでの怒りの方がましである。
どこをどう考えれば、そういう考えになるのだろう。
森川君を気に入る人たちは皆おかしい……。
先輩は自分で言ったことに納得したのかうんうん頷いている。
安藤はクリスマスを過ごすのを恥ずかしがって森川君に嘘を吐いたという流れが彼女の中で出来上がっている。
ここは便乗してしまったほうがいいのか。
「2人で過ごすのが恥ずかしいなら皆で過ごせばいいのよ」
便乗する前に結論が出たようだ。
安藤の両手はいつの間にか先輩に握られている。
先輩は乙女のように目を輝かせて微笑む。
「森川君と仲が良い友達と一緒に過ごせば恥ずかしくないわ。そうよね、最初から2人っきりなんて内向的な安藤さんにはハードルが高いわよね」
安藤は決して内向的ではないが言わなかった。
人を見た目で判断する人だから、安藤が森川君と比べて地味、平凡、存在感が薄いなどから内向的だと思ったに違いない。
否定をすれば、2人っきりで過ごせと言われる。それは避けたい。
第一2人っきりで何を話せばいい!?
相手は森川君だ。
まともな会話が続くとは思えない。
「じゃあみんなで過ごすのよ。大丈夫、森川君も安藤さんの気持ちわかってくれるわ」
全て勘違いされている状態で言われても何も感じない。
とりあえずクリスマスに一緒に過ごさないと正座でお説教よりひどいことになるなと安藤は理解した。
「…………わかりました」
「あと、ちゃんと写真集送るのよ。加藤さんに負けるようでは駄目よ。ライバルは蹴落とすものだから。まぁあんな女ライバルにもふさわしくないけれど」
「…………………………」
すっかり忘れていたそれを思い出させ、念押しされた。
栞コレクション……!?
「じゃあ3学期になったら結果を聞くからね」
うふふと笑いながら安藤を1人放置して先輩は帰って行った。
結果を聞くと言っていたので、もう仏教徒として避けることができない。
「あーぁ、もう泣きたいよ」
安藤の呟きは誰にも聞かれず消えていった。
いつもありがとうございます。
次回更新少し遅れます。すみません;




