30.クリスマス?うちは仏教です(2)
本格的に始動です。
テストも無事終わった翌週。
森川君は満面の笑みで安藤の元へやってきた。
ああ、これは嫌な予感がする。
「栞、見てみて!俺赤点1つもなかったの」
手に持っていた解答用紙を安藤の机に広げて褒めてと言わんばかりに安藤を見た。
森川君のテストは際どいところで全部赤点をすり抜けていた。
「お前さー31点とか35点とかは自慢できる点数じゃねぇの、知ってる?」
佐伯が森川君の解答用紙を見て「ひでぇな」と呟いた。
そんな佐伯のテストは全部90点以上だ。佐伯からしたら森川君の点数は有り得ないのだろう。
「佐伯には見せてないし!俺は栞に言ってるの。ね、栞」
嬉しそうに安藤を見る。
これは褒めなきゃいけないパターンだ。褒めないと拗ねる。
「テスト当日から勉強したのに頑張ったね」
若干、いや、大分顔が引きつってしまった。
当日から始めたのにこうも見事に赤点から逃れられるなんてある意味すごい。
「それで、クリスマスなんだけど……」
解答用紙をしまって、照れた素振りで話を切り出される。
1教科でも赤点があったら「もうちょっと頑張ろうね」とか言ってクリスマスはなしと言えるのに、これでは言えない。
「ああ森川、それなんだけど」
安藤ではなく佐伯が答える。
「安藤は仏教徒だからクリスマスできないんだ」
「え!?クリスマスできないってどういう事?」
森川君は驚いて佐伯を見る。
「お前、クリスマスってどの宗教のイベントか知ってるか?」
「……えっと、キリスト教??」
「そうだ、馬鹿でも知ってんな。安藤は敬虔な仏教徒だから別の宗教のイベントはできないんだよ」
すごく真面目な顔して佐伯は言う。嘘だ。真面目な顔して嘘をついている。
安藤の家は確かに仏教ではあるが、クリスマスも毎年やっている。
仏教と言っても家に仏壇が置いてあるだけで特に何もしていない。
日本人は大体仏教徒であるが宗教色は薄いので違う宗教のイベントでも気にせずやっているのに。安藤の家もその1つだ。
そういえば、森川君の誕生日プレゼントを選びに行ったとき、クリスマスを避けたいなら仏教徒だからクリスマスはやらないと言っとけって佐伯に言われたことを思い出した。
「栞、そうなの?」
森川君は佐伯の話を信じているのか安藤に確認する。
あれ、信じちゃうんだ……。
これに乗らない手はないので安藤は「うん、そうなの。ごめんね」と謝った。
「そっかぁ。仏教徒はクリスマス駄目なのかぁ」
残念そうに森川君は呟く。
ごめんね、森川君。せっかく赤点逃れて補習受けなくて済んだのに。
「こればっかりは宗教の問題だからしょうがねぇよ。諦めろ」
「うん」
納得した様子だ。
あれで納得できるなんてすごい。
佐伯の言っていることなんてすべて適当に作られたものなのに。残念なのか天然なのかわからない。
「じゃあさ、仏教のイベントって何があるの?」
「え!」
そんなの知らないよ!
今の流れで知らないなんて言ったら、嘘がバレる。バレたらクリスマスは森川君と過ごさなきゃいけなくなる。
佐伯に助けを求めるが、佐伯もよくわからないようで森川君にばれない様に首を竦めた。
「森川。人に聞くのは簡単だが、自分で調べることも大事だぞ。お前、安藤のことが好きなら自分で調べてこいよ!!」
「!?」
投げた!
わからないからって自分で調べてこいって投げやがった。
「安藤のことは何でも知りたいだろ?自分で調べればわかることも安藤に聞いてたら嫌われるぞ」
「!俺、ちゃんと調べてくる」
森川君は解答用紙を持ったまま、どこかへ走って行ってしまった。
多分図書室へ行ったのだろう。
「あいつ、本当に馬鹿だな」
「騙しといてそんなこと言っちゃ駄目じゃん」
「安藤も共犯だろ?これでまた貸し3つだからな」
貸し3つはケーキだかんなと笑いながら佐伯が言った。
これで本当にクリスマスは過ごさなくても大丈夫なのだろうか?
いつものパターンを考えるとまだ何かある気がするが考えないようにした。
いつもありがとうございます。
これで終わるはずがありません。続きます。




