29.クリスマス?うちは仏教です(1)
クリスマス前の様子から入ります。
12月―
森川君の誕生日も終わり、今年もあと1か月を切った。
通学時には制服の上にコートを着るようになり、すっかり寒くなった。もう冬なんだと実感する。
12月。
1年の最後を飾る月。
12月。
恋人冬のイベント第1弾が始まる月だ。
そう、12月はクリスマスがある。
因みに第2弾は初詣。第3弾はバレンタインである。
「栞ー、クリスマスなんだけど……」
まだ12月に入って1週間しか経っていないのにも関わらず、自分の席で教科書を読んでいた安藤の目の前にしゃがみ込んで上目遣いで聞いてくる。
聞いてくるの早くない?
これが普通なのか安藤にはわからない。
世間一般の恋人たちは大体1か月前から計画を立てる人もいるとTVで言っていたが、高校生でもそうなのか。
イケメンの上目遣いは心臓に悪い。そう、たとえ森川君でもだ。頭が残念でも、だ。
この後に続く言葉はもうわかっている。
クリスマス、一緒に過ごせる?だ。
「森川君、悪いんだけど……」
「嫌だ!クリスマスは一緒に過ごしたい」
「そうじゃなくてさ……」
ため息が出そうになるが堪える。頭が痛い。
落ち着け。多分森川君ははわかっていないんだから。
自分の心を落ち着け努めて冷静を装う。
「?」
森川君の頭にはやはり疑問符が浮かんでいる。首を傾げて「何?」と言いたげだ。
「……テスト勉強しなくていいの?」
「!」
今日からテストである。
安藤の一言で思い出したらしい森川君は目を大きく見開き、顔が青褪めていく。
何で当日まで忘れていられるんだろう?
今朝のクラスメイトの様子を見て気づかなかったのだろうか?
皆自分の席に座って教科書やノートを見ているじゃないか。唯一佐伯だけが携帯をいじっているが、あれは例外だ。
部活だって先週からテスト前だからなかったはずなのに。
「この間も言ったけど、赤点はとらない自信あるの?」
ぶんぶんと首を横に振る森川君。
安藤はため息を深く吐いてしまった。駄目だ。もう無理だ。
今日から始まるのに全然勉強してないに違いない。
常に勉強してない森川君がテスト前にも足掻いていないのならばもう全滅に近い成績を修めることになる。
「…………赤点3つで24日から補習だよ」
「!!」
酷だが事実なのでしょうがない。
主要教科で赤点を3つ取れば24日から29日まで土日返上で補習である。
補習は朝から夕方まで1日拘束されるので、クリスマスを過ごすのは無理だ。
皆それもあって必死に勉強しているのに。
「ど、どうしよう?」
縋るような目つきで安藤を見る。
どうしようと言われてももう諦めるしかないよ。とは言えない。
さすがに可哀想だ。
それに森川君には頭がそこそこ良くなってもらわないと可愛い彼女ができないから困る。
「テスト範囲わかる?」
再び首を横に振る森川君。
「今日テストがあるのは現国と生物だから暗記できれば何とかなるよ」
「本当!?」
さっきまでの様子から一転、目を輝かせる。
「範囲はこれね。早く勉強しなよ」
「うん!俺、栞のために頑張る」
嬉しそうに範囲を書かれた紙をもらって森川君は自分の席に戻っていった。
自分のために勉強しなよ……。
「馬鹿の世話って大変だな」
いつの間にか自分の席で携帯をいじっていた佐伯が隣に立っていた。
「あいつにテスト範囲なんか教えたら、ぎりぎり赤点を逃れるぞ」
あいつ、そういうとこだけ強運だからなと佐伯が言う。
「とらない方がいいじゃん……」
未来の彼女のためにもその方がいい。
「いや、とらなかったらクリスマスのことまた言ってくるぞ」
「!」
「あいつのことだから愛の力どうの~とか言いながらクリスマスのこと楽しそうに言い始めるぞ」
「教えなきゃよかった……」
「まぁ、とりあえずテスト頑張れ」
ポンと肩に手を置かれ慰められた。
そのあとのテストは思った以上に動揺していて手ごたえがなかった。
いつもありがとうございます。
次からクリスマス本格始動する予定です。




