表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
森川君観察日記  作者: 井上ぴこ
番外編
27/47

27.森川君マニュアル

佐伯視点です。

 最近安藤の様子がおかしいことがある。

 いや、森川と強制的に付き合わされてから壊れてきているが。

 それを抜きにしてもなんだか変なときがある。


 例えば、自分の席にいるときに隣を誰かが通ると異様なまでにビクッとする。

 安藤の席は教室の一番後ろ。廊下側で隣がドアなのだから、誰か通るのは当たり前だろう。

 それなのに異様なほど驚くのはおかしい。

 それに驚くときはたいてい何か書いているときだ。

 慌ててノートを隠している。

 本人は気づいていないのかもしれないが、あれだけ驚いてノートを隠していればノートに何かあることくらい気づく。


 これはなんだか面白い予感。



 思わずにやりと意地の悪い笑みが浮かんだ。



 「あーんどう、なにしてるの?」

 わざとノートを書いているときに話しかけてみた。

 案の定安藤は驚き、ノートを両手で隠した。

 「何もしてないよ」

 ふふ、そんな嘘私にはお見通しだ。

 「へぇ~。何もしてないならそのノートは何よ?」

 安藤がわかりやすくギクッと肩をすくめた。

 もう少し上手く隠せないとだめだぞ。もろバレだ。

 「ノ、ノート?何のこと?」

 しらばっくれようとしているが、両手で隠しているの見えているし。目も泳いでいる。

 「安藤さー、もう少しうまく隠せよ。今の態度、全部おかしいし怪しいから」

 もうその手どかせ。安藤が言わないなら自分で確認するから。

 「ダメダメダメっ!マジで駄目!勘弁して」

 安藤の手をどかし、ノートを奪い取ってやると奪い返そうと反抗してくる。

 こんなことするなんて珍しいな。よっぽど面白いことがあるに違いない。

 ノートを高く持ち上げて安藤が取れないようにする。安藤と私の身長差は10cm(勿論私の方が高い)あるのでそうやすやすとノートは取り返せない。

 「佐伯―やめてよ」

 「どうせ大したものじゃないんだろ?エロ本とかじゃねぇんだからいいじゃん」

 「エロ本って……」

 「学校でエロ本読むってヤバいよな。水石のロッカーには入ってるけど」

 「ちょっと!さりげなく話を反らそうとして駄目だからね!返して」

 チッ。

 思わず舌打ちしてしまった。

 水石の恥ずかしい話まで暴露してやったのに安藤には効果がなかった。なおもノートを取り返そうと必死にジャンプをしたり手を伸ばしたりしてくる。

 「何だよ。たかがノートだろ?何でそんなに隠すんだよー」

 「それはちょっと……」

 安藤が言葉を濁す。よっぽど見られたくないのか。

 安藤の動きが弱くなった一瞬をついてノートの中身を見た。

 「あ!ちょっと!!」



 〈朝のあいさつ〉

 あいさつには2通りある。

 機嫌が良いとニコニコ笑ってくるので愛想笑いをしつつあいさつを返すこと。

 機嫌が良くない、または疲れていそうなときはこちらから声を掛けてやると良い。


 無視や無表情のあいさつは私の性格を疑われてしまうのでしないこと。

 あくまでもあいさつはしっかりすること。


 〈休み時間の対応〉

 早ければ1時間目が終わった休み時間にノートを持ってくるので、嫌がらずに受け取ること。

 機嫌が良いときは午後や帰りに返しても何も言ってこないので、暇なときに中をひらけばいい。

 寝起きなどはたまにぐずつきノートが返ってこないと目で訴えてくることがあるので様子をみながらノートを返すこと。

 自分からはノートの催促などしないこと。好かれていると勘違いを与えてしまい、より面倒なことになるため。




 ………………?

 「なにこれ?」

 安藤を見ればあからさまに顔を反らす。

 「声に出して読むぞ」

 「うわー。やめてやめて!」

 息を大きく吸い込んだところで安藤の手が口を塞ぐ。

 「…………」

 口を動かそうとするが手で塞がれているためうまく声が出ない。

 「言ったら佐伯の鳩尾みぞおちにパンチするから」

 既にもう片方の手が鳩尾に置かれて準備されている。

 これは黙ったほうがよさそうだ。安藤は平凡そうななりして結構パンチ力があるのでまともにくらったら動けなくなる。

 首を横に振って言わないとアピールすると口から手を外した。鳩尾にはまだ握られた手が置かれているが。

 

 「で、これ何よ?」

 「…………マニュアル」

 小さく呟いたのでなんと言っているのか聞き逃すとこだった。

 マニュアル?


 「森川君ってちょっと想像を超えてるからさ、スムーズに対応できるように今まであったこと書き出してるの。同じようなことがあったときに困らないように。これ、絶対言わないでね」

 気まずそうに安藤はポツリポツリこぼす。

 

 ああ。確かに奴は想像を超えたことをやらかす。

 だからってマニュアル……。




 安藤の話を聞いたその日だけは森川に少し優しくしてやった。

いつもありがとうございます。


実生活のほうでちょっと面倒な人と関わることが最近ありまして、マニュアルほしいなーと思って、安藤に作ってもらいました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ