25.森川君の誕生日(5)
先輩と反省会をします。
「安藤さん、ちょっと」
鼻血やら加藤コレクションやらがあった放課後、安藤はあの人に声を掛けれられた。
安藤は振り返る。何も言わずに。否、声を発したくなかったのだ。
今日は絶対厄日に違いない。と心の中で思いながら、話しかけた人物―寺岡先輩―を見た。
*****
またもや化学実験室に連れてこられた。
この人は化学実験室が大好きだなと思いつつ、今日の呼び出しは何なのか考える。
「座って」
先輩の向かい側に腰を下ろすように言われ、大人しく座る。
先輩は笑顔なのにやっぱり黒いオーラを纏っていて怒られるんだろうなとうすうす予想する。
「まず今日は森川君の誕生日よね?」
「はぁ、確かに」
笑顔で確認され、曖昧に頷く。
「安藤さんがタオルをプレゼントしたって聞いたわ。森川君にぴったりだと思う」
「あ、ありがとうございます」
何でタオル渡したことを知っているのだろう?
先輩の情報網が怖い。何で知っているのかなんて聞いたら睨まれて終わりだろうから聞けない。
「サッカー部だし、汗も掻くから良いと思う。そこはいいの」
タオルを渡したことは先輩には好印象だったようで多分褒められている。
『そこは』と言われているのでそれ以外に問題があったようだ。
「ただね」
ほら来た。
本題を切り出そうと先輩は今までの笑顔から一転眉間に皺を寄せて黒いオーラを放つ。
「あれは何なの?」
あれって何ですか?
あれに対してお怒りなのはよくわかります。ですが私にはあれが何のことかわかりません。
泣きたいのを堪えつつその先を待った。
「はぁ~誰だったかしら?加藤さん?あの子は何なの?」
眉間の皺を伸ばしつつ心底嫌そうに先輩が言う。
ああ、加藤さんですか。
今日のお怒りは加藤さんについてらしい。
じゃあなんで私が呼ばれるのだ?
先輩のことだから加藤さんに本性がバレると困るのかもしれない。加藤さん言いふらしそうな感じするし。(まぁ誰も信じないとは思うけど……)
だからと言っていつも安藤が怒られるのでは安藤としては堪ったものじゃない。
「あの子、森川君の彼女でもないのに彼女面して写真集送ったって聞いたんだけど?」
「はい、まぁ、そうでした」
写真集と呼べるほど大層なものではないけれど、加藤コレクションは確かに森川君へ渡していた。
処分をどうするか、困ったプレゼントだなと皆で言っていたけれどそんなことは先輩には関係ないだろう。言っても無駄だ。
「ちょっと、安藤さん!」
先輩がいきなり席を立って安藤を見下ろす。
威圧感半端ないんですけど?
加藤コレクションに対して怒られるのはやっぱり理不尽じゃあ……?
恐る恐る先輩の顔を見ると、先輩は安藤の両手をしっかりと握る。
「?」
「あんな子野放しにしててどうするの!?私は安藤さんだから森川君のこと任せたのよ!それが何!?あんな化粧してないと学校にも来れないような見た目の悪い子を森川君のそばに寄らせて。彼女はあなたなんだからしっかりしなさい!」
理不尽にも程がある。
加藤さんは誰にも止められないです。だって先輩と同じくらいキャラ立ってますから。
関わると厄介な人物ですから。
本人を目の前にしてはとても言えない。
先輩、加藤さんのことブスじゃなくて見た目が悪いって言ったよ。
ブスより見た目が悪いの方が言われて嫌になるのは自分だけかなと安藤は思う。
「今回の写真集だって話によると水着もあるんでしょ?たとえ見た目が悪くてもスタイルが良かったら、見た目もスタイルも平凡な安藤さんより加藤さんに心が行ってしまうかもしれないでしょ」
さりげなく私まで傷つけられている。
この手の人種は私を巻き込むのが上手です。心がズタズタで涙すら出ないです。
「そうですね……」
反抗する気力はとっくに削がれているので素直に頷いた。
むしろ森川君と加藤さんが付き合ってくれた方が安藤の心の平穏には良い。
先輩は許さないと思うが。
「だからね、私考えたの」
黒いオーラを引込め安藤に微笑みかける。
ゾクッ!
背筋を悪寒が走る。
嫌だ。とんでもなく嫌なことが起きる。
「安藤さんも写真集を送ったらいいと思うの」
チーン。
頭の片隅でおりんが鳴った。
「安藤さんは見た目は平凡だから化粧しないと外出できないような女には負けないわ。ううん、負けることは許されないのよ、あんな女に」
微笑んでいた先輩の顔が一瞬般若のように歪み、ギリッと歯ぎしりが聞こえた。
怖い。
怖すぎる。
これは先輩と加藤さんの戦いのはず。はずなのに。
「いい?クリスマスに必ず渡すのよ!」
「はい……」
何で自分はこんな痛いことをさせられようとしているのだろう?
クリスマスは栞コレクションにプレゼントが確定しました。(涙)
いつもありがとうございます。
森川君の誕生日は以上で終わりです。
次は交換日記を挟みます。
※おりん…仏壇に置いてあってチーンと鳴らすもの




