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森川君観察日記  作者: 井上ぴこ
番外編
23/47

23.森川君の誕生日(3)

すみません、5日に更新できませんでした。

 「隼ちゃん!お誕生日おめでと~!!はい、プレゼント」

 昼休みが始まってすぐ加藤さんが森川君のもとへやってきた。

 今日も化粧はばっちりですね。美人です。素顔はブスって言うけれど、本当にブスなのかな?

 佐伯が言うくらいだからよっぽどアレなんだろうけれど、想像がつかない。

 

 加藤さんはご飯を食べようとしていた森川君へ何かを差し出す。

 「あー昼休みにブスの顔見るなんて飯がまずくなるんですけどぉ」

 遠くにいるのに聞こえる大きさで佐伯が言う。

 「あぁ!?うるさいんだけど、佐伯。ブスはあんたの隣にいる女でしょ?」

 何も言っていないのに飛び火が安藤に降りかかる。

 もう、本当災難だ。

 朝からせっかく選んできたプレゼントは欲しくないものでいらないものだったと遠回しに言われ、あげく鼻血を拭うのに使われて。

 森川君に同情なんかした私が馬鹿だった。プレゼントを選びに割いた時間を返してほしい。

 「安藤はブスじゃねぇよ。美人でもないが……」

 隣にいる佐伯までもが安藤の心を抉る。


 


 「っていうか、ブスと話しに来たわけじゃないの。はい、隼ちゃん開けてみて」

 安藤は一切話に加わっていないのに勝手に巻き込まれこの有様。

 

 加藤さんは森川君に向き直ると可愛く小首を傾げてプレゼントを手渡す。

 「俺、栞以外のいらない」

 断る森川君にちょっとだけ感動してしまった。本命以外から受け取らないは好感度高いよ。そういうのがイケメンには大事。

 まぁ鼻血を拭うのに使っているから結局は残念のままだけど。

 「絶対気に入るから~。隼ちゃん好きだと思うよ、こういうの」

 1回断られたくらいで諦めるわけがなく、加藤さんはしつこく食い下がる。

 「中身なに?」

 「開けたらわかるよ」

 森川君は安藤のことをちらりと見た。

 開けたいんですね、見たいんですね。開ければいいよ。さっきの感動返してくれ。

 「なぁなぁ、安藤。あのセリフ言ってよ」

 森川君のそばにいたはずの水石がいつの間にかやってきて安藤に囁く。

 あのセリフ?

 「『ひどい、森川君!私以外からはいらないって言ったのに。もう知らない!』」

 「ぶっ」

 水石が裏声(多分安藤の真似)で言ったため、佐伯がコーヒーを噴き出してしまった。机も悲惨な状態だ。

 田中、ごめん。

 そういえば田中も最近ついてないね。無理やり席どかされたり、コーヒーこぼされたりしてさ。

 その原因が自分(というより周りの奴ら)だからより申し訳なく思う。



 「………………」

 笑えない。

 冷めた目で水石を見るがちっとも反省していない。

 「おい、どこの三流ドラマだよ!安藤がそんな面白いこと言うわけないだろ」

 机をティッシュで拭きながら佐伯も呆れている。

 「でも言ってみたら面白いかも」

 「なー。森川慌てるぜー。見たいよなぁ」

 「どっちだよ!絶対言わないからね!」

 残念そうに2人が見てくるが絶対言いたくない。バカップルか!?気持ち悪っ!


 そんなやりとりをしている間に森川君は加藤さんのプレゼントを開けた様で、

 「なにこれ?」

 と不思議そうに尋ねていた。

 「あ、安藤が言わないから開けちゃったじゃん。せっかく面白くなるとこだったのに」

 「言わないから」

 「何もらったんだろ?俺、見てくるわ」

 「あ、私も見たい」

 佐伯と水石は加藤さんがあげたプレゼントを覗きに行ってしまい、安藤は1人席に残された。

 1人の方がかえって静かに弁当が食べられるので、もくもくと弁当を食べる。


 「うわっ!気持ち悪いな、お前!なんだよ、これ!!」

 「これは相当……」

 佐伯が大声で叫ぶので何事かと弁当を食べる手を休め、森川君たちがいる席を見た。

 固まっている森川君。引いている水石。腕に出た鳥肌をさすっている佐伯。

 何あげたんだろう、加藤さん。

 「気持ち悪くないでしょ!?本当に失礼な奴ね」

 「いや十分気持ち悪いだろ。森川も良くわかってなくて固まってるだろうが」

 「隼ちゃんに限ってそんなわけないでしょ!?感極まってるの!」

 「…………お前、その頭の中どうなってんの?」

 「本当失礼な奴!なんなの!?あんたは見なくていいし」

 「安藤、お前も見てみろよ。気持ち悪いぞ、これ」

 佐伯に呼ばれて気になってしまった安藤も森川君の席へ向かう。

 「ブスは見なくていいわよ!あ、でもせっかくだから見せてあげてもいいわよ。私とブスの違い見せてあげる」

 「マジで頭の中から違うってよくわかるわー」

 「うるさい、佐伯!」

 「………………なに見てるの?」

 「ほら、これだよ、これ」

 佐伯は安藤に見ていたものを手渡した。

 何だろ?アルバム?

 ノートくらいの大きさで中をめくれば、加藤さんが可愛らしい服を着て写っている写真の数々。

 何だろ?中身を見てもなんだか良くわからない。

 「ブスも驚いて声も出ない?そうでしょ。ブスには真似できないわよね」

 「誰も真似したくねぇな、確かに」

 得意げに笑う加藤さんに対し、頷きながら佐伯が呟く。

 「何?これ」

 「加藤コレクションだとよ」

 「加藤コレクション?」

 聞いてもピンとこない。むしろますますわからない。何これ?

 「加藤のとっておきの写真をコレクションしたアルバムだと。付き合ってもいないのに気持ち悪いよな」

 「気持ち悪くないでしょ!?私のとっておきなんだから、隼ちゃんも気に入るわ。それに今回は水着写真も入ってるの」

 自分で言ったのに照れてキャーと顔を隠す加藤さん。

 何か面倒くさいな、この人。

 「お前、水着とかよくなれるな。一歩間違えれば水に濡れて化粧ずり落ちてブス露呈じゃんか」

 この写真もちょっと化粧ハゲててブスじゃね?とさらに佐伯は付け加える。

 「!本当に失礼な奴ね!」

 「失礼なのはお前のすっぴんだろ」

 「うるさい!隼ちゃん、大事にしてね。じゃあ私行くから」

 「もう来るなよ、ブス」

 佐伯を無視して森川君に笑顔で手を振って加藤さんは帰って行った。


 「いやー、マジで気持ち悪いな」

 改めて写真を見ながら佐伯が言う。

 「これは相当ひどいね。罰ゲームでも嫌だな」

 武井君まで引いている。

 確かにひどいけど、そこまで言わなくても……。


 「俺、栞コレクション欲しい」


 今まで固まっていた森川君がポツリと聞き捨てならない言葉をこぼした。

 「栞もこれ作ってよ」

 「……………………もうタオルあげたからないよ」

 「じゃあタオル返す!」

 「残念ながら使ってしまったタオルの返品は承っておりません」

 「あー!残念」

 森川君は悔しそうにしているが、それ以上は言ってこなかった。




 まさかタオルを鼻血拭うのに使ってもらってて良かったと思うなんて思ってもいなかった。



いつもありがとうございます。


遅れてすみませんでした。

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