21.森川君の誕生日(1)
長くなったので2つにわけます。
「栞っ!23日か24日暇?」
「暇だと思うけど、どうかした?」
森川君がいきなりやってきて開口一番そう言った。どことなく緊張しているように見える。
「だったら、俺とどっか行こう!デートしてください!」
頭を下げて森川君は安藤にお願いする。
ちょっとやめてよー。これじゃ私がデートしたくないような人に思われるじゃない。
まぁ実際そうなんだけど。
2人っきりはちょっとなぁ。森川君が何しでかすかわからないし。
黙っていたらイケメン。何かやらかしたら残念。
「ってか森川、その日どっちも朝から夕方まで部活あるじゃん」
「!!忘れてた…………」
水石の華麗なる突っ込みによりその日のどちらかデートすることはなくなった。
「はぁ~良かった。デートとかハードル高すぎだし~」
森川君が自分の席に戻ってから安藤はほっと一息吐いた。
無理やり付き合うようになってまだ半月。デートとか早いよ。
3月までデートしなくてもいいと思っているくらいだ。清い交際でいたい。そして3月で別れたい。
「デートくらいしてやれよ。あいつヘタレだから多分手もつないでこねぇよ」
「それでもやっぱりまだ早い。嫌だ」
手をつないでこないって言ってもまだそれは早い。
安藤は今まで彼氏がいたことがないため、付き合ってどれくらいでデートして手をつないでそれ以上の関係になるのか正直わかっていない。
でも好きでもない森川君と何か間違いがあっては困るのだ。最初のデート、手つなぎ、キス、全部森川君になってしまったら嫌だ。
自分にも乙女な部分がある。はじめてはやっぱり好きな人がいい。
佐伯が森川君の立場に立つなんて珍しい。そう言うと
「安藤、森川の誕生日知らんの?」
と森川君の誕生日を教えてもらった。
「うそっ!今月の26日なの!?」
「そうだよ。観察日記の最初にプロフィール書いたんじゃねぇの?だから森川その前の休日に安藤とデートしたかったんじゃないの?」
ああ見えて純情だから凹んでるぞと佐伯。
「でも部活じゃん」
「まぁそれは仕方ないな。あいつがサッカー部なのがいけない。でもせめてプレゼント位買ってやったら?」
私だって森川は嫌いだが、誕生日にまであいつになんかしようとは思わないぞ。いつも馬鹿で残念なんだから。
佐伯がそこまで言うので、さすがに可哀想な気がして放課後プレゼントを買いに行くことにした。
*****
「買いに来たのはいいけど、何買えばいい?」
「知らん!聞くな」
駅ビルに買いにきたが、はたして何を買えばいいのか?
無理やりくっついてきてもらった佐伯に聞いても隣でマニキュア選びに夢中になっている。
ねぇ、これ売り場間違くない?
「佐伯。ここ化粧品売り場じゃん」
「私、マニキュア欲しいんだよねー。この色どうよ?」
テスターで全部の爪に塗り終わってから手のひらをかざして色をチェックしている。時々手の位置を変えて光の当たり具合で色がどう変わるのかまで念入りに見ている始末。
全部塗ったんなら買わなくてよくない?
「この色買うわ。待ってて」
気に入ったのか、佐伯はマニキュアを持ってレジへと行ってしまった。
佐伯が会計を終えて戻ってくる。
「つーかさー、あいつなら消しゴムのカスでも喜ぶんじゃね?」
「は?何が??」
戻ってきていきなりなんだ、消しゴムのカスって。
「森川だよ。安藤がくれるんなら何でも喜びそうな顔してんじゃん」
化粧品売り場から歩きつつ、適当にショップを見る。クリスマスまであと1か月を切っているからかディスプレイがそれ関係になっている。
赤と緑のコントラストやサンタ、トナカイ。こういうの見ているとそわそわするのは自分だけだろうか?と安藤はぼんやり思う。
「消しゴムのカスってゴミじゃん……」
「だーかーらー例えばだよ、例えば。安藤からなら何貰っても喜ぶって。犬だったらちぎれるくらい尻尾振るぞ」
森川君が犬……。
想像が容易にできる。
嬉しそうに尻尾を振りまくるおもちゃを与えられた犬。
「まーあ犬でも馬鹿だけどな」
「ああ、いるよね……」
自分の尻尾追いかけてぐるぐる回っちゃう犬。あれも度を越えていなければ可愛いが、回りすぎて吐く犬の方でしょ?絶対。
「馬鹿な方が渡す方としては楽だろ。お、あれいいんじゃね?」
佐伯が示したのはサンタクロースの可愛くない人形だった。
「いや、クリスマスまだだし。可愛くないし」
「絶対いいよ、これ!ひげ引っ張るとサンタが震えながらひげがもとの位置に戻るんだって!!」
どうやらひげが引っ張るレバーになっているようで、引っ張るとレバーが震えながら戻るらしい。
何だろうな。すごく嫌だ。人形が可愛くないうえにひげを引っ張るくらいならもうちょっと可愛いマスコットがいい。
たまに佐伯の趣味がわからない。
「あ、そういえばクリスマスどうすんの?」
サンタの人形が気になるのかひげを引っ張り戻っていく様子を見ていた佐伯が唐突に言った。
「!!」
これだけクリスマスの商品を見ていてまったく考えもしなかった。
そうか。クリスマスも恋人イベントか。
「なかったことにしたい」
「あーじゃあうちは敬虔な仏教徒だからクリスマスはないって言っとけ。信じるから」
ごめん、森川君。そういうことだからクリスマスもなしで。
聞かれる前から心の中で謝っておいた。
結局、何がいいかわからなかったので(サンタ人形は勿論却下した)、無難にスポーツタオルを買った。
いつもありがとうございます。
高校生が誕生日に何をプレゼントするかわからなかったので、ネットで調べたら髪の毛はどうでしょう?とあるサイトに載っててかなり引きました。
髪の毛なんてもらっても困ると思うんですけど……。相手を呪うんですか?
続きはちょっと遅くなるかもしれません。




