12.先輩、勘違いする
10月31日 晴れ
森川君の調子も良くなったみたいです。
イソジンの効果があったのでしょうか。
机に置くとき先輩のイニシャル付きのメッセージを添えておきました。
『のどが痛いようならうがいをするといいですよ』と。
最近、水道付近でイソジンを持った森川君が見られたそうです。
でもコップを渡すのを忘れてました。
先輩、気が利かない後輩でごめんなさい。
家に帰ってからうがいをしてくれたと思うことにします。
森川君なら直接口の中にイソジンを入れてうがいをしそうですが、さすがにそこまではしなかったと信じたいです。
調子も良くなったので、体育の授業もいつもより楽しそうでした。
今日はバレーをやったのですが、サーブをガンガン打っていました。
体育であれだけはしゃげるなんてすごいです。
明日はお休みですが、サッカー部は部活があるそうです。
また、風邪ぶり返さないといいですね。
―――――最近、安藤さんが書く内容が変わってきた。
前は1日行動がただの記録のように書かれていたのに、今はなんていうのかしら?
こう森川君の対して愛があるような……。
愛!?
真理は思わず椅子から立ち上がる。
まさか、まさかっ!
だから安藤さんの書く森川君がこんなにもイキイキとしているの!?
だとしたら、私はどうすればいいの?
森川君は好き。でも私が観察日記をつけてほしいと言ったから安藤さんは自分も好きだと言えずに森川君を見ているんじゃないかしら?
先輩を差し置いて森川君と付き合うなんてできない。それに私なんか人並みの顔だし、地味だから森川君の隣に立てない。釣り合わないもの……。先輩と森川君なら並んでも美男美女でお似合いだわ。とか考えて身を引いているんじゃないかしら!?
安藤さんの気持ちを無視してまで私は自分の気持ちだけ優先させていいの?
真理はしばらく考える。
森川君のことは大分わかってきた。
サッカー部の練習も試合も欠かさず見に行った。
けれど、森川君は自分のことなんか知らない。
ずっと見てるだけ。
見てるだけでも満足なのだ。
森川君が笑って部活に精を出している姿を見ているだけで……。
安藤さんにお願いして森川君のことを教えてもらっているけれど、それがなくても部活を楽しそうにしている森川君を見ているだけで十分だ。
ああ、なんだ。
気づいてしまった。
自分は森川君が好きだが、付き合うまでにならなくてもいいということに。
森川君の隣に自分も認める素敵な子がいてくれればそれでいい。
「そっか」
そう気づいたら不思議と笑みがこぼれた。
もうすぐ自分は高校を卒業する。
推薦入試も近い。
だったら、卒業までに森川君と安藤さんに付き合ってもらわなきゃ!
安藤に対して激しく勘違いをした先輩が行動を起こすのは翌週からである。
読んでいただきありがとうございます。




