10.安藤、キューピッドになる
「安藤、日記の調子はどう?」
にやにや笑いながら佐伯が話しかけてきた。
安藤は「別になんともないよ」と苦笑して答える。
「またまた~。知ってるんだからね。この間、森川の机にこっそりテスト範囲置いたりのど飴置いたりしたんでしょ?」
「マジ、何で知ってるの!?」
「水石が見てたっぽいよ」
安藤の顔から血の気が引く。
どうしよう。私が森川君のこと好きみたいに思われたら。
そしてそれを森川君に言われたら。
で森川君が「安藤が?無理。俺安藤の顔タイプじゃねぇし」とか言って勝手に振られたみたいになったら……。
それ、超困る!
「ぶっ」
安藤の様子を見ていた佐伯が吹き出す。
「ちょっと!笑い事じゃないよ」
「大丈夫だよ。水石には私から事情教えたから。森川は馬鹿だから気づいてないし」
その一言を聞いて安堵の息が漏れる。
「でも最近、ずいぶん積極的じゃない?まさか恋し」
「あー絶対ないわ、それ」
佐伯が言い終わる前に安藤は答えをかぶせた。
確かに最近の自分は日記を書くのも積極的になったと思う。森川君のささいな変化にも気づけるようになった。
だが恋心なんて芽生えもしない。種すらない状態なのだから仕方ない。
ただ。
「最近ね、気づいたのよ」
佐伯が不思議そうな顔をして安藤を見る。
「先輩と森川君がうまくいったら、私がこんなことしなくて済むじゃん。だから前より頑張ろうかなって」
「あぁ~」
「先輩の代わりにこっそりのど飴置いて『体調管理に気を付けて』とか先輩のイニシャルでメモ書き置いたりとかしてんのよ」
「あんたそこまでやってたの!?」
「そうだよ。お昼ご飯に野菜がほとんどないようなら野菜ジュース置いたりもしてるし」
「それストーカーじゃん!」
「観察させられてる時点でもうストーカーみたいなもんじゃん。好意はないけど」
どこか諦めた目をしている安藤を佐伯はさすがにかわいそうだなと思った。
でも、と同時に佐伯は思う。
安藤の行動が裏目に出ないといいんだけど……。
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