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神とアンドロイドの春  作者: 大葉真琴
一話 エピローグ
6/14

私の妹になりなさい

病院での生活はわたしに取っては地獄だった。

神世庁の病院の設備と食事は最高のモノだったが、足をギブスで固められ、ベッドから降りることも許されないことの穴埋めにはならなかった。

テレビは退屈で、退屈で、退屈だった。

始まったばかりの高校生活に早く戻りたくてわたしは毎日、毎日、いつ退院出来るのか医者を問い詰めた。その度に医者は首を振りわたしの前から逃げ出した。

琴音は約束通り見舞にやって来た、ちゃんとアマンドのシュークリームを持って。

清楚なワンピース姿がとても可愛かった。だが琴音の顔はなにやら落ち込んでいるようだった。

「ありがとう、ちゃんと来てくれて」

「約束しましたから・・・具合はどうですか?」

「退屈で、退屈で丁度話し相手が欲しかったのよ、ここ座って」

「はい」琴音は居心地が悪そうに、椅子に腰掛けた。

「なんだか、今日は堅いわね」

「私こういう風に、一人で出かけるの初めてで、それに何だかこの服頼りなくって」

「あら、似合っているわよ」

「マリコさんが届けてくれたんです。私支給品以外の服持っていないので」

「わたしがマリーに頼んだの、届けてくれるように」

「そうなんですか、ありがとうございます」

「それ、亡くなったお母様が気に入っていた服なの、ちょっと流行遅れだけど」

「そんな大事なモノ、お返しします」

「ダメよ、それはもうあなたのモノだから」

「いいんですか?」

「もちろん、そうじゃなかったら態々(わざわざ)届けさせたりしないわ」

「それじゃ頂いておきます、大事にします」

「そうして、お母様も喜ぶわ、さあ、シュークリームを食べましょう」

 琴音はまるで爆発物を見るような目でシュークリームをたっぷり30秒分析してから、口に運んだ。

「おいしい!」

琴音はこの部屋に入ってから初めて笑顔を見せた。

「お店ちゃんと分かった?」

「はい、それもマリコさんが場所を教えてくれて、私、お店で買い物をするは初めてで、任務より緊張しました」

「ごくろうさま」

「そうだこれお返しします。マリコさんがお店の支払いに使うように渡してくれたんですけど、これを出したら何だか店員さんの態度が変わって変でした」

それはそうだ、琴音が出したのは神世庁の法人クレジットカード、上限なしのブラックカードだ。

「それにこれ名前が、KOTONE SHINATUになっていて」

「持っていなさい、これから必要になるから」

「また、お見舞いに来いってことですか?」

わたしは笑いで、吹き出しそうになるのを(こら)えて言った。

「そうね、当分通ってきて」

「えぇ、そうですね、私この間の失敗で任務を外されてしまって、時間だけはありますから」

「まあ、琴音頑張ったのに」

「頑張ったのは静音さんです、私なんにも出来なくって」

「そんなことないわ、琴音がいなかったら、今頃世界は無くなっていたんだから」

これは本当だ、火之保倉神(ひのほぐらのかみ)のワームは軍事施設まで進入して、ミサイルのスイッチに手を掛けていたのだ。あと30分遅れていたら、世界中でミサイルが飛び交っていただろう。

この後、わたしはシュークリームを頬張りながら、面会時間が終わるまで落ち込む琴音を励ました。明日はエクレアのリクエストを持って琴音は帰って行った。

よしよし、マリーは順調にミッションを遂行しているようだ。


わたしはその後の時間をマリーのまとめてくれた今回の報告書に目を通して過ごした。

火之保倉神(ひのほぐらのかみ)は既に、高天原(たかまがはら)に送還されていた。

佐久間仁史は国際連合警察の取調べを受けているそうだが、全面否定しているらしい。

国際連合警察の調査でも、社会性に欠けるもののサイバーテロを起こすようなタイプではないらしい。ネットワークエンジニアとしては一流で天才肌というやつらしい、その分対人関係においてやや問題があるようだ。自分の言うことを理解できない人間はアホに思えるというタイプだ。

神が憑神として地上に落ちるのは様々(さまざま)な理由があるが、多くは神の社会で適合できなかったことが原因だ。神といえども、その全てが優れた精神の持ち主というわけではないのだ。神々が天上に戻ったのも、そうした荒ぶる神々が人間社会を壊さぬよう一線を引くためもあったのだ。

憑神による犯行は通常、憑神の気質と憑かれた人間の憎しみが混じって行われる。憑神は地上に降りるとき、自分の気質に近い人間を選び取り憑く。多くは社会からドロップアウトした人間達だ。そして二つの精神が合わさって、一つの意思となり罪を犯す。

が、今回の場合、佐久間仁史は隣人としてはあまり好ましくないタイプだが、それなりの社会的ステータスを持った人間であり、自分の仕事にはプライドを持っていた。破壊活動に走るタイプではない。すると、火之保倉神(ひのほぐらのかみ)が明確な目的意識を持って、佐久間仁史にとり憑いたと考えるべきだろう。

だがなぜ火之保倉神(ひのほぐらのかみ)はサイバーテロを起こし、世界中にミサイルを降らしそうとしたのだろうか?わたしは報告書にサインをしてマリーに送り返した。あとは高天原(たかまがはら)の調査で明らかにされるだろう。

それにしても最近、神世界の動きは異常だ、神やそれに類する者達が原因と思われる事件が頻発している。これは何かの予兆なのだろうか?


次の日、病室に現れた琴音の顔は怒っていた。律儀にエクレアを買ってきていたが。

「静音さんお話があります」

「ええ、何かしら」

「今日、私、寮を追い出されたんです」

「それで?」

「場所を教えられて、そこに行けって」

「うんうん」

「そしたら、そこ静音さんの家じゃないですか」

「ちゃんとマリコが部屋へ案内したでしょう、部屋が気に入らなかった?」

「いえ、今まで住んでいたところより凄く広くて、部屋にシャワーまで付いて、服も色々用意してあって、ビックリしました」

「足りないモノがあったらマリーに言ってくれればいいわ」

「ありがとうございます」

「じゃあ、エクレアを食べましょう」

伸ばしたわたしの手から素早くエクレアを待避させ、琴音は続けた。

「それで、どうしてこうなったのか説明して下さい!」

 断固たる態度でわたしを見下ろす琴音に、わたしは瞳を潤ませ哀願するように言った。

「琴音わたしが嫌い?」

 わたしの涙に狼狽(ろうた)えた琴音は声のトーンを落とした。

「そんなことないです、ただ説明して欲しいだけで」

「じゃあ、わたしのこと嫌いじゃないのね?」

「はい」

「わたしのこと好き?」

「ええ、好きです」

「じゃあ、家を出て行ったりしない?」

「ちゃんと説明をしてくれれば・・・」

「そうね、ちゃんと説明するわ、勝手に話を進めて悪かったとは思っているの、それは信じて」

「はい」

「じゃあ、先ずは座ってゆっくり話しましょう」

わたしは琴音の持ってきた、エクレアぱくつきながら説明を始めた。

「まず、あなたとわたしの関係から説明するわ、わたし達、似ているって言っていたわよね」

「はい、じゃあやっぱり静音さんがモデルなんですか?」

「いいえ、でもかなり近い、あなたのモデルはわたしのお母様なの」

「えッ、それでわたしにお母さんの服を・・・でもどうしてテクノイドのモデルに」

「あなた自分がカスタムメードモデルだってしっている」

「はい、でも試験機の払い下げだと思っていました」

「いいえ、これから話すことを聞けば、なんでわたしがあなたと一緒に住みたいと思ったか分かって貰えると思うの」

「はい、聞かせて下さい」

「お母様が亡くなった時、わたしはまだ十歳だった」

「・・・」

「お母様は元々体が弱い人で、まだ小さいわたしを残して逝ってしまうことをとても心配していたの」

「優しい方だったんですね」

「ええ、とっても。そこでお母様は、わたしに姉妹がいればわたしの心の支えになるのではないかと考えたの」

「はい」

「でも、もちろん、実際の子どもは無理だから、自分のDNAから半生体テクノイドを残そうと考えたの」

「それが、わたしですか?」

「そう、でも続きがあるの。あなたが来る前に、お母様は亡くなってしまって、あなたのことをしった叔父が勝手にキャンセルしてしまったの、それであなたは試験機として実験用に回されたの」

「まあっ」

 え、話が違うって?誰が自分はいらない子だったって教えて欲しい?人間誰しも自分は望まれて生まれてきたんだって思いたいモノよ。テクノイドだってそう、だってそれが自分の存在理由の始まりですもの。

叔父さんを悪者にすることはない?あるのよ、その理由が。わたしはそれを知ったとき、半ば怒り、半ば呆れたのだ。叔父は琴音をキャンセルするとき、違約金を払う代わりに、メーカーが用意したお母様のDNAを使用した半生体テクノイドを作成し、販売することに同意する書面にサインをしていたのだ。

DNA情報は個人情報として厳重に守られている。メーカーにとって美人だったお母様のDNAはとても魅力だったに違いない。

その後、実在の人間をモデルとしたテクノイドの生産、販売を禁止する法律ができなければお母様の顔をしたテクノイドが街に溢れていたかもしれないのだ。いやきっと溢れていただろう。癒し系美人のお母様の魅力は男女を問わず、人々を魅了し大ヒット商品に成ったに違いない。

叔父はろくに書類も確認せずメーカーの口車に乗ってサインをしたのだろう。叔父は良くも悪くもお坊ちゃまで、世間の荒波に揉まれたこともない。見せかけの善意の後ろに隠された悪意など思いもよらないのだ。

叔父に悪意がなかったにせよ、わたしはこのことで腹を立てていた。だから叔父には悪役をやって貰うことにしたのだ。なに、そのおかげで琴音に会えたって?それとこれは別の問題だ!

「母様がわたしに妹を残そうと考えていたことを知ったときには、あなたの居所は分からなくなっていたの。メーカーには担当者が退社したとか言われて。まだ子どもだったから、わたしもメーカーがあなたのことを隠すとか、そういうこと考えもしなくって」

「そうだったんですか」

「そう、でもお母様の考えを知ったときから、あなたはわたしの心の中にずっと居たの、わたしに姉妹がいたら、どうだっただろうって考えない日はなかったわ」

「そんなにわたしのことを考えてくれていたんですか?でも最初会った時なんだか怒っていましたよ」

 おっと。

「ええ、そうね、あなたが武装警官(AP)を()らされていることに腹が立ったの。それに、わたし初任務で緊張もしていたし、混乱していたのね」

「静音さんの気持ちは分かりました。でも私、武装警官(AP)としての仕事に誇りを持っているんです。だから出来れば・・・」

 さすがは我が妹、芯がしっかりしている、泣き落としだけでは落ちないか。

「もちろんあなたの気持ちも分かるわ、わたしも自分の仕事には誇りを持っているから」

「分かって、貰えましたか」琴音の顔に笑顔が戻ってきた。

「でも、わたしの姉妹であることと、仕事は両立できると思うの、どうかしら?」

「・・・そうですね、たしかに」

「実は今回の一件で、わたしの所属する組織と、国際連合警察の間に連絡員を置こうと言うことになって、それをあなたにお願いできないかと思っているの」

「連絡員ですか?具体的にはどんなことをするんですか?」

「仕事の内容は、あなたが承諾してくれないと話せないの、機密事項に触れることになるから、だから先にあなたの返事が欲しいの」

「う~ん、私がお断りすれば、元の職場に戻れるんですか?」

「もちろんよ、あなたの意志を尊重したいから無理強いはしないわ、でも大事なことだから、よく考えて欲しいの。そうね2、3日考えてから返事を頂戴、その間はあなたが元の職場に戻れるように開けて貰って置くから」

「分かりました、じゃあ考えてみます」

「ありがとう、良い返事を期待しているわ。じゃあ。お母様のこと知りたくない」

「はい、ぜひ知りたいです」

その後、わたし達は、お母様のことを語りあった。


琴音にはこう言ってものの全ての段取りはこの時もう終わっていた。

メーカーとは琴音の所有権に付いて、すでに話がついていた。法的には叔父がお母様のDNAを管理する立場になかったことから、叔父との間に交わされた書類が無効で有ることを訴え、国際連合警察への払い下げは、実在の人間をモデルとしたテクノイドの販売を禁止する法律に抵触することを指摘した。

メーカーが琴音の所有権がわたしに有ることを認めれば、わたしはメーカーが国際連合警察へ提供する別のテクノイドについてその費用を負担する意志があること伝え、さらに認められない場合には株主総会にて株式の37%を保有する大株主から、この件に関する追求と役員の解任決議を受けることにもあり得ると付け加えた。

メーカーからはすぐに非を認め、謝罪と共に所有権を認める連絡が来た。国際連合警察の上層部には神世庁を通して根回しを行い既に承諾を得ていた。

連絡員の話は本当で、今回の一件から、国際連合警察、神世庁ともに協力を強める為、連絡員を置くことを決めている。国際連合警察からは、わたしの希望で琴音の警察官としての籍をそのまま残し連絡員として手元に置くことに為っている。

マリーに細心の注意を払い監視し、横槍が入らないように必要があれば介入するよう言い含めてある。


ここまでしても琴音の意志を尊重するというのは本当だ、琴音がNOと言えば全て白に戻すつもりだ。

つもりなのだが・・・そう考えると私の心は沈んだ、お母様がなくなったときの悲しみにもにた喪失感が私を襲う。

わたしの成長は二十代前半でほぼ止まる、その為、わたしは学生時代の友人という大切なモノを持つことが出来ない。いつまで経っても年を取らないわたしが十年、二十年経って事情を知らない友人に会うことは出来ないのだ。

わたしは人生には腹心の友が必要なのだ、それが双子の妹となれば最高だ。ずっと私の人生に欠けていたものを琴音は埋めてくれるだろう。


私は物事を運命に任せるなどしない、運命に任せていては何事もなせはしないのだ。

琴音の意志を無視しても私の手元に置くべきだ、最初は無理やりでも琴音もいずれは分かってくれるだろうとの思いもあった。

だが私は最後の判断を琴音に託した。

全く私らしくないことだと思いながら狂おしい思いで琴音の返事をまった。


二日後、琴音は連絡員としてわたしの元に残ることに同意した。

琴音がどのような思いで同意してくれたのかは分からないが私の琴音の決断を感謝し琴音を大事にしようと思った。

私の新しい家族、天界に登ったおばさまを除けば私のたった一人の家族。

私は家族を得たのだ!



入院六日目、わたしは念願のインプラント端末の移植手術を受けた。

インプラント端末が登場したのは、今から十年ほど前だが、当初インプラント端末への依存症が問題となり、法律でその使用が厳しく制限される事となった。未成年への医療目的以外での移植は原則禁止されているし、成人に関しても、職務上必要と認められ、且つ事前のカウンセリングを受け、十分な検査を受けた上で許されることとなる。

この為、わたしもインプラント端末の移植を行っていなかったのだが、火之保倉神(ひのほぐらのかみ)の一件で、守神子(まもりみこ)にもインプラント端末が必要と神世庁で判断され、わたしの要望が受け入れられた。法律的な問題は大人の世界の話し合いでクリアーされたようだ。

わたしに用意されたインプラント端末は最新の生態型で、わたしの成長に対応出来る事と、スキャナや金属探知機で感知されないように配慮され結果だ。埋め込みは簡単なカテーテル手術で行われ、十分ほどで頸の後ろにインプラント端末が納められた。ただし、直ぐに機能するわけではなく、インプラント端末が機能を開始するのは四、五日掛かるそうだ。

この日は手術のため琴音とは会えなかったのが寂しかったが、わたしの超人的な快復力と、最新の医療技術の結果、三日後には退院できる事を知らされて心は弾んだ。明日にはギブスも外してもらえるそうだ。本当にわたしの体は丈夫に出来ている。インプラント端末の調整は自宅のメディカルルームで可能だとマリーが保証してくれた。

こうなると、琴音の教育を急がねば、わたしは琴音に渡す雑誌とビデオのリストをマリーに知らせた。任務のために必要と言えば琴音は一生懸命憶えようとするだろう。

既にマリーによって志奈津琴音の戸籍は作られていた。これから琴音はわたしの双子の妹として生活することになる。高校への編入手続きも問題なく行われていた。琴音は語学留学していた所を、わたしの看病のために急遽、留学を切り上げ戻って来たことになっている。わたし自身は階段で滑って怪我をしたことになっていた。


三日後、わたしは予定通り退院した。わたしは迎えに来てくれた琴音と、石田の運転する車に乗ってロフトに戻った。わたしは一目散に中庭の樹に向かいその根本に腰をおろした。木の温もりがわたしを癒してくれる。琴音はわたしの横で樹に手を触れている。

「静音さん、これが神世界の樹ですか?」

「名前は呼び捨て、敬語は禁止!姉妹ってことを忘れないで」

「そうでしたすいません」

「『ゴメン静音』はい繰り返して」

「ゴメン静音」

「そう、樹はどうやら琴音を気に入ったようね」

「樹に感情が有るんですか?」

「・・・」わたしは琴音を睨んだ。慌てて琴音は言い直した。

「樹に感情があるの?」

「この樹にはね」

「きゃ」

「どうしたの」

琴音の手には一本の線が浮き出ていた。飾りの付いた槍の柄のようにも見えるが、矛先がなかった。

「私なにか悪いことしたんでしょ・・・したの?」

「いいえ、どうやら樹からの贈り物のようね」

「これが?」

「わたしの八束の剣(やつかのつるぎ)と同じようなものだと思う・・・でもまさか・・・」

「なに?」

「ちょっとまって」

わたしは樹の幹に両手を回し、耳を樹に付けて声を聞いた。樹はゆっくりとわたしに語った。

『・・・さかほこ・・・あまのさかほこ・・・』

その答えは、わたしの予想した通りだったが、それでも衝撃を受けずには居られなかった。それはずっと昔に失われた、天逆鉾(あまのさかほこ)(つか)だった。

だが同時に合点(がってん)がいった、天逆鉾(あまのさかほこ)(つか)は樹の太枝から作られたのだ。樹がずっと持っていたのだ、だが今それが、琴音の手に渡されたのは何故だろう?

樹はそれ以上語ろうとしなかった。

「なにかわかりました?」

「それは高天原(たかまがはら)でずっと失われていた神器の一つなの、正確にはその一部ね」

 かつて伊弉諾神(いざなぎのかみ)伊邪那美神(いざなみのかみ)天逆鉾(あまのさかほこ)を使って葦原中国(あしはらのなかつくに)、日本を作った。

天逆鉾(あまのさかほこ)は創世の神代(かみよ)の神器であり、高天原(たかまがはら)でも最も重要な神器だ。

「それって、大切なモノなんじゃ、お返しします」

「そんな簡単にはいかないわ、樹がずっと神から隠していたモノをあなたに与えたのなら、それは意味があることなのよ、何か大切な・・・必要があることなのよ」

「わたしに何かしろってことですか?」

「さあ、それは分からないわ、樹はこれ以上語る気はないみたいだから」

狐につままれた様な顔をする琴音に、わたしは木の根元に座るように即した。

わたし達は、マリコの運んでくれた飲み物を飲みながら樹の下で小一時間を過ごした。

立ち上がった時にはわたしの体には力が漲っていた。明日から再び始まる学園生活に心が躍った。わたし達はその日、遅くまで琴音の敬語を直すために特訓をした。

1話の後日談&2話の序章です。

この話は静音の子供っぽく、手段を選ばない強引なところが出ていて、大葉はニヤニヤしながら書いたのですが、人によっては静音のダークな部分が受け入れ難いようで、好き嫌いが分かれるようです。


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