日々
三題噺もどき―きゅうひゃくよんじゅうに。
学校前の公園で、ブランコが揺れている。
公園に人影はなく、ブランコに乗っている人も居ない。
こんな昼間に遊ぶ人はあまりいないだろう。
「……」
校門沿いに並ぶ桜の木も風に煽られている。
外を歩く生徒は前を向くのがなかなかに難しいようだ。
―風が強すぎるせいで。
「……」
女子は前髪が上がらないように必死に抑え。
スカートが舞い上がらないように必死に抑え。
それでもどこか楽しそうにどこかへと向かう。
「……」
男子はなんだか、犬か何かのようにはしゃいでいる。
生憎声までは聞こえないが、楽しそうであることに変わりはない。
そのままボールがどこかに飛ばないように気をつけていただきたい。
「……」
時折ガタガタと揺れる窓に、飛びやしないだろうなと不安になる。
そんなことで壊れるような窓ではないと分かっているが。
先日、廊下の窓が割られるという事件があったから、不安にもなる。
……ちなみにあの窓は、連休中も働いてくれるありがたい会社でもあったのか、休み明けには綺麗に直されていた。いったいいくらだったんだろう。
「……」
壊した本人たちは、変わらず校舎の近くで遊んでいるらしい。
時折教師の声がどこかから聞こえてくる。
なんというか……学習能力の問題でもないような気もするが、頭がお悪いのかなと思う。
「―これ食べて良い?」
「ん、どーぞ」
まぁ、そんな興味もない上に、一度も関わることのないような生徒の事はどうでもいい。
今は、大事な、昼休みの時間だ。
私が学校にくる理由の第一位だといっても過言ではないむしろそれ以外にない、と思えるほどに大切にしている、大事な、愛しい時間だ。
「これ、うま」
「そりゃ、よかった」
机を挟んで、いつものように、二人並んで座っている。
今日の髪形は、ハーフアップにしている。時間割を見れば、体育はない。
さらりと、頭が動くたびに流れる、綺麗で、真黒な髪。
「もう一個頂戴」
「どうぞw」
細く、すらりとした、指先で。
小さめのクッキーをつかみ。
薄くて小さな口に運んでいく。
「全部食べそう」
「たべていいよ」
一口サイズのクッキーだという事もあって、冗談抜きでパクパクと食べていく。
相当気に入ったようで何よりだ。今度見つけたらまた買っておこう。
初めて買ったお菓子だったが、あたりのようだし。
「――も食べなよ」
「えぇ、はいw私が持ってきましたからw」
「それはそうw」
くだらない。
誰も興味もないような。
誰もが一度は経験して、忘れていくような。
他愛もない会話や仕草や声。
そのどれもが。
「……」
愛しくて。
大切で。
離し難くて。
忘れ難くて。
「……」
忘れて行って。
離れて行って。
他の大切を作っていく。
「……」
「……」
「……」
「――、どしたん」
「……、なんでも……ってホントに全部食べたなw」
「いいよって言ったからw」
―最近はやけにぼうっとしていけない。
心配をかけないためにもしっかりしなくては。
私のことなんて、すぐ忘れてしまうんだから。
お題:桜・クッキー・ブランコ




