表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
駄菓子錬金術で世界を救う⁉ 見習いアンティの奮闘記  作者: うどん五段
第一章 私の居場所は【錬金術工房クローバー】
9/32

第9話 中級ポーションは炭酸ジュースな味がする

ブックマーク、評価、感想、誤字脱字報告ありがとうございます。

 モルダー君の一件から数日後、やはり風邪は街に蔓延し始め、私はポーション作りどころではなくなった。

 それでも、小さい子供さんが甘いお薬で助かるのならと、頑張ってアイテムを作った。何より甘い系の薬は私しか作れないので、必死になって作った。

 精霊さんたちにも頑張ってもらい、一日が終わる頃、ひとりずつに子供用粉ポーションをあげて労う。


「ふう……」

「お疲れだな」

「風邪がこんなに早く蔓延するとは思わなかったわ」

「町医者も今大変な状態らしいねぇ……。錬金術のアイテムで治るなら、そっちを優先してほしいって言ってるくらいじゃよ」

「たちの悪い風邪が流行り始めたのかしら?」

「俺達も注意しないとな」

「ええ、そのためには毎日ポーションを飲まないといけなくなるけど」

「初級ポーションでも、効果はあるからありがたいねぇ……。特に、甘いのだとねぇ?」


 お婆ちゃん……疲れているのに更に作れと。

 思わず苦笑いしつつも、私は再度精霊さんたちにお願いして、ポーションを三本作った。それをひとり一本ずつ飲んで、風邪に負けないようにするのだ。


「でも、ポーション飲んでても風邪にはかかるのね」

「いや、ポーションの苦さはまだアンティにはわからんじゃろうが……」

「薬草臭くて苦いんだよ……」

「ああ……それで」

「うちの店を知ってる人たちは、アンティの初級ポーションを大量に買っていくじゃろう?流石にひとりにつき家族分までにしたがの」

「大量に買い占める客もいたものね」

「あの大量に買い占めに来た客を止めたが……。あの男、ロバーツ商会の男じゃないか?」

「ああ、この街の商会で働いてる男だったね。うちと契約したけりゃ、ちゃんと筋を通しな‼……と、アタシが怒鳴りつけたら悲鳴あげて逃げていったよ」


 流石お婆ちゃんである。

 ロバニアータに目を付けられたら、商会に錬金アイテムが売られず大打撃だろう。

 とは言え、ロバニアータの錬金アイテム。つまり【錬金術工房クローバー】の商品というのは、特殊な判子を押しているため、偽装もできないんだけどね。

 偽装をしていれば、錬金術学会が黙ってはいないだろう。


「アンティの作った商品にも、うちの判子を付けてるからね」

「ありがとうお婆ちゃん」

「でも、流石にもう錬金術師の卵からは、少し進んで、ひよこくらいにはなったんじゃないか?」

「あはは!ひよこくらいにはなってると思いたいな!」


 そう言いつつグイッとポーションを飲みきり、私達は気合を入れる。

 明日も朝から大変そうだし、もしかしたら夜中に担ぎ込まれる子供もいるかも知れない。各自覚悟を決めて、暫くは日々を過ごさないといけないのだ。


 ――そんな日々が二週間ほど続いて、風邪も少しずつピークを過ぎた頃、私はようやくポーション作成に挑むことにした。

 あれから少しまたスキルが上がって、今なら中級ポーションくらいは楽に作れそうなレベルになっていたのだ。



 ◇◇◇◇



「さて、と。念願叶って中級ポーションだわ!」

「頑張れよ」

「ありがとうピエール。よーし、頑張りますか!精霊さんたち、手伝ってくれる?」

『初めての中級ポーションだね!』

『そこまで育ったんだねぇ……』

『ワシは嬉しいぞい……』

「もう、みんなしみじみしないで~? 私のためにも力を貸してほしいの。お願いね?」


 こうして、いつもの手順通りに、中級ポーション用のアイテムを使い錬金していく。

 少し時間が掛かるのは最初の一歩だからこそ。

 シュワンシュワンと音を立てつつ金に光るのは、私の魔力の色らしい。

 お婆ちゃんは虹色のオーロラで、ピエールは銀の光だ。

 各自違う魔力の色を持っている。


 シュパン‼ と、気持ちの良い音と共に金の光が落ち着くと……コトン、と机の上に中級ポーションが落ちる。

 鑑定しても、やはり中級ポーションだった。

 でも……。色合いは初級ポーションと同じ色合いで、瓶の色が若干違う程度。

 試しに振ってみると、炭酸のような気泡が出た。これは――もしや‼


「炭酸ジュース?」

「なんだい?炭酸って」

「飲むとシュワシュワッと口がするんです」

「シュワシュワッと?」

「飲んだらわかると思うわ。お婆ちゃんとピエールお願いできる?精霊さんたちも飲んでみて」


 こうしてピエールがアイテムボックスから紙コップを取り出すと、みっつ取り出し中級ポーションを入れていく。

 そして二人と精霊さんたちが飲むと――。


「うわっ‼本当にシュワッとするな」

「いや、でも喉越しは爽やかじゃよ?」

『しゅわしゅわびりり……』

『癖になりますわ!』

『シュワッとしてピリッときて、スッキリするんじゃなぁ……』

『こう……喉にクッてくるよね』

「味は……美味しい?」

「「美味しい」」

『文句なしだね‼』


 その言葉を聞いてホッとする。

 良かった、炭酸が苦手って人もいるからどうしようかと思った。

 それに、この世界では「炭酸飲料」というものは存在しないから、どうしようかと不安にもなったのだ。

 でも、飲めるのなら良かった。

 苦手な人には申し訳ないけど、初級ポーションで我慢してもらおう。


「俺はこれ、癖になるな」

「アタシも気分がスッキリするから好きだねぇ」

「良かった‼」


 炭酸ジュースは今後うちの店の商品として出すことが決まった。

 とは言え、買い占めということが起こらないように、家族分のみ販売、という形を取るけれど。

 小さな街なので、大体の人の顔と家族構成は知っている。

 これで嘘をつく人がいることは無いとは思いたい。


「瓶の蓋の色が違うから、中級と初級は見分けがつくな」

「そうだね。普通のポーションやMPポーションもそうなんだよね?」

「そうじゃよ。色がついていないからね。蓋の色で皆は区別しているのは確かじゃよ」

「なら問題なさそう」

「MPポーションになると瓶の形も変わるからな。それでポーションとMPポーションの違いはわかる」


 確かに。

 ポーションは丸い瓶に対し、MPポーションは三角形だ。

 急いでいても手に取った形で判別できるようにしているらしい。

 冒険者が使うことが多いから尚のことそうなったのだとか。


 冒険者か~。

 いつか、冒険者用のアイテムも作ってみたい。

 まだレベルが足りないから作れないけど。


「取りあえず、今日はこの中級ポーションを多めに作ってみるわ」

「ああ、そうしておくれ」

「俺は、城に納品する用のポーションを作るか」

「でも、そろそろ薬草とか素材が切れそうだね。アニーダ薬草店には連絡は?」

「してあるよ。近々届けに来るそうじゃ」

「良かった!」


 〝アニーダ薬草店〟とは、この街にひとつしかない薬草店で、冒険者もしている店長が、薬草を摘みに行ってくれる。

 さらに言えば、アニーダさんちは家族全員冒険者をしていて、皆で手分けして薬草を手に入れてくるのだ。

 無論、先に話のあった〝ロバーツ商会〟も薬草を取り扱っているけれど、やはり質が違う。アニーダ薬草店のほうが質も物もいいので、我が家はそちらと契約をしているのだ。


 それに、ロバーツ商会はあまり好きじゃない。

 色々取り揃えてはいるけれど、たまに街でロバーツ商会の前を通ると、いつも罵声が響き渡ってる……。

 あんまり商会上手くいってなさそうっていうか……なんというか。

 ワンマン社長って前世でもいたけど、それで上手くいくことの方が、あの時代には少なかった気がする。

 この世界でも同じことが言えるのかも知れないわね。



 ◇◇◇◇



 それから数日後――アニーダ薬草店から、コウジという青年がやってきた。

 アニーダ薬草店の長男さんだ。


「よう、アンティ。今日も超絶に可愛いな‼」

「お世辞でもありがとうございます!」

「ははは!サラッと受け流されちまったや。そこがまた良いんだけどさ。それと、これが今回頼まれてた品の薬草たちだ。全部新鮮だし手入れも怠ってないぜ」

「うん、鑑定してるけど、どれも最高の薬草だね!」

「だろう⁉アニーダ薬草店はそこが売りなんだよな!どこぞの薬草店モドキとは違ってな!」


 ロバーツ商会とアニーダ薬草店は仲が悪い。

 というのも、ロバーツ商会の薬草部門は、質の悪い薬草を高く売りつけるという感じで、錬金術師や町医者からも嫌われているのだ。

 薬草に関してはプライドを持っているアニーダ薬草店からしてみれば、許せないことなのは理解できる。

 それに、私もあの店嫌いだしね。


「そういや、アンティが婚約したって話聞いたけど、マジで?」

「マジよ」

「うは、誰だよそんな幸運掴んだ男」

「ここにいるが?」

「お前かよ‼」

「知り合い?」

「まぁな」


 なんでも、ピエールがお婆ちゃんの弟子になった頃に知り合ったらしく、年も近いらしい。コウジさんはピエールをじっと見つめて「マジうらやまー」とぶすくれていた。


「俺もアンティ狙ってたのになぁ……」

「そうだったの?」

「そうだったのよー?」

「でもゴメンね~?もうピエールと婚約したから浮気はしないのー」

「だよなー? ちぇ……。もっと早く言うべきだった。最近街ではアンティの婚約で、男どもの話題持ちきりだぜ?」

「そうなんだ」

「〝幸運男に触ったら御利益あるんじゃねーの?〟って言っておいたら、皆本気にしてたわ」

「余計なことを……コウジ、お前は本当に余計なことしかしないな‼」

「うるせー!少しは幸運分けろ!この豪運野郎‼」


 と、男子同士でギャイギャイやってる。

 ピエールもこうしてみると年相応の感じがして新鮮で好きだわ。

 何時も私相手だとお兄ちゃんぶってるけど、あれかな? 婚約者には良いところを見てもらいたい……みたいな感じなのかな?


「ともかく、沢山薬草を持ってきたんだからな。しっかり良い商品作れよ!」

「言われなくとも……っ!」

「それと、アンティ」

「なに?」

「うちのアニーダ薬草店の面子だけでいいから、ポーションとMPポーション取引しねぇ?」


 思いがけず契約の話が来た。

 これにはズイッと間に出たのがお婆ちゃんである。

 ここから先はお婆ちゃんに任せたほうが良さそう。

「契約のことはわからないから、お婆ちゃんとお願いね」と告げて私はすぐにアイテム作成に入る。


 ポーション類を沢山作らねばならないからだ。

 私はローテーションを組んで、ポーションの日、MPポーションの日、お薬の日と決めてアイテムを作るようにしている。

 そっちのほうが効率がいいことに気づいたのだ。


 それに、甘い駄菓子な錬金術が使えるのは私だけ。

 だったら尚のこと休んでもいられない。

 どんどん作ってガンガン売ろうと決めたのだ‼


 その後、コウジさんは帰り、お婆ちゃんから今後アニーダ薬草店に卸す甘いポーションとMPポーションの個数を聞き、追加で作ることになった。




 ――だが、それを嗅ぎつけてくる者も、やはりいる。

 甘いポーションが街で噂になればなるほど、黙っていない者も必ず現れるだろう。

 翌日、私がMPポーションを作っている時だった。

 ドアを乱暴に開け、入ってきたのは……。


「失礼、甘いポーションを作っている錬金術師がいると聞いたんだがね?」


 横暴な態度でやってきたのは……ロバーツ商会の薬草部門の男性だった。

 お婆ちゃんが店に出てくれたけど……大丈夫かなぁ……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ