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駄菓子錬金術で世界を救う⁉ 見習いアンティの奮闘記  作者: うどん五段
第一章 私の居場所は【錬金術工房クローバー】
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第4話 野菜ジュース味のMPポーションと、頭痛薬の綿菓子

ブックマーク、評価、感想、誤字脱字報告ありがとうございます。

 私の作るポーションは、元の世界の炭酸のないジュースに近いものばかりだった。

 今日取り掛かるのはMPポーション。

 ポーションよりは少し難易度が高めだけど、MPを持っているスキル持ちにはなくてはならないアイテム。

 でも、味は相変わらず悪いらしい。

 ドロリとした見た目もさることながら、味もドロリとしていて不味いと聞いている。

 【ポーションは薬草やハーブ臭く、MPポーションは泥臭い味がする】というのが、この世界での共通の考え。

 ――では、私が作るとどうなるのか。


「安定化……」


 ドロリとしていても美味しいMPポーションになればいい……。

 作成中、どう頑張ってもMPポーションはドロっとしていた。

 なら、とろみのある……というとアレだけど、ドロっとしていても美味しいのになればいいのよ。

 そう思って作ってみたんだけど――。


「人参色……っていうのかしら?」

「なんだこれは」

「こりゃMPポーション……だと思うが、泥のような色合いじゃないね」

「お婆ちゃん、飲んでもらえます?」

「あいよ」

「俺も頂こうか。どんな味がするのか楽しみだ」

「辛辣な言葉じゃないのを祈りますよ」


 兄弟子は歯に衣着せぬ物言いなので注意が必要だ。

 言われる側も少しは心の準備がいる。

 深呼吸をしている中、お婆ちゃんと兄弟子はコップにMPポーションを移し、精霊達も興味津々に余ったMPポーションを飲んでいる。

 どう……なんだろうか。


「これは……甘く……いや、甘い?」

「こりゃ、甘めの野菜ジュースだね」

「甘めの野菜ジュース味なの?」

「あ、ああ……そうなるな」

「泥臭くなく、これならMPポーションで苦しんでる後衛職は喜んで買うだろうね」

「わぁ‼ やったぁ‼」

「ただ、これが広がると大変だよ? 普通のポーションもだが、味がいいとなると……」

「王都から大量注文が来る可能性がありますね」

「私の身体はひとつだけ……」

「うちの店限定商品にしちまえばいい。個数も限定販売。それなら行けるだろう」


 その言葉に私も兄弟子もホッと安堵した。

 【錬金術工房クローバー】限定のポーションなら、問題はないかな?

 恐らくだけど、多分、うん。

 王都からほど近い街だけど、魔物討伐隊がよく通る場所でもあって、その都度魔物を屠ってくれるので、この近辺には兵士の詰め所があるだけで、冒険者はそうそう泊まったりはしない。

 たまに、お偉いさんの護衛で来ることがある程度なので、店に来る方がレアだ。


「しかし、野菜ジュース味のMPポーションか……ははっ! 本当に妹弟子は意味がわからん」

「私は兄弟子の頭が意味わからん♡」

「ははは、いうようになったな……」

「それほどでも?」

「はいはい。落ち着きなされ。ふむ、しかし冒険者にはいいかもしれんぞ。

 MPポーションは身体にいい薬草を沢山使っておるが故にドロドロして泥臭いと評判が悪い。そこを、同じドロっとした味でも野菜ジュースの味にしてみれば……。

 案外MP持ちではない冒険者も飲む可能性はある」

「それに、長旅をする一般人にもいいかも知れないし、船に乗る者たちにもいいかもしれない。どちらにしても野菜は摂りにくいところだからな」


 すらすらとそういう知識が出るお婆ちゃんと兄弟子が凄い。

 私は「ほうほう」と聴くくらいしか今は出来ないけど……いつかそんな人達の為のMPポーションになってくれればいいなと思う。


「後は、またダース売り出来るくらいの量を作れるようになれば……」

「その時は、子どもたちとの約束で、お薬作りしてみようと思うの」

「ふむ、確かに初級のポーションとMPポーション作りつつ、スキル上げていけばある程度の薬は作れるようになるが」

「作ると言っても、大層な薬を作るつもりはまだないの。咳止めとか、そういうのから始めようかなって」

「ああ、それなら今のスキルでも作れるだろうよ。そういった薬を作りつつ錬金術スキルレベルを上げて、最高の回復アイテム、万能薬を目指しな」

「うん、頑張るね‼」


 お婆ちゃんに応援されて、精霊たちにも応援されて、私は俄然やる気を出した。

 ――そして翌日から、私は子供用のお薬を作ることに専念した。


「今日は頭痛薬から作ろうと思います!」

「まぁ、簡単な部類じゃな」

「そう難しいアイテムを使うわけでもないしな。だが何故頭痛薬なんだ?」


 そう問いかけてきた兄弟子に、お客様のお子さんで、つい勉強に熱中するあまり頭痛を起こすお子様がいらっしゃるのを語った。

 お婆ちゃんに頼んで、頭にひんやりしてぴったりと張り付くテープは開発してもらったけれど、それでも根本の頭痛は取れないらしいのだ。

 その為、本当に知恵熱を出してしまう子なので、是非とも作って差し上げたい!


「――と、思ったわけです」

「親が勉強を止めさせればいいのに」

「知識欲がすごい子なんですって」

「ふーん……」

「私と年はあまり変わらないし、頭痛で悩んでるのは見てて痛々しくて」

「ほーん? お前と年が変わらなくて、勉強熱心で、日々知識を蓄えてるねぇ?」

「おやおや? ピエール、気になるのかい?」

「別に? さぞかし将来性のあるお子様なんだろうなって思っただけです」

「女の子だけどね」

「なんだ、女か……」


 なんだろう、一気に興味を失った色をしている。

 兄弟子の中で一体何があったというのだろうか。

 よくわからないけど、邪魔をしないのなら問題はない。


 この世界の頭痛薬とかって、大人も子どもも同じものを使う。

 魔力が必要なお薬の分だけ身体が吸収するらしく、特に問題はないらしい。

 でも、ポーションだけは別。という考えで、子どもは大人用を飲んではならない規則があるのだとか。よくわからない規則だけど、そう決まってるなら仕方ないね。


 頭痛薬……私が作るとどうなるだろう。

 使い切りタイプが多いのがこの世界のお薬だけど、頭痛薬は無論使い切りだ。

 大体お薬ひとつに対し、袋で包んでたりしているのだけど――。

 今回はシルフとラムウに手伝ってもらって、ラムウには弱めの魔力を入れてもらいながら作っていく。


 シュパン‼ という安定化が終わった音と共に、机に落ちたのは……袋に入った……んん⁉ これはもしかして……。


「綿菓子?」

「綿菓子だね」

「ちゃんと分量通り作ってるのを俺は確認したぞ? 必要素材も確認済みだ。だがそれがどうして……この錠剤が綿菓子になる⁉」

「えーっと……錬金術の形は、ひとつじゃないよね‼」

「ひとつじゃないにしても限度があるわ‼」

「よしな。アンティの錬金術は、これが普通なんだよ」

「可笑しい……俺の築いてきたものが壊れていくようだ……っ!」


 ――あーうん、なんかごめんね?

 でも、私の作るお薬は、結局駄菓子になるのだ。

 駄菓子の呪い……じゃないや、祝福? なのかな? よくわからないけど……。


「美味しければいいじゃん!」

「お前の基準は大体いつもそこだな‼」

「こんにちはー。アンティちゃんいますー?」


 兄弟子に食ってかかられる前にお客さんが来たようだ。

 しかも、頭痛で悩んでる、メリーナちゃんのお越しだ‼


「メリーナちゃんいらっしゃい」

「頭痛薬が欲しくて来たんですが……」

「あ、新しい頭痛薬を作ってみたの。今回はサービスでひとつあげるから、効果があったら教えてくれる?」

「おい待て‼ 妹弟子!」

「おやめピエール。しっかり鑑定したところ……本当に頭痛薬だったよ」

「師匠が鑑定スキル持ちでいて良かった……」

「失礼だな! 私も鑑定スキル持ちです!」

「宝の持ち腐れじゃないか⁉」

「あの、新しい……錬金術師さん?」


 メリーナちゃんの言葉に「うん、兄弟子」というと、メリーナちゃんは眼鏡をクイッとさせつつ兄弟子を見つめている。

 あ、もしかして初恋とか恋とかそっち系ですか⁉


「アンティちゃんを預けるには……三十点」

「なっ⁉」

「お兄さん、三十点ですよ。もっと頑張りましょう」

「な、お、え⁉」

「預ける? 何が?」

「ううん、なんでもないの。私レベルになるにはまだまだ時間掛かりそうだなって」

「そっか、でもあまり無理しないでね?」

「アンティ……天使、ありがとう。貴女の作る錬金アイテム大好きよ♡」

「わぁ、ありがとう♡」


 お互いにっこり微笑み合っていると、兄弟子がぎゅっと抱きしめてメリーナちゃんから私を離した。一体何をするコラァ‼


「んふふ、精々頑張ってくださいましね? オニイサマ?」

「くっ……‼ そっち系だったとは‼」

「はて、何系でしょう? ふふふ……。ではごきげんよう~!」


 そう言ってメリーナちゃんは帰っていった。

 頭痛薬、効くといいな……。

 そう思ってたら、兄弟子は大きく溜息を吐いてるし、お婆ちゃんは苦笑いしてるし、一体何?


「何? どうしたの?」

「ピエール。相手が女子と思って、侮るなかれだよ?」

「そんなんじゃ‼」

「アンティはモテるからね。男女問わず。精々護衛騎士も兼ねて頑張るんじゃよ」

「え? 護衛騎士? 兄弟子が?」

「煩い、もっと精進しろ!」

「酷い! 頭痛薬作ったじゃない!」

「ああ、綿菓子な‼」


 ぎゃんぎゃんと言い合いつつも、私はその後、頭痛薬をメリーナちゃん用に一週間分作った。案外簡単に作れるし、明日からはもう少しスピードアップできそう。

 そんな日々もありつつ、しばらくはMPポーションと頭痛薬を作る日々が続く。

 何故なら――。


「あ――。アンティや?」

「どうしたのお婆ちゃん……に、兄弟子」

「……MPポーションをダースで売ってくれ」

「……家族割引と、兄弟子割引にしてあげます」

「「ありがとう」」


 ――泥臭いMPポーションにはもう戻れない。

 そう感じ取っているのか、自分でMPポーション作れと言いたいけれど、まずは身内から味方を増やすべく、作ってあげている。


 頭痛薬が安定してきたら次は何を作ろうか‼

 そろそろ秋口。鼻水や咳が止まらない人が増えてくる時期だ。

 そんな患者様の為に頑張ろう‼ 

 私は薬を作るのに専念することにしたのだった。

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