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駄菓子錬金術で世界を救う⁉ 見習いアンティの奮闘記  作者: うどん五段
第一章 私の居場所は【錬金術工房クローバー】

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第14話 麻痺回復薬はパチパチで、気付け薬は酸っぱくて!

ブックマーク、評価、感想、誤字脱字報告ありがとうございます。

「よし、明日は〝麻痺回復薬〟にトライしてみよう!」

「どんな駄菓子が出来るか楽しみだな」

「麻痺ってどんな感じだろう」

「腕が麻痺したとか、よく言うだろう?」

「あ――理解。それをパチっと治す方法があるといいなぁ……」


 ――と、話したのが昨晩のこと。

 錬金術師でも、錬金のしすぎで腕が麻痺することがある。

 つまり、錬金術師にも嬉しいアイテムを作ればいいのである‼

 私、頭いい‼ 自画自賛して、早速素材を集めて机の上に置き、暫し悩む。


 そう、今まで作ってきた中で思ったこと。

 私の錬金術は、最後の安定化で女神様に祈る際のイメージが大事であること。

 それが昨日なんとなく判明したので、作る前にイメージを作り上げておく。


「こう……錬金のしすぎで腕が麻痺した時、治るような甘いもの……」


 ビリっと来るお菓子はよろしくない。

 パチっとくるお菓子ならば、まぁ……。

 うん、パチパチっとくる……。

 前世にあったコンビニの夏のスイーツに入っていたかのようなパチパチ感。

 あれは欲しい。

 そういえば、パチパチするだけの駄菓子が売っていたはず。

 昔ならちょっと違ったのも。

 ううん……どうしたものか。

 パチっとしたものは決まっているけれど、それを包み込むコーティングがふわふわだと尚良し。

 出来れば個包装になっていて、すぐ食べられたらなおいい。

 イメージは……出来上がった。

 後は……目の前にあるこの薬草類たちがどう変わってくれるのかに期待。


 いつも通りの手順を踏まえて作っていると、イメージは出来ていたけど味を忘れていた。そう思った途端、ボシュン‼ と、失敗する音が鳴り響く……。


「あああああ……」

「珍しいなアンティが失敗するなんて」

「イメージはできてたんだけど、味のイメージが出来てなかったの」

「それでか。お前の作る錬金とは味まで考えないといけないのか」

「ん~~。そっちのほうがより美味しくなるかなって」

「美味しさ重視か……」

『わーい! ざらめだー‼』

『このレア感、たまりませんわ~~‼』


 まぁ、私が失敗しても、アイテムは何故か〝ざらめ〟になるから、精霊さんたちは大喜びだよね。

 我先にとざらめに群がっておられる……。


「んー味か~」

「味なぁ。どんな物を作るかはアンティの世界だし、俺では形容し難いな」

「そうなんだよねぇ」


 無難にぶどう味がいい?

 それとも別の味?

 悩ましい……。

 後味サッパリするのがいいのよねぇ……。

 となると……パチパチだけにする?

 ――悩ましいけど、味はひとつまとまった。


「よし、もう一回! 精霊さん達、手伝ってくれる?」

『ざらめ美味しかった~!』

『たまには失敗してね♡』

「わぁ。失敗を望まれるって初めて♡」


 そんなノリとツッコミをしつつ精霊さん達に力を借りてもう一度。

 パチパチ……っと言う音と共に、パチン‼ と珍しく違う音が聞こえて、金の魔力が安定していくと、パサリ。と幾つかの袋が落ちた。

 取ってみると、個包装になってる紫の宝石のようなものがついた綿菓子が。


「出来た……かな?」

「それが、アンティの作った〝麻痺回復薬〟かい? わしも食べてみたいのう」

「驚くかも知れないですよ?」

「錬金術は驚きがないといけないからな」

「なら、良いですけど」


 そう言ってひとりずつ〝麻痺回復薬〟を手渡し、精霊さんたちにも渡していく。

 個包装を破って中の綿菓子を口に入れると――。


 パチパチパチチチッ‼ と音がなり二人は目を見開く。


「ふわふわなのに、なんでパチパチするんだい⁉」

「これは……面白いな‼」

「麻痺をパチっと直せたら良いなと思いまして」

「この感じは新しい……。驚きと同時に麻痺が治るのが分かる」

「あ、ピエール腕が麻痺してたのね」

「ずっと細かい作業をしているからな……これは助かる」

「アタシも細かい作業のしすぎで疲れてたのかね……。手のしびれが消えたよ」

「良かった!」


 効果は……うん、鑑定してみたらちゃんと〝麻痺回復薬〟って書いてある。

 これなら錬金術師にもありがたがられる味だと思うな。

 と言っても、専らうちの店の三人が使うだけだろうけど。

 後は冒険者さんがどう反応するかによるけど、試しにダースで作ってピエールにお願いしよう。


「ピエール」

「ダースで作れば、送ってやるぞ」

「ありがとう‼」


 何を……とは聞かずとも分かってくれる。ありがたい‼

 この後日、新たな我が【錬金術工房クローバー】の面々は、この〝麻痺回復薬〟も定期的に接種しながら、仕事することになる。

 それは無論――ワトソンさんもだ。

 ペンの使いすぎで少し疲れた指先を、アイテムで治していくようになっていくのは、言うまでもなく――。

 アンジェちゃんはパチパチが少し苦手だったらしく、普通の綿菓子を食べていた。



 ◇◇◇◇



 ――残るアイテムは。

 〝気付け薬〟と〝睡眠回復〟このふたつ。


 このふたつを作り終わった頃にスキルが上がる予定だ。

 そうなったら――今回の一番欲しいアイテム。

 〝火傷凍傷回復薬〟が作れるようになる。

 そこを目標に頑張るしかないのだ‼

 すると――。


「気付け薬って、敵が混乱させたりしてくることってあるの?」

「ああ、そういう敵はとても厄介らしい」

「だろうなぁ……」


 まさにRPGの世界だわ。

 ゲームだから気にならなかったけど、混乱して武器を持てなくて戦えなくなるとか、そんな感じなのかな? それだったら死活問題だもの。

 だからこそ必須アイテムなのかもしれない。


「とはいっても、気付け薬なんかを使うのはランクの低い冒険者が主だ。そもそも、Cランク冒険者までは、付与アクセサリーを買おうにもお金がな」

「付与アクセサリーって、錬金術でも作れるやつだっけ?」

「錬金術師が作るアクセサリーも多少ならある。アクセサリーは幅広いんだ」

「そうなんだね」

「基本的にアクセサリーは、付与師や魔導具師が作るアクセサリーが主流だ。錬金術は消耗遺品を作るという分類分けになるな」

「なるほど」

「錬金術師に頼むアクセサリーは、消耗品で使い切りアイテムが多い。わざわざ頼む奴はそうそういないな。頼むなら傷薬なんかが多いだろうな」

「ああ、化膿止めとか」

「そうなるな」


 ――錬金術師は消耗品を作るのが主な仕事。

 それを改めて理解した瞬間だった。


 そうなると、本当に身体に優しいアイテムが必要な気がする。

 私は苦い普通の錬金アイテムは作れない。

 作っても駄菓子になっちゃうしね……。

 取りあえず、今は〝気付け薬〟に集中しよう。

 これは完全に冒険者さん用のアイテムになるから、多少大人好みで、混乱して動けない人を瞬時に戻せるような、インパクトのあるアイテムが良い。

 普通のアイテムだと、目が冷めるほど苦い薬を口にねじ込む……というのが一般的。

 それを私が作るとどうなるのか?


 レモンはすでにある。

 使えないな。

 だとしたらやはり駄菓子であった〝アレ〟だろうか?

 うん、アレしかない。


 そうと決まれば……と薬草庫からアイテムを取り出してきて、早速作り始める。

 いつもどおりの作り方だけど……なんか酸っぱい香りが漂ってくる。

 安定化させて音が――ポフン‼ となんとも気の抜けた音が聞こえてきて、大丈夫だろうかと心配したけど……。

 ポトリと落ちたのは箱入りの駄菓子……いやいや、お薬だった。


「これ、お酢昆布だ」

「お酢昆布?」

「それ駄菓子か?」

「い、一応……甘酸っぱいというか……」

「気になるな……」

「食べてみてもいいかい?」

「うん。薄っぺらいけど、すでに口の中が酸っぱさでいっぱいになりそうだ」

「〝気付け薬〟だから、一発で目が冷めたほうが良いかなと……」

「覚悟を決めて食べてみようかのう……」

「ええ……」

『僕達パスー』

『今回のアマアマじゃなさそうだもの』

『寧ろワシは食べてみたいのう』

「じゃあ、ラムウにだけあげるね。はい」


 こうして手に取った面子でパクっと食べると……ああ、懐かしい。

 あの駄菓子のお酢昆布の味がする。

 酸っぱいけど甘い。癖になる味だ。


「ん~~……こいつぁ効くねぇ‼」

「ヨダレがたまらなく出るな……」

『うひょ――‼旨いぞ――‼』

『ラムウは流石だなぁ……』

『わたくし達では、とてもとても……』

「でも、案外癖になる味だよね」

「そうだね。でもそう多くは食べたくはないねぇ」

「少なくていいな」


 〝気付け薬〟だしね。

 そう多くは食べたくはないよね……。

 でも、徹夜するほど忙しくなったらお世話になりそう。

 そんな日が来ないことを祈るけれど……。

 案外不評……というより、多くは食べたくはないという感想だった。

 ラムウを除いては。


 さて、ここまで作ってMPが割となくなったので本日の作業はここまで‼

 明日は今日作ったアイテムを少しずつ量産してスキルを上げて――。

 次に目指すのは〝睡眠回復〟だ。


 睡眠回復薬は死活問題だとピエールが言っていた。

 なんでも、敵の睡眠が強すぎて、食べられていることに気づかず絶命する冒険者もいるのだというゾッとしちゃう話を聞いたのだ。

 それは死活問題だわ‼

 こう、素早く口の中で消えるお薬作らなきゃ。

 その案は一日寝かせて決めよう。

 どんな駄菓子がいいかなぁ。


 そんなことを考えながら次の日――思いがけない相談が舞い込んだ。


 

 ◇◇◇◇



「あのぉ……。受験シーズンなんですが頭が途中で混乱してしまって……。それを治すような薬ありますか?」

「一応冒険者さんが使う〝気付け薬〟ならありますが」

「できれば苦くないのが良いです……。ボク、苦いの苦手で……」

「オブラートは?」

「入れるのが下手で……」

「「……」」

「なら、こちらの商品はどうでしょう?」


 ピエールが固まっている。

 オブラートに入れるのが下手な人だっているんだよ?

 目が悪いお年寄りとか死活問題なんだからね?


「これは?」

「少し酸っぱい食べる〝気付け薬〟です。これなら無理なく混乱せず行けると思いますが」

「それはありがたいです。是非ダースで買わせていただきたい‼」

「ダースで……」

「受験までもう日がないんです!」

「それなら、まぁ……どうぞ」

「ありがとうございます!」


 そう言って青年は代金を支払い帰っていった。

 受験か。学園に通ってる生徒なのかな?

 王都にほど近いこの街では、王都への就職のために受験をして、仕事をするべく引っ越す人も多いしね。


「思いがけないお客さんだった。一般の人でも欲しがるアイテムだったのね」

「あれはレアケースだと思うがな」

「でも、作り置きしたやつ無くなっちゃった」

「MPも残ってないなら、今日はゆっくり過ごしたらどうだ?」

「そうしようかな」


 たまには錬金アイテム図鑑を見て過ごすのもいいな。

 まだ作れてないアイテムとかもあるかもしれないし。

 そう思い、その日一日、家にある図書室でアイテム図鑑を見て過ごし、アンジェちゃんはピエールの手伝いをして過ごした。


 案外冒険者が使うアイテムも、一般市民に使えるアイテムがたくさんあるかもしれない。私はまだまだ勉強不足だと痛感した一日でもあったけど――。


「でも、まだ勉強不足だということは、レベルアップできるってことよね‼」


 ――俄然やる気を出したのは、言うまでもない‼

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