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駄菓子錬金術で世界を救う⁉ 見習いアンティの奮闘記  作者: うどん五段
第一章 私の居場所は【錬金術工房クローバー】

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第13話 毒消し薬と子供用の酔い止め薬を、甘い駄菓子で‼

ブックマーク、評価、感想、誤字脱字報告ありがとうございます。

 ついに――やってきました〝毒消し薬〟作り!

 冒険者の皆さんは、毒消し薬と言えば、苦い丸薬を飲むのが一般的らしいけれど、口に広がる苦さは一日経っても消えないのだとか。

 それはちょっと可哀想。

 私が作ったらどうなるかな?

 駄菓子なアイテムになるだろうけど、少しでも飲みやすくすることは出来るだろうか?


 材料と睨めあっても、どう見ても美味しくなる要素皆無。

 これを? 甘く出来る?

 苦くて飲みにくい毒消し薬――それを駄菓子にできたら?


「ううん……」

「苦いアイテムができるのが予想できるだろう?」

「ええ……。どうやっても苦いアイテムしか出来ない薬草の種類よね」

「ああ、俺も改善出来ればと思ったが……」

「改善と言えば、〝酔い止め薬〟を改善したいわ」

「酔い止め薬をか?」

「そう。移動の間の酔い止めにもなるんでしょう? 馬車移動する子供のために、もっと甘く出来ないかなって思ってるの。毒消し作ったら、子供用で作れないか祈ってみる」

「アンティは優しいな……」

「子供に優しい錬金術をするのが、目標ですから!」


 ――そう、私の目標は困ってる人たちを助けたいというのが一番。

 その上で、苦いアイテムで苦しんでる人たちを、甘い薬で助けたいという思いが強い。ただそれだけなんだけど、何故か褒められた。


「駄菓子錬金術なんて、アンティにしかできないからねぇ。アタシ達にしてみれば羨ましい限りじゃよ」

「そう……かな?」

「そのスキルは誇って良いスキルじゃと、わしは思うがのう?」

「……ありがとうお婆ちゃん」


 こうして気持ちを切り替え、私は〝毒消し薬〟に取り掛かる。

 どう頑張っても苦いアイテムにしかならなさそうなこの薬。

 どうか私のスキルで甘くなりますように‼


【乾燥】に【粉砕】。【祈りの涙】に魔力を込めて【薬効成分抽出】……【分離】からの【濃縮】。ここまででも色合いは凄い色。

 問題は【安定化】による祈り次第ね。


『どうか、苦いお薬じゃなくて毒がシュワッと消えるような……そんなアイテムになりますように……』


 そんな願いを込めると、シュパン‼ と音を立てて金の魔力が安定化していく。

 そして瓶がコトリ。と落ちると、中には一袋ずつ入ってる飴が。

 瓶の蓋の色も違うけど、中身の色も違う。

 酔い止め薬は透明だったけど、毒消し薬は紫の色をしたまさに毒をイメージした瓶だった。ピエールに開けてもらい、中の飴を精霊さんたちにもひとつずつ与えて、全員で舐める。


「……舐めるとシュワシュワするねぇ」

「舐めると口の中でシュワシュワする飴だな」

「これ、あわ飴だ」

「あわ飴?」

「鑑定……うん、毒消し薬になってる。これなら冒険者さんも舐めやすいかな?」

「舐めてる間は毒消しの効果が持続するみたいじゃのう」

「〝持続型の毒消し薬〟か」

「美味しいし、持続するなら、毒を持つ敵と戦うのに有利かな?」

「でも、口の中でシュワシュワしながら戦うのか……」

「飴は小さくなりやすいって書いてあるよ」

「なら、さほど問題はないか」

「短期決戦タイプの飴だねぇ」


 でも、その短期決戦だからこそ、念入りに手段を考えて戦うのが冒険者だと思う。

 この〝あわ飴〟で頑張ってもらいたい。

 簡単に作れるため、【錬金術工房クローバーの毒消し薬。あわ飴】と書いて判子を押す。ダースで作れたら、次は改良したいと言っていた〝酔い止め薬〟に取り掛かる。



 ◇◇◇◇



 材料は一緒。

 でも――子供向きじゃなかった。

 今度は子供向きの物を作りたい。

 〝酔い止め薬〟は幾つあってもすぐ消えるらしいので、こっちは明確に『子供用』として作るし売りに出す。


「しかし、子供で移動すると言ったら貴族様だろう?」

「そうなんだけどね……」

「貴族様御用達の店とか、ピエールはパイプある?」

「あるにはあるが……」


 あるんだ……。なんでもパイプ持ってるなピエール。


「俺はあまり納品はしていないな。頼まれてからの納品にしているし」

「そっかぁ……」

「ただ、店主からは『面白い錬金アイテムがあったら納めて欲しい』とは言われていたから、アンティの作るアイテムは納品できるはずだぞ」

「良かった」

「ただ、明確に『個数が作れた場合にのみ納品する』という事は伝えたほうが良いから、俺の方から伝えておこう」

「それは助かる!ありがとうピエール‼」


 これで納品場所は確保できそう!

 後は子供用に〝酔い止め薬〟を作るだけね。

 子供でもシュワッと溶けて甘いもの……。

 レモン飴の時は思いの形がバラバラで、レモン味の飴が出来上がったのよね。

 今回はしっかりと祈らないと。


 駄菓子……。

 駄菓子で口溶けが良くて噛んでも美味しいもの。

 出来ればレモン風味が良いけど、味付きのほうが酔い止めにはなるよね?

 となると……前世で私もドライブする時のお供にしていた……大きめのレモン風味のラムネがいいかな。

 少しずつ噛んで食べると美味しいのよね。

 子供の時からお世話になっていたけれど、あれは酔い止めには最適だわ。


 目の前にある材料を見て、ようやくイメージが固まった。

 子供の口に入る小さめのレモン風味のラムネを作ろう。

 それなら、喉につまらせることもないし安全だわ。

 ――そうと決まれば‼


 いつもの工程を行いながら精霊さんたちに手伝ってもらいつつ魔力を安定させていく。精霊さんたちも『子供用、わくわく!』と楽しみな様子だ。

 甘いの大好きだもんね、精霊さんたち。

 今度は甘めのレモン味だから喜んでくれるといいな!


『子供の口に入るラムネサイズで、味は甘いレモン味……』


 そう願いながら安定化させると――シュパン‼ という音と共に、金の魔力が安定化していって、ことり……と可愛い瓶に入った白いラムネが落ちてきた。

 開けるのも簡単で、子供でも開けやすいようになっているらしい。

 でも、しっかり口は閉じるタイプ。


「ほほう、これが〝子供用酔い止め薬〟かい?」

「なんとも可愛らしい瓶に入った酔い止め薬だな」

「歯が生え揃った子供さんになら与えられるって書いてあるわ。凄い」

「その説明書付きの瓶は、どうやって出来るんだろうねぇ……」

「普通はこちらが瓶を用意して作るからなぁ」

「それはまぁ……そういうスキルということなんでしょう‼」


 まだ女神様からの許可は下りない為、言う事は出来ない。

 加護持ちというのはもう理解されてるっぽいので、それ以上追求されなかった。

 では、いざ実食……という事で、アンジェちゃんにも来てもらい食べることになった。


「子供用の酔い止め薬だから、アンジェちゃんの感想も聞きたいな」

「わかった」

「では、皆さんにひと粒ずつ」


 こうして、皆にひと粒ずつ手渡し、精霊さんたちにもひと粒ずつ手渡してから全員で食べる。

 ――甘い‼

 レモン風味だけど甘い味がスッと入ってきて、カリッと噛めば数秒で溶けていく。

 甘いけど一瞬の夢……そんな感じだった。


「へぇ……こいつは変わってるね」

「甘くてカリッと噛めばスッと消えてなくなる……。まさに夢のようなお菓子だな」

「おいしい~~。アンジェこれ好き~!」

「良かった~!これなら量産も難しくないから、すぐダースで出せるよ」

「なら、今度俺の方に来ている納品分を出す時に出すからダースで試しに作って送ろう」

「お願いね」



 ◇◇◇◇



 その後、〝子供用酔い止め薬〟をダースで作ると、ピエールの納品用を置く部屋に置いて、上に「アンティ・ロセット」とメモを置いておく。

 これで分かりやすいでしょう‼

 お貴族様が試しに買う事を期待して……大量生産が来ないことを祈った。

 また、MPがちょうど切れたので、後は薬草庫の整理や商品棚の整理をアンジェちゃんと一緒に行う。


「薬草庫はいつも分かりやすくしておかないと、コウジさんに頼めないからね」

「せいりせいとん、だいじだって、ママいってた」

「……ママ会いたい?」


 ワトソンさんとアンジェちゃんを捨てていったという彼女の母親。

 一体どんな人だったのかは聞いてはいないけど、実の娘を簡単に捨てられるものなのだろうか?

 そう思っていると――。


「アンジェ、ママあいたくない」

「そうなんだ」

「パパのまえではニコニコしてたけど、あれウソ」

「え?」

「いつもカリカリしてた。だから、アンジェはママが嫌い」

「そっか……」

「いまのほうが……すごくすき。パパはやさしくなったし、ふたりでこれからがんばるの」

「うんうん」

「でも……パパにはたすけてくれるひとが、ひつようだとおもう」

「アンジェちゃん……」


 子供ながらに思うことはあるんだな……。

 ぎゅっと抱きしめると、アンジェちゃんはこんな事を言い出した。


「おなじアパートにいる、マチルダさんってひとがね?」

「うん」

「パパのことすきなんだって。アンジェのあたらしいママになれたらいいなっていってくれてるの」

「うん……」

「さいきんね?ごはんのおすそわけによくきてくれて、さんにんでごはんたべるの」

「うん」

「アンジェ、それがすごくしあわせなの……」


 嬉しそうにぎゅっと抱きしめてくるアンジェちゃん。

 アンジェちゃんだってお母さんが恋しかったんだ。

 本当は、甘えられるお母さんが欲しかったんだ……。

 そう思っているとカタンと音がなり、現れたのはワトソンさんだった。


「聞いておられたんですね」

「お恥ずかしながら……」

「と、言うのがアンジェちゃんの考えだそうですよ」

「……そうですな。アンジェの気持ちがそこまで固まっているのなら……」

「良いんじゃないんですか?悪い人なんですか? そのマチルダさんって」

「いえいえ、とんでもない!素晴らしい女性ですよ」

「なら、問題ないのでは?」

「……そうですな。マチルダさんと話を今度してみます」


 そう言ってワトソンさんは苦笑いしつつ、駆け寄ってきたアンジェを抱き上げていた。

 その後聞けば、マチルダさんは離婚経験者で、子供がいたけど病気で失ったのだそうだ。

 身体はそう強くないようで、もう子供は見込めないと医者にも言われたのだとか。

 その為、アンジェにはとても良くしてくれているらしい。


 人の人生ってよくわからない。

 でも、丸く収まるところに、最後は収まるのだと思う。


「良い結果を楽しみにしてますね‼」

「そうなることを祈ります」


 一度失敗したから、二度目はないと言うことはない。

 一度失敗したなら、二度目を起こさないようにすればいいだけ。

 人間とは、学習することが出来る生き物だしね!


 照れ笑いしながら嬉しそうに笑うワトソンさん親子が、後にマチルダさんと結婚して、新たな家庭を持つのは――もう暫く後のことで……。


「よし、明日は〝麻痺回復薬〟にトライしてみよう!」

「どんな駄菓子が出来るか楽しみだな」

「麻痺ってどんな感じだろう」

「腕が麻痺ったとか、よく言うだろう?」

「あ――理解。それをパチっと治す方法があるといいなぁ……」


 そんな話題を夕飯中にしながら、私は明日作る〝麻痺回復薬〟に思いを馳せたのだった。

 それに私は必ず子供でも笑顔で食べられる薬を作る錬金術師になるんだ!

 ――挑戦は続けないとね‼

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