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駄菓子錬金術で世界を救う⁉ 見習いアンティの奮闘記  作者: うどん五段
第一章 私の居場所は【錬金術工房クローバー】

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第11話 中級MPポーションは甘い炭酸の野菜ジュース。酔い止めは……

ブックマーク、評価、感想、誤字脱字報告ありがとうございます。

 ようやく作ることが出来た〝中級MPポーション〟‼

 後はこれを毒見……いやいや、飲んでもらうわけだけど、今回は書類仕事で疲れているであろうワトソンさんも巻き込んで飲んでもらうことになった。


「書類整理中に悪いね、ワトソン」

「いえ、どんな中級MPポーションなのか、今から楽しみですよ」

「鑑定ではちゃんと中級MPポーションって出てるから問題ないと思うけど」

「おとなはいいなー、のめていいなー」

「アンジェちゃんと私には、子供用粉ポーションで乾杯しよう」

「わぁーい!」

「すみません……アンジェにまで」

「可愛い妹ができたみたいで嬉しいよ?」

「さて、飲んでみるか」


 ピエールがキュポン! と蓋を開け、紙コップ四個にそれぞれ少しずつ入れていく。

 ひとつは、手伝ってくれた精霊さんたちの分だ。

 どんな味だろうとワクワクしながら私とアンジェちゃんは子供用粉ポーションを飲んでいると……。


「……野菜ジュースの……甘い炭酸割り?」

「そんな味じゃのう」

「ええ、そんな感じがします」

「でも、ちゃんと中級MPポーション通りに回復はしておるわい」

「良かった。変な味にならなくて」

「こっちのほうがスッと飲める感じがするな」

「私は初めてアンティさんの作る作品を飲みますから……ですが、これは目新しい」

「うちの店限定商品じゃよ。アンティの身体はひとつしかないし、まだMPポーションを飲める年じゃないんでね」


 そうなのだ。

 アイテムを作る度に、MPは減る。

 そのため、幼い頃から私はMPを増やす特訓をしているのだけれど、普通の子供よりは多いくらいで、大人には到底及ばない。

 スキルを伸ばすことでMPを増やしているところなのだ。


「量産は……出来ないね?」

「まだ量産は出来ないですね」

「なら、薬が余っている時はこっちを中心に作っておくれ。それでスキルを上げて中級MPポーションを安定供給出来るのを目標にするんじゃ」

「分かったわ」


 お婆ちゃんのお墨付きが出たところで、精霊さん達を見るとやはり炭酸に反応している。

 ピリッとシュワッと来る感じがたまらないらしい。

 なかなかに通ですなぁ?


 こうして暫くの間、薬は余っているし、ポーションとMPポーション作りに励むことになった私は、日々MPがギリギリ尽きる直前まで作った。

 おかげで錬金術スキルが五つもレベル上がったので御の字だ。

 限界ギリギリまでスキルを上げておきたい私としては、ぼちぼちポーションを作りつつな日々を二ヶ月ほど過ごしたわけだけど――。


 中級MPポーションではもうスキルが上がらないところまで上げきる頃には、かなりの量の中級MPポーションを作れるようになっていて。

 お婆ちゃんもピエールも、泥臭い中級MPポーションから解放されて、かなり嬉しそうだった。


「ほらね? 甘いのは正義でしょう?」

「これになれると……」

「普通のポーションやMPポーションには……ねぇ?」

「戻れないよね?」

「「アンティ恐るべし」」


 その言葉を聞いて、ご満悦の私がいたのだった。



 ◇◇◇◇



 ――さて、ここからは問題だ。

 このまま上級ポーションというわけにはいかない。

 上級ポーションはレベルがそれなりにないと作れないからだ。

 ここからは、何かしらのアイテムを間に挟むことになる。


「お婆ちゃん、ここからは冒険者用のアイテムを作ってもいいかな?」

「ああ、構わないよ。といっても、うちに冒険者が来ることはそうそうないがね」

「それでしたら、兵士の詰め所などはどうでしょう?」

「そこはもう別の錬金術師が入れてるじゃろう?」

「なら、俺が妹弟子の作ったアイテムとして、王都に送ってやろうか?」

「いいの?」


 流石王都にパイプを持つ男、ピエール‼

 私のアイテムも送って売ってくれるらしい。

 信用できるお店らしく、ピエールとも長い付き合いなのだとか。


「ただし、マージンは少し取られるぞ」

「構わないよ。スキル上げが主な目的だからね」

「そうか、ならそうしようか」

「ありがとう、ピエール‼」


 ここからは、【冒険者御用達】といえるアイテム作成に入ることになった。

 よく使われる物からピエールがピックアップしてくれたので、それに合わせてスキル上げをしていく。


「ふむふむ、冒険者ってこんなアイテムを使うのね。気付け薬、酔い止め薬、毒消し薬に麻痺回復薬、睡眠回復薬に……」

「火傷や凍傷を治す薬だな。これはスキルレベルが高くないと作れない」

「となると?」

「作るとしたら毒消しや麻痺、睡眠や酔い止めだが、一番売れるのは酔い止めだな」

「なんで?」

「冒険者はよく酒を飲む。次の日二日酔いになる馬鹿が多いんだ」

「なるほど……」

「後は移動中の馬車酔いにも効くらしい。それで使うやつが多いな」

「了解、なら酔い止めから作ってみるわ」

「今のアンティなら、酔い止めと、もうひとつくらいなら作れるだろう」

「おすすめは?」

「毒消し薬」


 ピエールの情報を聞き、私とアンジェちゃんは薬草置き場へと向かう。

 そこでメモした必要アイテムを持っていくのだ。

 お婆ちゃんが開発したこの薬草置き場は【アイテムボックス】と同じ【時止まり】がかかっていて、王城の台所でも使われているらしい。

 流石お婆ちゃん……凄いなぁ。

 実家にもあったけど、この【時止まり】の錬金術を作れるようになって、晴れて【ロセット家の錬金術師】と名乗れるようになるのだ。

 道は険しい……。


「アンジェちゃんも、錬金術に興味出てきた?」

「ううん。お手伝いしてるほうが、好き」

「そっかー」


 そんな他愛のない会話をしながら作業場へと戻り、早速酔い止め薬を作っていく。

 前世では、それなりにお酒を嗜んだものだけど……。

 こちらの世界では、カクテルもなければラガーもない。

 あるのはエールのみだ。


 エールも錬金術師が作れるけれど、作るのは人それぞれ。

 うっかりエール作りに手を出してしまったがゆえに、それしか作れない〝エール錬金術師〟という人たちもいるので、迂闊に手を出すと危険なのである。

 まぁ、〝エール錬金術師〟は実入りが良いとは聞くけどね。

 一財産築くこともできるそうだけど、私はやらない。


 私は甘いお薬で困ってる人を助けるんだ。

 特にお子様の患者さんは急務なのよね‼


 取り敢えず、目標は「火傷や凍傷を治す薬」として、進んでいこう。

 子供でもうっかり火傷というのは多々ある……。

 特に女の子なんかが火傷をすると、将来にとても響くのだ。

 そのためにも、火傷を治す薬は欲しい。

 冒険者だけではなく、一般的なお客や子供にも使えるもの!


「目標があると、俄然燃えるわ!」

「良いことじゃのう」

「あまり無理するなよ?」


 応援されつつ心配されつつ、私はアイテム作成に取り掛かる。



 ◇◇◇◇



 まずは【酔い止め薬】から。

 材料は簡単なもので、意外と一般的なお客様でもこれは飲むんじゃないかな?

 そう思っているので、お店にも置いてもらうことにした。

 まずはいつも通り精霊さんたちの力を借りて……心を落ち着かせつつアイテムの手順を踏んでいく。


【乾燥】に【粉砕】。【祈りの涙】に魔力を込めて【薬効成分抽出】と【分離】からの【濃縮】。ここまでは順調! 問題は【安定化】だね。

 冒険者が飲むものでもあり、一般の人でも飲めるようなもの?

 いや、口に入れたらスッとするような、スカッとするような味がいいかな?

 できれば長時間口に入れておけるものがいい。

 スカッとレモンな味がすれば、案外いけるんじゃないかな?

 そう思った時、シュパン‼ と音がして、金の光が消えていくと……コトン、と音を立てて現れたのは、瓶に入ったひとつずつ袋に入ったナニカ。

 こればかりは、開けてみないとわからない。


「ん、硬い」

「貸してみろ」


 ピエールにお願いして瓶を開けてもらうと、中に入っている袋を皆でひとつずつ手に取る。

 アンジェちゃんは、なにかあっては大変なので待機。

 袋を開けて中を見ると、黄色い飴が入っていた。


「飴……」

「飴玉だな」

「全部黄色かい?」

「そうみたいですね」

「舐めてみよう。精霊さんたちもひとつずつどうぞ」

『待ってましたー‼』

『正直MPポーションばかりで少し飽きてましたの』

「ごめんねー?」

『いいんじゃよ。甘い甘いアンティの錬金術は、なんであっても大歓迎じゃ!』


 ううう、ラムウありがとう!

 そんなことを思いつつ、ぱくりと飴玉を舐めてみる。

 意外と……酸っぱいような甘いような、どっちかというと甘酸っぱい。

 口の中がキュッとなりそうな、そんな甘酸っぱさが口いっぱいに広がる。


「レモン?」

「レモン飴だな」

「でも、鑑定では酔い止め薬って出てるねぇ。ほー? アンティの作る酔い止め薬は、レモン味の飴じゃったか」

「そうみたいです。案外甘酸っぱくて美味しい」

「アンジェも舐めたいなぁ」

「甘酸っぱいよ?」

「すっぱいのは……ニガテかも」

「お店にある棒付きキャンディなら舐めてもいいけどね」

「いっこもらってくるー!」


 子供は元気が一番‼

 こうして出来上がった〝酔い止め薬〟は、お店でも売ることにして――。

 そうそう売れるアイテムじゃないと思うけど、念には念を入れておかないとね。

 あとは、できればもうひとつは作りたいけど……。

 そう思っていると、お店のドアが開きお客さんがやってきた。


 子供の熱冷ましが欲しいということでお客さんの相手をしていたら、次々今度は子供さんやお年寄りの熱冷ましが欲しいという注文が来て……。


「新たに病気が流行ったのかな?」

「たまたまじゃろう。昨晩は冷えたからのう」

「布団も夏用じゃなくて秋用にしておいてよかった」

「俺達も風邪や病気には気をつけよう」

「そうだね」


 結局続きはまた明日――ということになり、私達は片付けを済ませる。

 柱時計が音を鳴らすと、ワトソンさんも仕事を終えて経理部屋から出てきた。

 今からアンジェちゃんとアパートに帰るのだ。


「では皆さん、お先に」

「その前に、一日の疲れを取るためにほれ。飲んでから帰るんじゃよ」

「そうでした。しかしこの甘いポーションは良いですねぇ」

「アンジェ、もう飲んだよ?」

「すみません、娘の分まで……」

「アンジェちゃんもうちの戦力だからね!」

「アンジェ、がんばってるよ、おとうさん」

「そうかそうか……。今日は温かい料理でも作ろうかな」

「アンジェ、おとうさんのごはん、だいすきよ!」


 微笑ましい会話。

 前はメイドとかがいたらしいけど、今は二人でアパート暮らし。

 娘と二人、二人三脚で頑張ってるワトソンさんに、いずれまた幸運が舞い込んでくると良いなと思う。


 心も安定しているからか、最初来たときよりずっと顔も優しくなった。

 笑顔も増えた。

 これから先も、きっと――。


「では、お疲れ様です」

「「「お疲れ様です」」」

「ばいばーい」


 帰っていったワトソンさんとアンジェちゃんもコートを羽織って帰っていったけれど、たしかに外は寒い。

 明日は〝毒消し薬〟を作ったら、風邪薬作ろうかな。

 そんなことを思いつつ、明日は明日で頑張ろうと気合を入れて。


「夕飯は今日はシチューにしよう!」

「賛成じゃな!」

「パンは買ってきてあるぞ」

「ありがとう!」


 今夜は温かくシチューでも食べて、身体をホカホカにして、お風呂に入って寝る。

 健康的に過ごすためには、早寝早起きが一番よ。

 それに、前世では、早起きは三文の徳って言われてたしね。

 きっとこの異世界でも、良いことがあるに違いない!


「明日も一日頑張るぞー!」

 

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