哀しき二人(哀しき独り)
今日はある哀しい二人の噺をしよう。
聞いたらここから出ると良い。
魔王が貴方を…
待っているから――…。
昔々、ある村に魔王と、
小さな勇者が居ました。
勇者は魔王と暮らして居ました。
一緒に住んでいる内に色んな事が分かりました。
魔王は、魔王に成りたくて、産まれて来たのではない。と、そんな普通の事や、絶対的な力を持つには親を殺し、友達も、心友も、殺さなければ生けない。
そんな、辛いことも知りました。
そして、魔王は悪い者ではない。と知りました。
ですが、ある時そんな普通の日々が音を立てて壊れて――割れて、行きました。
「魔王を殺せー!」
「貴様の様な者が勇者を語るな!」
「悪はこの世にもう要らないんだよ!!」
「死ね!」
「テメェは勇者なんかじゃない!!」
…と、村人は声を張り上げ、非難しました。
考えてみたら当然の事。
魔王がいつ私達を襲うか。
魔王がいつ私達を喰うか。
恐怖です。
村人にとって、魔王は恐怖そのもの。
此処まで堪えてきた。
それだけで凄いこと。
…ですが、魔王を知ってしまった勇者は…
「ひぎぇ!」
「ひぁぁぁ!?」
「いやだぁぁ」
村人を殺してしまいました。
中には、悲鳴を上げる暇も無く、死んでしまう人も居ました。
ある人は只の肉塊と成り、ある人は身体が斬れ、臓物が出ていました。
何時しかその勇者は賞金首となり、日々命を狙われていました。
魔王も居ました。
ある日勇者は耐えきれなくなり、
魔王に自ら喰べられました。
すると、賞金を狙っていた人は、来なくなりました。
ですが、魔王は独りぼっちになりました。
そして独りになった魔王は、旅をしました。
自分の友達になってくれる人を探しに――
自分を信じてくれる人を捜しに――
旅の始まりの夜、烏が哭いていました。
そして魔王は今日も旅をしているそうです――…。
では、サヨウナラ。