第55話 襲撃
けたたましく鳴る警告音の中、会場の職員が大声でこの場の皆に告げる。
「緊急事態です!現在グアドの街中に大量の変異種が出現している模様!詳しい状況はまだ分かりませんが、慌てず冷静な判断をお願いします!たとえ戦える方であっても注意してください!ここはダンジョンではありません!繰り返します!ここはダンジョンではありません!」
場がざわつく。不安によどめく。そんな中、騎士団の団員であるベドゥイは僕に向けて冷静に話す。
「状況を知りたい。可奈芽さん、感知スキルをお願いできますか?出来るだけ広く」
僕は頷き、すぐに感知スキルを発動させた。
モンスターの襲撃に遭っていると聞いて最悪な展開も覚悟していたのだけど、大きな災害があった後の様な惨状にはなっていなかった。ただ、そこら中に甲虫と甲殻類を合わせた様なモンスターがうじゃうじゃとうごめいている。街中にはほとんど人の姿は見えない。ちょっと前までは賑やかだった街中が今ではゴーストタウンみたいになっている。避難誘導は済んでいる様だ。そして兵士や一部の戦える住民がモンスターと戦っている。
僕は今の状況を口頭で伝えていく。
「なんか虫っぽいモンスターがそこら中に居てカサカサ動いてる。パッと見ただけでも4~50匹。兵士や戦える住人とかも戦って倒せているから一体一体はそこまで強くないみたいだけど、めっちゃ数が多くて処理しきれてない感じ」
「ふむ。変異種でそのタイプとなれば、恐らく取り巻きを大量に出してくるタイプの奴ですね。それがダンジョンの外まで溢れてしまったのでしょう」
ベドゥイは顎に手を当てこれからどうするか考えを巡らす。とその時、
「スマン、待たせた」
ディクスが試合会場から戻って来た。
「あ、ディクスさん」「待ちかねたよ、兄ちゃん」「指揮お願いします、団長」
と安堵に満ちた声が並ぶ。ディクスはその声に応える様に話しを進めていった。
まずは僕とベドゥイに今の状況を聞いて現状を把握。
次に部下へこれからやる事についての説明。街中のモンスターを討伐しつつダンジョンの出入り口を封鎖、街中のモンスターを完全に駆除し安全を確保するとの事。
そして「皆聞いてくれ!」と大声で言い放ち、この場に居る人達の注目を集めた後、今の状況を説明。ある者には討伐の協力を頼み、ある者にはこの場とここに居る人達を守る様に頼み、ある者には安全が確保されるまでここで待機してくれる様にお願いをする。戦える者には役割を振り分け、戦えない者には身の安全のためにどうすべきかを伝えてとりあえずの安心感を非戦闘員に与えた。
テキパキと話を進めてくれたからだろうか、ディクスのお陰でこの場で過度な混乱は起きずに済んでいる様に見える。さすが騎士団の団長といった所か。
そして僕達リトライズはというと、殲滅部隊、外に出てモンスターの殲滅に力を貸す事になった。基本的にパーティーで行動できる人が外で戦うとの事で、ロザリン達極炎の光星とリュート達ブレイドファングも外でモンスターの殲滅に協力する様だ。
「よし、行こう!」
僕は装備を整え、掛け声を言い放った。
それに呼応する様にリディルカ、シシルー、ニーリェの3人は僕の方を向き頷く。
皆の装備はいつもと違う。ここは街中なので、ダンジョンに行く時の様な装備を持って来てはいなかった。だけど、幸い大会の会場にはレンタル用の装備がある。非常時という事で許可も得られたので、厚意に甘えてその装備を使わせてもらう事にしたのだ。
僕達は慣れない装備を身に着けつつも、現在進行形で街中を騒がせている変異種の討伐に向かうのだった。




