第37話 いざ、尋常に勝負
騎士団との変異種討伐から少し経ち、僕達は探索者ギルドで申請をして、晴れてBランクへと昇格する事となった。
リトライズはパーティーとしては十分に昇格できる実力はあったんだけど、どうも強すぎる個人が初心者を無理やり高ランクに引き上げる事がない様にするため、実力者と初心者が一緒のパーティーは申請が厳しくなるらしく、リトライズはそれのせいで昇格が遅れたらしい。
何はともあれ、これでようやく僕達もいっちょまえの探索者の仲間入り。ランクは単なる肩書でしかないけれど、評価されたというのは気分が良いもんだ。
これからどんどん難しい事にも挑戦していこうと決意を新たにしたそんな頃。僕達はロザリンに呼ばれ、カーラ共和国に数ある港町の一つセーナペへと来ていた。
そこにある少しお高めの料理店の一室にハキハキとしたロザリンの声が鳴り響く。
「いざ、尋常に勝負ですわ!リディルカ」
僕達リトライズと極炎の光星の面々が揃って食事をする中、ロザリンが勝負を挑んできたのだ。勝負の内容に関わるものなのか、1枚の紙を手に持ちヒラヒラと僕達に見せつけている。
威勢よく勝負を挑んでいるロザリンにリディルカは答える。
「ふむ。つまり、その変異種をどちらが先に討伐するかでこのリディルカと競いたいという事かな?ロザリンよ」
ロザリンが持っている紙はモンスターの討伐依頼が記されたもの。どうやら強い変異種が出現していて、そいつがまだ討伐されていないらしい。
「えぇ。相手はいくつものAランクパーティーを打ち破った難敵。戦っている動画も見てみましたが、幾多の物理攻撃や魔法攻撃を受けてもものともしない耐久力、あれは紛れもなく最上位クラスのモンスター。わたくしやリディルカにふさわしい相手ですわ」
僕は「どれどれ」とその紙を受け取り、ニーリェとシシルーと共に見る。
紙には討伐対象のモンスターがでかでかと載っていて、下にはその変異種の名前と倒した際の報酬が記載されている。姿は角を生やしたゾウに機械の部品が埋め込まれた様な歪な見た目。装甲という感じではなく別の個体同士を無理やり融合させた様な感じだ。名はベヒモスメタルゴーレム42。名前も変な感じで、番号が加えられているのも気になる。報酬は2万フィル。20万円くらいと考えると結構な金額だけど、上等な装備は5万フィル以上するものも多い。たとえ倒せても全ロスすると赤字になる程度のものだ。
それを見たニーリェとシシルーは感想を語る。
「なるほど。ベヒモスとメタルゴーレムの融合体か、こりゃあ頑丈そうだ」
「防御力自慢のメタルゴーレムと体力自慢のベヒモスですもんね。やっつけるにしてもすごく大変そう」
(へぇ。変異種って前見たようなもっとグチャグチャしてる感じの想像してたけど、原型を留めている感じのも居るんだねぇ)
僕が頭の中で感想を述べると土の神と火の神がそれに答える。
(っていうか。むしろ前のが特殊な例だね。変異種はほとんどが元居るモンスターをごちゃ混ぜにした感じのだよ)
(そんで。個体差はあるが、大抵は元になったモンスターの能力を引き継いでるぜ。だから見た目である程度の目途はつくって話だな)
(ふむふむ。じゃあこの名前は?ベヒモスメタルゴーレムってのは分かるけど、42って数字は謎)
その質問には豊穣神が答える。
(変異種とは一つとして同じものが存在しない特殊なモンスター。そのうえ数も多いため、一体一体名前を付けていったらキリがないのです。でも討伐を依頼する以上名無しのままという訳にもいきません。そこで元となったであろうモンスターの名と番号を付けて呼称している訳です)
(ほうほう。つまりベヒモスとメタルゴーレムが合わさった感じの奴の42体目って感じだね)
(ですです)
そんなやり取りをしていると、同席していたダッドが話しだす。
「いやはや、すいやせんねリトライズの皆さん。いきなり呼びつけたと思えば勝負を挑むなんて。迷惑だってんなら、断って頂いてもかまいやせんので」
そちらが決めてくれて良いんですよという態度のダッド。それにロザリンはムッとした表情を見せた。だけど僕達が決める事だというのは理解している様で、反論はせずに黙って期待の表情を僕達に向ける。
「僕は大丈夫だよ。なんならまた会えて嬉しいよ」
「いつかロザリンさんが挑みに来るというのはリディルカさんから聞いていましたしね」
「だな。オレもいつ来るのかと期待してたくらいだしな」
僕とシシルーとニーリェが意見を出し。それに続いてリディルカが言う。
「という事だ。その挑戦受けようではないか」
その言葉にロザリンの表情はパァっと明るくなった。
「では、明日。どちらが先にこの変異種を討伐するか、勝負ですわね」
そこで僕はふと気づいた事があり、それをロザリンに投げかける。
「そうそう。変異種ってどこに行くか分からない、下手すればダンジョンから出てしまうからさっさと倒した方が良いって話を聞いたんだけど。こいつはそんな危険な奴じゃないの?」
「えぇ。この変異種は巨大すぎて出口から出れない様で、ダンジョンの中層の大空洞にずっと居座ってますわ。強すぎて割に合わないらしく、民間の探索者も手を出さないので、このまま倒されないままだと政府案件になるらしいんですの」
ニーリェは依頼書を見ながら言う。相手の強さを想像している様だ。
「へぇー、居る場所が分かってて長い事倒せてなくて政府の討伐待ちって、よっぽど強いんだな」
「故に、だからこそ、ですわ」
ロザリンは強敵だからこそ倒すかいがあると言わんばかりに言い放った。
そんなこんなで、僕達リトライズと極炎の光星はどちらが先に変異種を倒すのかの勝負をする事となった。シリアスな感じの勝負ではなくライバル同士か切磋琢磨する感じの勝負、なかなかに悪くない。




