第36話 変異種討伐完了
「イクゾー!!!」
「「「おー!!!」」」
掛け声と共に僕達は隊列を組んで走っていく。
リディルカは魔法で前方のモンスターを蹴散らし、ニーリェが盾を構えて前衛を務め、シシルーの強化魔法で走力を強化、僕が感知スキルで周囲の状況を探知して皆に伝える。
リディルカが主砲、ニーリェが装甲、シシルーがキャタピラ、僕がレーダー、一丸となった僕達はさながら戦車の様だ。
途中鳥のモンスターが空から襲って来るが、リディルカが雷撃の槍を放ち、打ち落とす。
進行方向にさっき僕が戦ったビッグホーンが群れていたが、リディルカが爆炎を放って焼き払い、ニーリェの突進で弾き飛ばして突破。
牛のモンスターが突進して来るが、リディルカの氷魔法で氷結させて動きを止め、その横を通り過ぎる。
そして僕は皆を目的地へとナビゲーションしていく。
僕達はしばらく走り、目指していた地点、変異種が向かっている出入口。その目前にまで来た。
僕は走りながら、変異種が飛び出してくるであろう洞窟の出口を指差し言い放つ。
「あそこから出てくるよ!カウントするからやっちゃってよ、リディルカ」
「よかろう」
リディルカは大魔法を放つため、走りながらも貯めの動作をとる。それを確認した僕はカウントダウンを開始。「5」「4」「3」「2」「1」そして「0」のタイミングで僕の指差した洞窟の出入り口から変異種が飛び出した。そして、それと同時にリディルカは大魔法を解き放った。
「<ライトニングストーム>!」
リディルカの声と共に空から数えきれない程の雷が降り注いだ。絨毯爆撃ならぬ絨毯雷撃。僕達の眼前の風景を電撃の海に沈めてしまった。回避能力が高い相手という事を考慮しての事だろう、圧倒的な面制圧での討伐を試みた様だ。しかし、
「悪い、一歩遅れた」
流石のリディルカもワンテンポ遅れてしまった。本当なら待機した状態から撃つ筈だった大魔法をダンシュしながらの発動になったんだ。無理もない。
リディルカの大魔法に気づいた変異種は、すぐに今来た道を引き返し洞窟内に避難。リディルカの魔法攻撃を躱した。
大魔法は当たらなかった。けれど、問題は無い。
「大丈夫」
「あぁ兄ちゃんがいる」
変異種が逃げた先には、それまで変異種を追っていたディクス達が居た。
ディクスは既に攻撃態勢。戻って来た変異種に合わせて必殺の<スパイラルランス>を繰出した。
一瞬変異種は転移の光を放とうとしていたが、その反撃は間に合わない。変異種は<スパイラルランス>で貫かれ、胴体部分が消し飛んだ。そして体の残された部分は他のモンスターと同様、サラサラと砂の様に消えていった。討伐完了だ。
変異種を倒した事を入念に確かめ、ちゃんと討伐が完了している事を確認し、一安心した所で僕達は再び合流する。その集まる時に、僕は元気な声を出しながらディクス達の元へ駆け寄った。
「みんなお疲れー」
僕は手を上げ、ハイタッチのフォームでディクス達へ近づいていく。
ディクスはそれを察し、手を上げてくれた。僕はそのディクスの手を自分の手で叩く。
「ヘーイ」
ディクスとのハイタッチを済ませた後、そこから続けて他の皆にもハイタッチをかましていく。ミルカは微笑みながらハイタッチ。ベドゥイはノリノリで互いに「ヘーイ」と言いながらハイタッチ。カルスは戸惑いながらもハイタッチ。ニーリェとリディルカとシシルーにもハイタッチ。
そして残りの一人となったニルスンに手の平を向け、ニヤニヤとした笑みを見せつけた。皆もやったんだし、ニルスンもハイタッチやろうよというフリ。さっき拒否られたからハイタッチリベンジだ。
ニルスンとしても、討伐は終わっているし、皆もやっているし、やれやれといった表情で応じてくれた。これでハイタッチに応じて貰えなかったモヤモヤも少しは晴れるってもんだ。
僕が皆とのハイタッチをし終わると、仕切り直す様にディクスは締めの挨拶に入る。
「皆、今回の変異種討伐ご苦労様。特殊な性能の相手だったが、よく対応してくれたな。リトライズの皆さんも協力に感謝する。ダンジョンの中ではあるが良い景色だし、景色でも眺めながらゆったりと帰ろうじゃないか」
締めの挨拶を終えると、僕達は雑談をしながらダンジョンの入り口を目指す。
「最後は変異種をそっちに追い込めなくて悪かったな。俺達も待ち伏せしている所に追い込みたかったんだが、横にそれちまった」
「いやいや、こっちも待機場所をちゃんと考えとくべきだったしさ」
といった今回の反省や、
「それにしても電撃の大魔法ってすごいんですね、あんなに広範囲を攻撃できるなんて」
「天井が無い所でしか使えんのが玉にキズではあるがな。高い範囲と高火力を兼ね備えたこのリディルカ自慢の大魔法だ」
といったリディルカの大魔法の感想を話したり、
「最近はどんな感じなんだ?ニーリェ」
「いい感じだぜ、兄ちゃん。そろそろ探索者ギルドに申請して、Bランクになろうかって皆とも話してるんだ」
といった兄弟の話をしたり、各々の話に花を咲かせている。そんな時だ。ニルスンが僕に話しかける。
「可奈芽さん。今回、私は貴方に助けられた。挟み撃ち作戦が実行出来たのも、貴方が私を助けてくれたからです。由緒ある騎士団員として、受けた恩を返さないままにはしたくない。礼をしたいのですが、何かありませんか?」
「あれ?あの時は自分を後回しにすべきだとか言ってなかった?」
「それはそれ、これはこれです。正しい判断かどうかはともかく、助けられた事実は変わりません。助けられた以上は礼をしなくてはならない」
「ほーん。律儀だねぇ」
僕は少し考える。ここで遠慮しようとするのもかえって失礼っぽいし、あまり高価な品を求めたりするのもなんだし、何か手頃なものはないかなと考え、
「そんじゃ、ランチでも奢って貰おっかな」
食事を奢ってもらうくらいが丁度いいかという結論に至った。
「て事で、ディクスさん、ニーリェ、アメティスタで美味しい料理を出してくれる店とか知らない」
せっかくだし、現地に詳しい人に話しを聞こうと二人に話を振った。するとディクスはニヤリと笑い、サムズアップを向けて答える。
「任せろ。とびきり美味くて値が張る店を教えよう」
「ちょっと勘弁してくださいよ、団長」
「ハッハッハ、分かった分かった」
そんな冗談めいたやり取りに続き、ニーリェは答える。
「じゃあオレが手ごろな店を教えるよ」
「任せたよ。ニーリェ」
そうこうしながら僕達はダンジョンを後にした。
今回は初めての変異種の討伐で、逃げ回り、罠の設置やワープさせる能力を持った特殊な相手だったけれど、変異種の討伐に慣れた騎士団が一緒だった事もありなんとか撃破。全員無事に帰還する事ができた。
今後も変異種を討伐する機会があるだろうし、未知な能力を持ったモンスター、変異種との戦い方を考えておくとしよう。




