第35話 待機していると
僕は感知スキルで変異種とディクス達の動向を探る。
変異種は洞窟の内部をうろつきながら罠の設置を続けている。ディクス達はそんな変異種に向かってにじり寄り、接敵するや変異種は逃走、ディクス達はそれを負い走り出す。追いかけっこが始まった。
逃げる変異種、追いかけるディクス達。
追いかける最中所々でモンスターの襲撃に合っていたが、ハードル走のハードル程度の障害にしかなっていない。ミルカが魔法攻撃で初撃を与え、ディクス、ベドゥイ、カルスの前衛組が走りながらの追撃で倒していく。
そしてディクス達は変異種と一定の距離を付かず離れずの位置を維持したまま追走を続けている。
「ほうほう。そんな感じね」
「どんな感じなんですか?」
見えていないから気になるのだろう。シシルーがディクス達の様子を聞いてきた。
「さっきと同じ。変異種が逃げてて、ディクスさん達が追っかけてるんだけど。なんだか追いながらも一定の距離を保ってるね。完全に追いつかない様にしてるみたい」
ニーリェは解説する様に語る。
「あの転移の光を警戒してんだろうな。兄ちゃん、一度見た技は大体どういうものか分かるって言ってたし、多分あの攻撃の射程に入らない様にしてるんだと思うよ」
「おー。一度食らった技は効かないって奴じゃん、カッコいいねー」
「ほう。あれだけの情報でおおよその射程を見抜いたか。流石、騎士というのは伊達ではないな」
感心している僕とリディルカを見て、ニーリェは自分の事の様に自慢げだ。
「だろー?」
そんなやり取りの後、僕は感知スキルに専念する事に。他の3人はすぐ傍で雑談をしつつ出番を待っている。
僕は感知スキルで状況を確認しつつも神様に語りかける。
(ねぇねぇ神様。変異種の討伐っていっつもこんなに大変なの?)
(だなぁ。あの団長さんも言ってたが、基本的に軍人が対応する程の変異種は探索者が討伐できなかった奴だからな。厄介な奴ばっかだよ)
(特に情報が足りない変異種とかって大変らしいねー。相手の能力を調べながら戦わなきゃいけないから)
僕としては、ちょっとした強敵くらいであれば苦も無く倒せると思っていた。ニーリェとリディルカはかなりの実力者で、少なくとも僕が見てきた中で苦戦らしい苦戦をしているのを見た事がないし、シシルーの強化魔法と僕の感知スキルのサポートで大抵の相手はどうにかなっていた。
それに、ディクス達騎士団も実力者揃いで変異種との戦闘も慣れている様子だったし、ちょっと強い相手だったとしてもサクサク討伐出来るだろうと楽観視していたのだ。
しかし実際は、相手はギミックボスめいた性能で、正攻法で倒そうとした結果まんまと転移の光で分断されてしまった。ダンジョンに発生する罠もそうだったけど、変異種もまた、ただ強ければどうにかなるものではない様だ。
(なるほどー。今回みたいな相手だと探り探りの戦いになっちゃうんだねぇ)
とその時、僕はふと気づいた。
変異種はディクス達に追い回されて僕達の方に向かっていたが、今しがた道を逸れ、別の出口へと向かいだしたのだ。
「あ、ヤバ」
何事かとリディルカは心配そうに聞く。
「どうした?可奈芽」
「あの変異種、さっきまでこっちの方に向かって来てたんだけど、道を外れて今は別の出口に向かってる」
「このままだと挟み撃ち出来なくなりますよね?どうします?」
「急ごう。走れば多分間に合う」
ニーリェの言葉に僕達は頷き、変異種とディクス達が向かっている出入口へと駆けだした。




