第33話 ニルスンと共闘
僕はニルスンの元へと出向いた。
行って助けられるかどうかは際どい。安定を考えるのなら、ここでニルスンをいったん放っておいて、他の仲間と合流して助ける方が良いだろう。けれど、僕はピンチの仲間を後回しにはしたくない。これは僕の性分なのだ。
ニルスンはモンスターと交戦中。巨大な角を持つ山羊のモンスターがニルスンに向けて突進を繰り返している。ニルスンは魔法で障壁を作り、それを防ぎ続けていた。モンスターの攻撃は防げているものの、常に魔法での防御を強要されている状態。無事ではあるけれど、このままではいずれマナが尽きるだろう。
そして、モンスターが再度突進を繰り出そうとしていたその時、
「でやぁー!」
僕はモンスターに向けて飛び蹴りをかました。僕のキックで突進の軌道は逸れ、突進の対象は岩へと変わりモンスターは岩盤に衝突、モンスターを怯ませる事に成功した。一方僕はキックした反動で弾かれ、「ぶへぁ」と情けない声を上げながら地面に顔面を衝突させる羽目になった。
そんなみっともない姿を晒す僕にニルスンは言い放つ。
「なんでここに来た!サーチャーが居なければ他の者はろくに合流出来ない!ここは私は後にして他の皆を助けにいく所でしょう!」
「だってニルスンさんピンチだったじゃん。僕見捨てるのとか嫌・・・」
と言いかけた所で、僕の片方の視界が赤く染まっていく事に気づく。気になって手で触れてみると、手がべったりと鮮血に濡れた。
「うわぁぁ!めっちゃ血ぃ出てるー!」
どうやら顔面をぶつけた時に石で頭を打ったらしい。痛みの割にかなりの出血量でめっちゃビビった。
そんなうろたえている僕を見て、ニルスンはやれやれといった風に言う。
「来てしまったものは仕方ないか。まったく、これだからCランクは」
と文句を言いながらも回復魔法をかけてくれるニルスン。ツンデレさんめ。
そうこうしていると、モンスターが再び突進の構えをとる。また突進での攻撃をするつもりだ。
ニルスンはモンスターを注視しながら僕に指示を出す。
「あのモンスター、ビックホーンは突進での物理攻撃と<ストーンショット>の魔法攻撃を使ってきます。魔法攻撃は私が防ぐので、突進は見切ってかわしてください。出来る限り支援で助けるので、なんとか攻撃して頂きたい」
「うん!」
僕は剣を抜いて構えつつ、さながら闘牛の様に相手の突進に備えた。
山羊の様なモンスター、ビッグホーンは僕めがけて突進してくる。さっきの蹴りでヘイトは僕に移った様子。ニルスンの方を向きもせず一目散だ。
僕は突進攻撃をひょいとかわす。突進攻撃は速度こそ早いものの、直線的だし事前に準備もあるから避けるのはそう難しくはない。
しかし、ビッグホーンは突進を避けた僕に向けて魔法で追撃。石つぶてを飛ばす魔法<ストーンショット>を放つ。だけどその石つぶては僕の直前で砕け散った。宣言通り、ニルスンが僕を障壁の魔法で助けてくれたのだ。
「ナイス」
「ふん」
初めてにしては良い連携。これなら十分戦えそうだ。
相手の攻撃に対処できる事は分かったけれど、問題はどう倒すかだ。攻撃を凌げても倒せないんじゃ僕が来る前と変わらない。何とかして反撃しなきゃ。
どう攻撃を当てるか考えていると、再びビッグホーンが突っ込んでくる。
今度はギリギリまで引き付けて、飛び跳ねてかわし、かわすと同時に胴を剣で切りつけた。手ごたえあり。僕のかわし際の攻撃は見事命中した。
「よし、ヒット!」
「だが軽い」
やり方は間違ってはいないと思う。巨大な角を持つビッグホーンは角がある頭部の防御力が高い。だから狙うべきは胴体部分で合っているだろう。だけど、僕自身の力が足りていない。これじゃあこいつを倒すのにどれだけ時間がかかるのか分かったもんじゃない。
とは言え、今の僕達にはモンスターの攻撃を避けてカウンターという地道な行動くらいしかできない。
突撃攻撃に回避とカウンター。魔法攻撃に防御魔法。少しの間その応酬が続く。
そんな最中、僕の頭にさっきの出来事がよぎる。さっきビッグホーンは岩に頭をぶつけて怯んだ。そこそこの隙ができていたのだ。もしその隙をつけたら一気に畳みかける事が出来るんじゃなかろうか。
僕はビッグホーンの攻撃をかわしながら聞く。
「ねぇニルスンさん。攻撃とかって出来る?」
ニルスンは防御魔法を放ちながら答える。
「弱い火属性の攻撃魔法は使えます。ですが、マナの容量を考えると無暗に使う余裕は無いですよ?どうするつもりですか?」
僕は突進の準備をするビッグホーンを睨みながら言う。
「こいつさっき岩に頭をぶつけて怯んでたじゃん?もう一度怯ませてその時に総攻撃をしようかなって」
「ふむ。確かにこのまま時間をかける戦いを続けるのも好ましくない。分かりました。ビッグホーンが怯んだら攻撃魔法を使います」
了承を得ると僕は走り、岩を背にして言い放つ。
「来ーい!」
その挑発に乗るかのようにビッグホーンは僕めがけて突進。何度も見た突進攻撃、もう目は慣れている。ビッグホーンの突進を紙一重の所で避けると、ドゴンという重低音と共にビッグホーンは岩に衝突。目論見通り、ビッグホーンは隙を見せた。
今がチャンス。ニルスンは火球の魔法を連射しビッグホーンを炎で焦がす。そしてダメージを蓄積させた所でニルスンは叫ぶ。
「今です!」
僕は剣を両手でぐっと握り、腰を入れ、力強い掛け声と共に剣を振り下ろした。
「ヤァーーー!!」
これまでのダメージの蓄積。それに僕の渾身の一撃が加わった。
ビッグホーンはドスンとその場に倒れ、サラサラと砂の様に消えていった。ビッグホーン撃破だ。
「よっしゃー、勝ったー!」
僕は力強くガッツポーズをし、ニルスンはやれやれといった感じにため息を吐き、安堵の表情を見せた。ひとまず危機は乗り切ったって感じかな。




